新年のご挨拶と、災害時の陰謀論について

それでなくても、私の領域でやれることを考えると、やはり今回の災害についての陰謀論が跋扈（ばっこ）する状況を伝えていきたいなと。

普段のウォッチ先を見た限りでも、「人工地震」「火事でなくレーザーで焼かれた」「スマートシティ候補地だから狙われた」「改憲から目をそらすため」のような説が出るわ出るわ…。うんざりしているところです。

彼らの中ではDSだかなんだかが掘削できる船を使って地震や津波を起こしたことになっています。

その闇の勢力だかなんだかにとって存在が不都合だった地域がなんだかの兵器で狙われ、その巨悪だかなんだかが政治的に理解を得られないことを強引に進めるために災害や事故は起こされたことに。

こんな妄想を「真実」のように広める人は、ぜひ食パンで顔を挟んでみてほしいと思います。陰謀論バカのサンドイッチの完成です。

理解できないことばかりですが、しかし災害や事故などショッキングなニュースの後はどうしても一定数、あまり頭が良くない人達が盛り上がってしまいます。

断片的な情報を好き放題に拾い集めて、勝手に組み立て、「やはり何かが隠されていた」「みんな気付いていない」というような、いわゆる「ネットDE真実（なんでお前が知ってんねん）」な皆さんのフェスティバルが起こります。特にコロナ禍で、こうした謎の高揚を何度も目の当たりにしてきました。

この手の方々が流す言説を端的に言えば、「巨悪が支配しようとしているのに我ら以外は気付いていない」というもの。

放射能デマ勢や反ワクチン勢による「人体に悪影響が」と恐怖を煽るデマとは少し毛色が違いますが、ここに「人口削減のためのワクチン」などが乗っかるケースもあります。

そういうものを広める自称「目覚めた」彼らによる、ただ優越感を得るためだけに一般社会を嘲笑する物語。確定的事実のようにグループ内で話を膨らませて納得しあい、それを否定する者は悪の味方か、もしくは無知な羊たち、と…。

そこには当然であるかのように「巨悪」と断定された人達や企業への侮辱、誹謗中傷、ヘイトがあって、カルト宗教的な薄気味の悪さを感じます。

誤りの指摘にも「可能性を言っただけなのに、陰謀論のレッテルを貼られる」のような言い逃れを必ずします。被災や被害者や遺族のいる話だから「変な噂が誰かを苦しめる」と諭してみたところで、「苦しめているのは（たとえば人工地震を起こした）巨悪だ。真相究明しようとして何が悪い」のように返されるだけ。

理論立てて間違っている根拠を提示したところで「こう考えた方が辻褄が合う」「そんなに否定するのは都合が悪いからだろう」「工作員がわいてきた」で押し切ろうとされてしまいます。これまで私が観察してきた、陰謀論界隈の批判への反応はほぼこれです。

もはや何を言っても響きません。要するに対話しようとしても無駄なのです。

たとえば今回の災害下でも問題になった、救助を求める声の偽造などはプラットフォーム側に厳正に対処をお願いしたいところですが、こと陰謀論の流布では表現の自由との兼ね合いもあります。（本来はデマに自由なんかないんですが…）

また、ツイッターがXに改悪されてからは、そうしたアカウントを制止するハードルも高くなったように感じます。いつの間にか「警告いくつで永久凍結」などのルールも無くなってしまったのか、さっぱり聞かなくなりました。

では今、いちSNSユーザーの私達にできることは何でしょうか。

個人としてやっていきたいし伝えたいことは「それでもちゃんと指摘しよう」ということです。

不確かな情報の拡散に加担しないよう注意喚起を続けながら、時には注目を集めるために笑いを加えてもいいし、ネット空間の自警団ではないですが、変なことを言っていたら「変だろ」と指摘する発信をたくさん作りたいのです。

Xの健全化を悲観する中でも、コミュニティノートは良い方策でした。誤りを指摘する人が多くなり、正反対の意見を目にする人が増えれば増えるほど、その情報を取捨選択する機会を作ることができます。

ノート自体を不都合なことを隠すための謀略とする反ワクチン・陰謀論界隈の反応は予想通りでしたが、そんな既に沼に沈んだ人向けではなく、真偽の判断に迷って境界線上にいる人の転落防止には繋がるはずです。

当ニュースレターもそうした人達の一助になればと、以前から反ワクチンや陰謀論について言及を続けてきました。

デマや陰謀論は、ただのイキがった個人がバカな話を流すだけでは広まりません。バカげた説を流し続けて影響力を得てしまった「陰謀論インフルエンサー」が多く存在し、フォロワー数万人や10万を超えるアカウントも珍しくありません。

最近では、反ワクチン・陰謀論、スピリチュアルビジネスやオーガニック信仰のごった煮でオレンジ色の小粋な奴ら「参政党」の出現により、ニュースレター記事で「陰謀論インフルエンサー」への追及は減ってしまいましたが、潜入などのフィールドワークを継続しつつ、今後は陰謀論の源流となるアカウントも取り上げていきたいと思っています。

「バカなことを言う人達がいるもんだ」で終わってしまうことばかりで、個人アカウントを茶化しすぎてもこちらが悪者になってしまうようなジレンマはありますが、皆さんのご理解やご協力を得ながら発信を続けてまいります。

新年のご挨拶に添えて、ちょっと真面目に書きすぎてしまいました。

今年も色んなトンデモ案件を無理やりにでもご覧いただけたらと思います。白目になりながら取材しているので、ぜひ道連れになってください。

こんな奴らがいるのか、こんなことを言っているのか、と知ることから全ては始まるはずです。

（黒猫ドラネコ）

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1月21日（日）昼から横浜でトークショーを開催します。2023年を振り返り、24年のスピ・陰謀論を展望。わたくし黒猫と、同一人物ではないかと疑われたこともある雨宮純さんがナビゲートする大人気の定期イベントです。

たくさんのご来場、ライブ・アーカイブ配信のご視聴をぜひ宜しくお願いします。どんなテーマを取り上げるかはこれから小出しにしていきます。お楽しみに。