【詳細レポート】陰謀論も全部盛り!参政党”創憲”フェスは日本国憲法の紙を破り捨て…(前編)
永田町から徒歩すぐの星稜会館。
公益目的であれば比較的安価で貸し出しされる400人規模のホールは、開場してすぐにぎゅうぎゅう詰めの満席となった。
12月7日(土)に開催された参政党「創憲フェス」である。事前登録制で入場料2000円。これまで同党が繰り出してきた政治資金パーティーに比べれば安価だ。
いつも通り中高年や高齢者が多め。オレンジ色の小物をつけたり着こなしたりした集団が嬉しそうに会場に押し寄せていた。
いつもの光景になぜかホッとするのは、私が何らか病んでいるせいか。こういうアレな集団のウォッチなしでは生きられない体になってしまっている。
(参政党「創憲フェス」特設サイトよりスクショ)
今回のフェスでは、全国11支部(ブロック)の代表者が「僕らが考えた最高の憲法案」を持ち寄って発表する。参政党は各支部でそうした勉強会などを繰り返しているそうで…。
こういうのを待ってたんだよ…ウフフフ(病みが深い)
イベントの司会は安達悠司氏、工藤聖子氏。
安達氏は弁護士で、元党員が参政党を訴えた裁判での党側の代理人でもある。先の衆院選は京都1区から出馬して落選。党内では推されている人物で、今回も「創憲チーム」の責任者だという。
工藤氏は「ホメオパシー」を駆使している女性で、えーっと…まあ、あの、その、参政党にはこういう感じの人が普通なので、特にこれ以上は触れまい。
元代表のいつもの感じ
君が代の斉唱を終えると、各支部の発表に先駆け、元党代表の松田学氏の講演。
元大蔵官僚の松田氏は、師と仰ぐ石原慎太郎氏に『政策は松田だ』と称えられ「可愛がってもらった」という話からスタートした。
そういえば以前から安倍晋三元首相との交流のことをよく言っていた。ちょいちょい自ら「有力者に評価されていた」を盛り込むのがこの人のトークの特徴である。
松田元代表は、維新に所属していた時に橋下徹氏(当時石原氏との共同代表)が、「憲法とは国民の権利を守り国の権限を制約するのが100パーセント」と言い切ったことから、「国家観がない」などと思想の違いを感じて訣別したと明かして胸を張った。
そんな元代表が考える憲法は「国柄」を作ること。現行の自衛隊では「自分の国を守れない」として「日本はグローバリズムと戦ってきた輝かしい歴史がある。かつては黒船、植民地化に対抗して日本だけが近代国家を作った」と言い切った。
(創憲フェスサイトの登壇者一覧より)
また、これも参政党が大好きな説だが、松田氏は「800年周期の文明の転換期」を持ち出して「西洋の文明から東洋の文明になる。東洋の文明と言っても決してそれは中国ではないわけで」と根拠なく述べていく。
私は別に中国びいきではないが、「東洋文明が来る」のなら、東洋で一番でかい国を排除する根拠だけは述べて欲しかった。
「日本が縄文時代から1万年にわたって積み重ねてきた文明・文化。それが世界中で求められる時代。地球文明を日本が先導する立ち位置にある。それを促していくのが参政党の役割」
だそうだ。へえー参政党はすごいんだね(棒読み)
あとは、アメリカを根本的に作り変える期待があるというイーロン・マスクについて、「わびさび」「八紘一宇」に関心があるとのことを引き合いに出し、「まさに日本の時代がくる」と言うと会場は大拍手に包まれた。
アメリカを日本に作り変えるのか…? アメリカも東洋文明にってことか。「メイク・アメリカ・グレートアゲイン」はどうすんだろうな…。
そんなこんなで、松田氏は「党を作った時に掲げた『世界に大調和を生む』。これが創憲活動に出てくるのを期待したい」と結んだ。
この人らの講演はいつも「僕らの時代が来る」みたいな、こういう調子である。
統一教会の弁護士が登壇
このフェスの中ですごく気になっていたのが、次の基調講演だ。
弁護士の徳永信一氏が拍手で迎えられた。
ジャーナリスト鈴木エイトさんに対して統一教会側の関連団体がおこなっている一連の訴訟でも見たことがある。この人は統一教会の弁護士なのだ。
同業である司会の安達氏にとっては京大の先輩とのこと。そういう繋がりなのか。
(創憲フェスサイトの登壇者一覧より)
徳永氏はよく通る高い声の関西弁で「日本国憲法は日本人の誇り」というタイトルで論じた。
Xの過激な発信でたまに燃えている人ではあるが、ここでは突拍子もないことを言った部分は特になかったと思う。改憲についての弁護士会の行動や裏話から入り、終戦後の日本国憲法公布までの逸話を次々と述べた。
そのあたりの歴史には詳しい様子で、保守派の弁護士としての一面をのぞかせた。
やはり統一教会の弁護士だと感じた話が一か所あった。「私が思う4つの(憲法)改正しないといけない部分」の中に、「政教分離の原則」を入れていたのだ。
統一教会の擁護をしないだろうか、もし参政党の集会でそんなん言い出したらニュースレターで楽しく書いてる場合ではないぞとヒヤヒヤしながら聞いたが、「左翼は宗教の排除や自分達の理想を政教分離にハメ込んでいる。政教分離は公共からの排除じゃない。独占禁止法みたいなもの。政府がくっつかず自然競争に任せて宗教が発展し信仰が保証されるという考え方」と饒舌に語っていた。
宗教団体側の視点なのは気になったが、別に過激な話でもなかった。宗教自体は悪くない。カルトが悪いのだ。
徳永氏は「終戦の詔書」や「国体護持」についての解釈を「日本国憲法が天皇を守り国体を保持するために作られた歴史的意味は忘れてはいけない」と語った。参政党が好きそうな右寄りの話なのは否めないものの、概ね歴史に沿っての持論といえよう。
ややウトウトしていた客もいた(高齢者が多いので仕方ない)が、終わったあとの観客席では「面白かったねぇ」と言い合うおば様たちも。
これを機に、今後は統一教会とではなく参政党との活動も増えるかもしれない。
日本国憲法をビリビリに破り…
ここまでを読んで、なんだか普通の講演会だなって思ってないかい。
待たせたね。ここからなのよ…。
三番目に登壇したのは麗澤大学准教授のジェイソン・モーガン氏。このところやけに参政党に重宝されている気がする。
「私の役割は前の登壇者(徳永氏)の話をちゃぶ台返しするということ。失礼になりますがご期待ください」と言って会場の笑いを誘うと、「日本国憲法は日本人の恥です!」とタイトルを大声で読み上げて講演を始めた。
(創憲フェスサイトの登壇者一覧より)
流ちょうな日本語だ。イメージ的にはお笑い芸人の厚切りジェイソンを思い浮かべてもらえばいい。
客席に笑いとざわつきが入り混じっていく。モーガン氏によると、日本国憲法は白人に定められた「降伏条約」とのことだ。
「日本が占領されています。ジェノサイドに長けている白人の連中がいまだにこの国を占領しています。そいつらが作った憲法を破いて、一刻も早くそいつらを追い出すべきです!」
そう叫ぶと会場は大拍手に包まれた。
おいおい「おおぉ…」じゃないんだよ…。
お前も白人やないか、と普通のツッコミをしたいところだが、話によると自身を白人ともアメリカ人とも思っていないようだ。とにかく白人が嫌いらしい。
「気付いて」という意味合い強めだろうが、興奮気味に「覚醒してくださいよ」と繰り返すモーガン氏。憲法で天皇を象徴としていることも気に入らないようだ。
「民主主義とか人権とか安全保障ではなく、この国の心は天皇陛下なんです。民意とか関係なくて天孫降臨(皇室の先祖は天から降りたという神話)がポイント。ただの象徴では天皇陛下に対する侮辱です。神性のある天皇が象徴に成り下がれば非常に問題」と一気にまくし立てた。
ここまで露骨に「天皇は神の子孫」と外国人に言われるとは。まあ参政党の皆さんはこういうのを信じるから仕方ない。
「白人の常とう手段です。何回も女王様、王様を引きずりおろしてきた。『お前らは私たちの支配下にある民族で、お前たちのリーダーはもうパワーがないから象徴で満足しろ』と。(世界で)何回もあったことなんです」
白人アンチの白人さんということか。いやはや、こんな濃いキャラを隠し持っていたのか参政党さんは…。
おりしもニュージーランド議会で、女性議員が先住マオリ族に不利な条約の紙を破る動画がネットで話題になっている。モーガン氏はその画像をスクリーンに映し、紙を手に持った。
「日本国憲法です。誰でもダウンロードできます。第1条、先ほど徳永先生がおっしゃった(天皇が)日本国の象徴、国民の総意に基づくとかは白人のイデオロギーにすぎない!」
そう言うと、ニュージーランドの女性議員を見習うとして「日本国憲法を破きたいと思います!」と叫んだ。
あまりの勢いに戸惑い、多少の笑いもありつつ「おお…!?」と客席がどよめく。
「いらないよこれ!いりません!皆さんもやってください!動画を撮ってアップしてください!」
ステージ上で一人絶叫し大暴れするモーガン氏は、ついに日本国憲法が印刷された紙をビリビリに破いた。そして舞台中央へと投げ棄てる。うわぁ……。
私と同じく「あーあ、やっちゃった…」と引いている観客もいるにはいて、一瞬はなんとも形容しがたい空気感になっていた。
しかしすぐ、やりきったことへの称賛か、拍手喝采がそのパフォーマンスを包んでいった。いやいや、なんでなんで???
さあ大変だ。国政政党である参政党はこの日、とうとう日本国憲法を「いらない」と文字通りに破り捨て、ここから「自分たちで憲法を創る」わけだ。
今日はそういうイベントなのである。
(創憲フェス特設サイトよりスクショ)
(こんなもんで終わらなかったので、メンバー限定部分で過激な講演の続きをお送りします。読むにはちょっと覚悟が必要ですが、ご興味ありましたらぜひ。過去のレポートも全て読めるようになってお得です。次回以降の後編は、各11ブロックの憲法案について感想と私見を述べます)
「憲法を書いた奴らがあなた方の総理を暗殺しましたよ!」
これはもうダメかもしれない。…あ、いや、国政政党になってからずっとダメはダメなんだけど。