2025参院選を振り返る(後編)
▽前編はこちらから
ヘイト演説後の残念な行動
18日夕刻は大宮から移動。仕事をズラしてまで平野雨龍(無所属)の演説を再び見ようと決め、新橋へ急いだ。
また河合ゆうすけ戸田市議が応援に来るそうだ。ヘイトスピーカーダブルタイフーンである。
時間ギリギリに新橋SL広場に到着。聴衆はかなりリベラルな感じで大人しめ…いや待て、そんなわけあるかい。
なんと蓮舫候補、塩村あやか候補(立憲民主党)の演説会が始まった。どういうこと???

(SL広場では立憲民主の街宣)
「平野雨龍の演説は場所が変更になりました」との看板持ちを発見。内心キレそうになりながら、あわてて東京駅丸の内口へと移動する。
急きょの場所変更にもかかわらず、500人以上の聴衆が集っていた。相変わらず日本国旗や旭日旗が舞っている。
なお、平野候補の演説内容も「無所属だからタブーに斬り込める」など相変わらずだった。
広々とした東京駅前は声がよく響き、そしてヘイトに抗議する方々の姿も目立っていた。彼らは聴衆からやや離れ、警官隊の警備を受けている。

(東京駅前での平野雨龍候補の街宣)
演説終了後に残念なシーンを見てしまった。
聴衆の一部が、抗議に来た方々を威圧する行動を始めたのだ。それを煽動していた中に「財務省解体デモ」を主催したユーチューバーらがいた。
差別反対のプラカードを持つ数人の周囲を取り囲む。日本国旗を振りかざし、ゆっくりと君が代を歌いながら迫っていた。
「お前ら歌えないんだろ?」とでも言いたげなニヤニヤした表情が気持ち悪い。戦後日本で最も醜悪な国歌の使われ方だったのではないだろうか。

(聴衆の襲撃からプラカードの抗議部隊を守る警官隊)
警官隊も懸命にプラカード組を護衛する。しかし、その厳戒態勢の外でもトラブルは起きた。
単身で差別反対の紙を掲げていた若い女性を、中年男性が数人で囲み「ナニジン?」「どこに雇われたの?」「日本人は平野さんに反対しないよね」などと詰問していた。
警察が割って入っても、周囲が「そういうのは言わない方が…」となだめても、「中国人でしょ?」などとしつこく聞く男性。
差別的な演説に感化されてこうなるのか…。この国の行く末が心配になる。
最終日に新宿で見たのは
ついに迎えた参院選最終日。
しかし、私にとっては選挙取材など二の次だ。早朝に参政党関連の電話取材を終えると、急いで新宿へ。11時から「世界連邦反対デモ」がおこなわれるとの情報を得たのだ。
「世界連邦」が何なのか、何に反対しているのか、調べても有力な情報がさっぱり出てこない。それがもう最高にイイ(病気だよ)

(世界連邦反対デモの告知)
この一大ムーブメント(?)が参院選にぶつけられる歴史的瞬間を共有するため、ウォッチャーの同士に「よかったら一緒にどうよ!?」とばら撒いてしまった。
もはや選挙のような一般的イベントでは、私の胸を高鳴らせることは不可能だ(病気だって)
予定時間の新宿駅付近。歩いて探し回ったものの、集団は見つからず、何かが始まる気配も全くない。まさかガセネタを掴まされたか…。

(地獄への入り口、新宿駅東口)
すると西口地下で、見慣れた顔の反ワクチン勢の皆さんが数人でチラシを配っているではないか。
「もしかして世界連邦デモって…これですか?」(ウォッチャー勢)
意気揚々と仲間を誘った時の「よかったら一緒にどうよ!?…どうよ…どうよ…どうよ(エコー)」が心の中で響き、あまりにも申し訳なさすぎて、穴があったら「参政党」と書いた票を投じたい気持ちになった。
おかしい、こんなことは許されない…。
焦りつつ、演説を終えた反ワクおじさんに尋ねると「世界連邦?なんすかそれ…」とあきれ顔である。おお、世界連邦反対デモではないらしい!…た、助かった!
この反ワク勢は毎週このチラシ配り活動をしているそうだ。紛らわしいな!
ついでに反ワクおじさんに、参政党をどう思うか聞いた。
「あの神谷代表には裏の顔があると思います。秘書も亡くなっていますよね。反ワクで共感?他の党よりは頑張っているかもしれないけど、『日本人ファースト』とか言って改憲(創憲)して基本的人権を無くすなんてむちゃくちゃです。あれに騙される人はおかしい」
とのことだ。草。
ちょっぴり解説すると、ガチの反ワク勢は参政党が大嫌いなのだ。そのあたりの対立はまた後日、気が向いたらまとめよう。
新情報が届いた。「世界連邦反対デモ」は予定を変更して15時から南口で行われるそうだ。こうなったら、時間まで選挙最終日の新宿を撮って回ろう。良い暇つぶしになる(オイ)
まずは東口に北村晴男候補(日本保守党=新)が登場。氷嚢を片手に、演説ではなく握手会を開催していた。
街宣車からのMCが「北村ゴジラ、新宿に襲来です。政界に火を吹く男」とか、やけに軽快で楽しい。

(撮影に応じる北村晴男氏)
せっかくの機会なので北村氏にも参政党について聞いてみた。
「ジャパンファーストは最高だと思いますよ。ただ対外政策がね。(参政党は)石破さんの対中の距離感がいいと。台湾有事に巻き込まれないため中国と接近がいいとおっしゃっていて、これは僕から見たらトンチンカンに感じる。そこを変えてもらえればいいんじゃないかと思います。神谷さん本人が『保守ではない』と言っているので、本当の意味での保守になってくれるといいですね」
好意的な意見だった。29日現在、Xが大炎上している北村氏だが、一人ひとりへの握手や取材対応はとても丁寧だった。
続いて、「再生の道」がマルイ前の狭い歩道で演説開始だ。
実は石丸伸二氏をナマで見るのは初めて。シュっとしている。個人的には支持することはないとは思うが、演説も聞きやすく、かつて(最近だけど)「石丸現象」が起きたのも頷ける。

(新宿マルイ前での石丸伸二氏と吉田あや候補)
東京選挙区の吉田あや候補は、教育政策を重視すると語った。日本貿易振興機構(JETRO)から、外務省の派遣員制度で在ロシア日本大使館での勤務経験がある。「再生の道」候補者の経歴はエグい。
まともな人に接し慣れていない陰謀論ウォッチャー勢も思わず「会社の面接みたいな演説をする人ですね…」と謎の感想を言い合った。
候補者の知性や能力という意味では、参政党を108回ぐらいすり潰して「再生」させても追いつけないだろう。
さて、石丸氏にも参政党について聞いてみた…かったが、警備がキツく近寄れず断念。
どうせ聞いても「それは取材でしょうか?きちんと手続きをとってください」とかなんとかキツめに言われていたに違いない。(偏見)

(黄色い声援も浴びていた石丸氏)
ついに逢えた…
いよいよ15時だ。ドキドキしながら南口を探す。
……い、いた!
すぐに分かった。旗が立っている。

(新宿南口で黒い旗が揺れる)
こ、これが、どうしても私達が見たかった世界連邦反対デモか…。やっと逢えた。もう離さない。参院選なんかどうだっていい(ダメだよ)
揃いの黒Tシャツ姿のおじさん達6人組は、「わーれーわーれーは…世界連邦に断固反対の…」と宇宙人みたいなトーンで話し始めた。
いいねえ!いいねえ!(病気)
彼らは太鼓とギターをかき鳴らし、「1万円札の原価は20円ン!」という歌詞が印象的なオリジナルソングを響かせはじめた。
やっと発見できた興奮はあったが、変な歌を聞きながらウォッチャー勢は急速に冷淡になった。よく考えてみたら好き勝手な時間変更で朝から炎天下を振り回されたのだ。
「闇堕ちした忌野清志郎みたいな歌ですね」との雑な感想に落ち着いた。

(演奏する新世界連邦反対デモ隊)
世界連邦反対メンバーの話を総合すると、結局アメリカも日本も裏で手を組んで世界連邦なるものを作ろうと画策しているらしく、イルミナティだのなんやらかんやらの絡みで、それに気付いてしまったのでなんだかんだで活動をしているそうだ。
ああそうですか。
コロナ禍で「目覚めて」結成したらしい。
神真都Qなどのアレらの陰で、私達が気付かなかっただけで確実に存在した独自色の強い集団だった。人知れず活動を続けていたのかと思いきや、この日なんと2年ぶりに集合したとのこと。
「選挙に合わせてですね。このままでは日本が危ないと思ったから」(メンバー談)
今後の活動は全くの白紙らしく「気が向いたらまた集まるかもね」と笑っていた。
活動内容はともかく、気の良い人達だった。何より、2年ぶりの「オヤジの青春」みたいな再結成がみんな嬉しそうで生き生きとしていた。演説などの内容はさておき、ウォッチャー達も「いいものを見ましたね」と胸がいっぱいになっていた。
やっぱり陰謀論デモのウォッチは最高だ。もう参院選なんかどうでもいい(だからダメだって)

(世界連邦に反対するTシャツ)
それはそうと、この時間帯の新宿南口は凄かった。
世界連邦反対デモが歌う真横には、日本共産党がステージを作って夜まで街宣中。ここでは参政党への批判が飛び交っていた。
共産党の後援者だという宮司、牧師、僧侶が同時に登壇。「差別的や分断を煽る選挙活動に抗議したい」と宗教を超えて立ち上がったらしい。すごい絵面だ。

(日本共産党のステージ)
その共産党の横にはマイク納めの準備をする平野雨龍陣営。さらに道を渡った向かいに大西つねき候補(無所属連合=内海聡のところの反ワク達)が演説していた。
世界連邦反対デモ、日本共産党の宮司・牧師・僧侶、ヘイトスピーチ右翼、反ワク連合がいて、そして大通りを転職サイトやら夜職やらの宣伝トラックが走り過ぎ……。
あの日、新宿南口で僕らが見たのは真夏の幻だったのかもしれない。
「お母さんにして」誕生秘話?
カオスな参院選のラストはもちろん参政党のマイク納め。こればっかりは仕方がない。
南口で燃え尽きた感もあるが、「まあ見てやるか」と芝公園へ。
思えば、3年前の参院選最終日もここにいた。党関係者とファン以外であの熱狂を目撃したのは、私と雨宮純さんの他には数えるほどしかないはずだ。