宗教2世の漫画を消さないで
どうも、黒猫ドラネコです。
このレターでは「エセ・スピリチュアル」「疑似科学ニセ医学」「反ワクチン」「陰謀論」などのトンデモを観察し、ツイッターの140文字では足りない思いを綴っております。
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最近は真面目に論じてばかりですね。期待されている楽しい記事がなかなか書けないのが悩みです……。
どうやら潜入取材の記事が人気が高いことも分かっているのですが、今はなかなか時間もとれませんので、ネット上の話題の考察などを中心にしています。もうちょっと待っていてくださいね。
早速ですが今回は、もっと大きなうねりになって欲しいと思っている出来事について。
宗教2世問題を扱った漫画のネット連載が止められてしまったようです。
yomitai.jp/series/kamisam… 「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜 | よみタイ 生まれながらに、親の信仰する宗教の教えのもとに暮らすことを強いられる「宗教2世」の子どもたち。教えにもとづく独特な生活、 yomitai.jp
yomitai.jp/series/kamisam…
#集英社は菊池真理子先生のマンガを消さないで 母の期待に応えたい……宗教高校一期生として過ごした女性の告白 | 「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜 | よみタイ 『「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~』第5話(2022.1.26 公開)に関するお詫びとお知らせ本サイトに yomitai.jp
これらのツイートをした藤倉氏は、「やや日刊カルト新聞」の主筆。ご存知の方も多いかもしれませんが、カルト思想や疑似科学などについて体を張って問題提起をしている方です。色んな意味で真似はできませんが、その姿勢には常々敬服しております。
詳細はツイートやハッシュタグなどを追えば分かるとは思いますが、集英社「よみタイ」というメディアが以下のような見解で、菊池真理子さんの連載漫画第5話を公開終了し、他の話も公開を取り止めてしまいました。(2月15日現在)
よみタイHPより
私は著名カルト宗教(この言い方もどうかと思いますが)の問題に興味はありつつも、お恥ずかしいことに、しっかりアンテナを張れていませんでした。
連載が止まって、こうして問題になるまで見逃してしまっていたので、ウェブ魚拓で全て読ませていただきました。
5回の連載で、それぞれ違った宗教が取り上げられ、一般とは異なる家庭で育った子どもたちの苦悩が描かれていました。実体験をもとに、読みやすい絵とテンポのいい描写。宗教2世として生きる人の苦悩がよく分かりました。
私自身は研究者でも専門家でもなく、このような宗教の話を身近に感じることが少ない日々を送ってきました。ただ、関連するのか微妙ではありますが、印象に残っている思い出はあります。
小学3年生のある日。子どもだけで留守番をしていると、インターホンが鳴り「あなた達の幸せを祈らせてください」と、会ったことも無いおば様と高校生ぐらいの女性が尋ねてきました。
優しそうな人達だったので、遊びに来ていた友人とともに「よく分からないけど、幸せを祈ってくれるらしい」と玄関先でそのお祈りに参加。目を瞑って時折クスクスと笑いながらブツブツ言うのを真似していると、ちょうど買い物から帰ってきた母親が激怒し、有無をいわさずその女性二人を怒鳴ってたたき出したのです。
「勧誘目的の宗教だから絶対に対応してはダメ」と叱られました。
その経験があって、幼い私の中では「宗教=悪」という考えが出来上がり、今となってはそれはちょっと短絡的だとも思えるけれど、そうした勧誘から距離を置きたかった自分の母の気持ちもよく分かります。それが当時も今も”普通の”感覚なのでしょう。
祈っていた女子高生らしき方のお顔も様子も特に覚えていません。それでも、あの時に訪問してきた二人が親子だったとしたら、と今も時々考えるのです。
布教する母親らしきおば様と、その活動に怒った私の母。そのコントラストを思う時、どちらの子に生まれて来ることも選ぶことはできないわけで……。
ただのイメージ図ですが、すごくイメージ図っぽくていいですね
少しずれてしまいましたが、個人感情や説教臭いことは抜きにしても、親の強引な信仰に付き合わされて苦しんでいる人がいるということは、多くの人に知ってもらいたい事実です。
だからこそ「よみタイ」も連載にゴーサインを出したのだろうし、分かりやすい漫画で世に出すことは意義のあることだと考えていたのでしょう。
なのに、一旦は開始したものを停止するというのはよほどの事情があったはず。
この公式アナウンスからは自発的な取り下げとも読み取れるのですが、実際は宗教の側から抗議や圧力があったのではないでしょうか。
それまで4話の連載で、それぞれ工夫されていた特定の団体を表す描写が、第5話だけ鮮明になっていたことに起因するのではないかと推察します。他の媒体でお世話になっている編集者さんによると、「フィクションとノンフィクションは違うので改編やアレンジは大変だと思うけど、(第5話は)特定できるコマが多かった」。
その通りで、第5話で取り上げられた宗教団体は誰がどうみても、どう言い訳をしても「幸福の科学」でした。どういう事情かは分かりませんが、私も、それまでの4話と比べてずいぶん踏み込んだなという印象を持ちました。
私が以前から応援しているユーチューバーの宏洋さんは、「幸福の科学」教祖・大川隆法氏の長男です。教団を抜けて曝露本を出版し、ご自身のYouTubeチャンネルでも激しく批判活動をしています。
宏洋さんによると、これまでYouTube動画を差し止められた数は10本以上。実際に名誉棄損などで訴えられてもいます。強力な言論弾圧を身をもって知っているだけあって、今回の「よみタイ」連載停止もそうであると断定して発信されています。
真相は分かりませんし、過去4話どこかの団体の抗議もあったのかもしれません。ただ、そうした圧力によって連載を止めざるを得なかったとしたら、宗教2世の問題も、社会に害があるようなことも、教団側が不都合だと思えば全て握りつぶせることになってしまいます。脅しの成功体験を与えることにもなりかねません。
その場合、最も困るのは、メディアにハシゴを外されてしまった作者であり、そのインタビューに応えた2世の方々でしょう。
しかしながら、折れた(としたら)メディア側を責めるのではなく、宗教団体からの差し止め要請を緩和できるような法律の議論にも広がってほしいと願っています。
すなわち、「表現に対して特定団体から抗議があった場合の規定」のような法整備です。
何らかの圧力があったとすれば「掲載を続けるのであれば法的にどうにかしてやる」という連絡があったはずです。それに従わなくて済む、あるいはそれを制限できるようなルールがあればどうだったでしょうか。
信教の自由が保障されるのに、信教についての表現の自由には圧力がかかるのだとしたら歪(いびつ)でしかありません。これは昨今の名誉棄損訴訟の濫発の問題にも繋がる話ではないかと思います。
今回のことが、宗教2世問題を考えることだけに留まらず、社会的に疑問の多い団体への過度な保護になっていないかを多くの人が考えるきっかけになりますように。
そのためにも、まず今は違った形でやり直してでも、どうか連載再開を。
私たちはこれからも宗教2世の漫画を読みたいです。
黒猫ドラネコ
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