2025参院選を振り返る(前編)
忘れられない夏になった。いや、とっとと忘れたいかもしれない。
2025年7月の参議院議員選挙。俺達ウォッチャーのためだけにあったようなトンデモ集団・参政党さんがスターダムにのし上がってしまった。この件は、しばらく色々なメディアで書いたり語ったりする機会があると思う。
ひとまず選挙期間中は、自分がマークしている候補などを一通り写真に収めることができ、あとは偶然みかけた候補者や陣営も撮影ができた。
ちょっと遅くなってしまったが、日記のようにして参院選を振り返ろう。

お母さんたち
7月3日の公示日。まずは銀座三越前で参政党さや候補の演説だ。
都議選後の注目もあって、ものすごい数の報道陣が集まっていた。おそらく参政党に慣れていない(無理もない)のであろうカメラマンが、チラシを配る党スタッフの姿に「こういう人達なのか…」と驚きの声を漏らしていた。

(参政党の選挙スタッフ)

(参政党スタッフの主張)
そんな中、さや候補の「政府に足りないのは財源ではなく愛情なのではないでしょうか!」の言葉は、多くの報道陣がずっこけながら聴いたに違いない。
白人の家族連れが「日本人ファースト」のチラシを受け取り、スマホの翻訳アプリで読み取ろうとしていた。
なんとも言えない気持ちになる。

(さや候補とその師匠的存在・三橋貴明氏、田母神俊雄氏)
神谷宗幣代表の演説では「男女共同参画は間違っていた」「高齢女性は子どもが産めない」が発せられた。
もちろん現地の私には聞こえていたが「また言ってるよ」ぐらいに思ったせいか深刻に考えていなかった。後の囲み取材で記者が指摘して初めて問題発言だと気付いた次第だ。
ウォッチャー特有の「慣れ」「麻痺」は怖い。改めなければ。

(銀座三越前で演説した参政党・神谷宗幣代表)
同日、そのまま神奈川に移動。この日は、やや日刊カルト新聞のご厚意で便乗させてもらい、有意義な取材ができた。感謝。
溝の口駅前で自称キチガイ医の内海聡(無所属連合)の演説を観察した。先ほどとは違って報道陣がゼロでほっとする。
ああ、ここがトンデモウォッチャーの居場所だよな…。
内海候補は、勢いのある参政党をディスり続け、やはり一通り反ワク的な内容を語り続けていた。

(溝の口駅前で演説したうつみん)

(うつみんの応援者)
続く武蔵小杉駅前では、日本の反ワク活動の重鎮にして、反ワク版みんなのお母さん池田としえ氏(都議落選)が、満を持してうつみんの応援演説に立った。
池田センセイはいつも以上に喜怒哀楽が激しい。「ワクチン被害者の声を聞いたばかりで」と涙を拭う仕草もあれば、おどけて足を踏み鳴らす様子も。
自民党の街宣車が通りがかると、健闘を祈りつつ「聞いてほしいのよ…」と可愛く呼び掛けるなどして60人ほどの観衆をどっと沸かせた。
池田氏は過去に自民を追い出されており、観衆もそれを分かっているからこその笑いだった。

(うつみんの応援に来た池田としえ氏)

(なぜかオレンジ色の「3」がある奇跡)
平野雨龍、よしりん
おかげさまで参政党のまとめ記事がバズって取材が殺到。多忙で選挙取材に出かけるのが難しくなった。
中盤戦にかけては動けなかったが、嬉しい悲鳴でもある。
なんとか終盤は時間を作ることができた。「ラストサンデー」の13日、平野雨龍候補を有楽町駅前でウォッチ。無所属ながら注目していた一人である。
というのも、参政党以上にあからさまな中国ヘイトを以前から撒き散らしていることは噂で聞いていたからだ。

(有楽町駅前の平野雨龍候補)
この日は河合ゆうすけ戸田市議の応援があり、ヘイトスピーカーのしゃかりき2馬力。異様に多い聴衆の横で、差別発言に抗議する方々もプラカードを掲げて声を荒げていた。
それに対して河合氏が「左翼思想の連中を叩き潰さなきゃいけない」と聴衆を煽る。平野候補は声に力がこもっていたものの、その内容にバリエーションがあるわけではなく、「無所属だからこそタブーに斬り込める」などと、だいたいいつも同じことを言っていた印象だ。

(平野候補と河合ゆうすけ戸田市議)

(平野候補らへの抗議のプラカード)
続いて徒歩すぐの銀座へ。参政党を離脱した吉野敏明氏が立ち上げた日本誠真会の演説がある。
「小麦や砂糖は悪」を猛烈に主張するよしりんが、あんぱんの老舗である銀座木村屋ビルの眼前で喚く。このエモさはウォッチャーにしか分からない。

(銀座木村屋のビル)

(銀座での日本誠真会の演説)
日本誠真会は、この大事なラストサンデーに関東圏の候補者を東京に呼び寄せるという作戦に打って出ていた。選挙区で勝つ気がないと思われても仕方ない。
しかも吉野氏以外は私も知らないおじさん。歩行者天国でも、そこまで足を止める人は多くなかった。
そんな中で、応援弁士には陰謀論集団・神真都Qの弁護人も務めた南出喜久治氏が登場。このおじいさんが、まあーしゃべるしゃべる。

(よしりんと南出喜久治弁護士)
「ポツダム宣言はジェノサイド宣言」「中国とは国交断絶を」などが放たれる中、聴衆も演者も30分近く炎天下に立たされた。
そして案の定、肝心の吉野代表の演説の順番になった瞬間に時間オーバー。他党に場所を譲る必要があるらしく、陣営から「道の向う側へ移動してください」のアナウンス。ウォッチャー勢からは「マジかよ…南出ふざけんなよ……」の愚痴が。
「あーもう」とか言いながらゾロゾロと横断歩道を新橋方面に渡った瞬間、今度は「すみません。戻ってきてください」のアナウンス。他党の好意で続けてもよくなったらしい。
なんやねんこのグダグダは。もういい、次だ。
参政党練馬
同日夕方に参政党の演説会へ。練馬駅前のバスロータリーを囲み、街宣車上の候補者の演説を聞く形になっていた。
さや氏、松田学氏、山中泉氏、梅村みずほ氏が登場。かなりの数の聴衆が集まった。

(練馬駅前での参政党の選挙演説)
差別に抗議する方々が数名いて、デッキの上から叫ぶ。それに対して梅村みずほ氏が「拍手しましょう!」とか言って聴衆を煽る。この場では参政党支持が圧倒的多数であるため、胸くそ悪いイジメの構図のようだった。
最後に恒例のあのコール。街宣車上の候補者が「1、2…参政党ー!」とやったその瞬間に聴衆との間をバスが遮るという素敵な奇跡が起きた。
「明らかに妨害だよ。運転手は自民党の手先じゃないの?」とか支持者のおばさまたちが不満そう。
期待を裏切らないコメントを拾えて最高だ。来てよかった。

(参政党ー!の瞬間に通ったバス)
夜はそのまま、駅直結のホールでさや氏の個人演説会。400席ほどの会場は満員になった。当然いつも通り私も、にこやかに受付を終えてしっかりと席に着いた。
会場内は録音録画、撮影も禁止。そこで見たのは