【潜入レポート】「報酬1万円」で若者をサクラに。絶望しかなかった反ワクチン大会in有明(前編)

有明であった反ワクチン集会のレポート(前編)です
黒猫ドラネコ 2024.10.01
読者限定

***

雨予報は外れ、快晴の都内。

江東区有明にある東京臨海広域防災公園で28日(土)、反ワクチン集団・通称「国民連合」による「5万人集会」が開かれた。

当初は「10万人集めよう」と意気込んでいたこの集会。一部ウォッチャーに注目された内部のゴタゴタもあって人が減り、目標を下方修正したようだ。

前回の日比谷公園集会はおよそ1万人を集めたが、この集会の政治思想の偏りなどに疑問を抱いた反ワク勢がアンチ化しているのもSNS上で目につく。反ワク思想だけでの共闘は難しく、5万人集結は無理があった。

それでも「大人数を集めて世間に注目されたい」との思いが、ついに表題のような「動員」に繋がったのだろうか。最終的に集まった約1万人の半数以上がサクラではと推測できる反ワクチン史上(嫌な歴史だな)最悪の失態…。

いつものように最初から最後まで潜入し、間近で観察してきた。詳しくレポートしていこう。

(当日のステージの様子)

(当日のステージの様子)

「スカウト」待ちでステージ観覧

集会の数日前から、X投稿で「デモ参加者募集」がいくつか出ていたことは話題になっていた。

文面に多少の違いはあったが、参加するだけで1万円の報酬との内容。それらは多くの人から疑われ、私も当初は、こんなに露骨なサクラ募集を出すだろうか?と怪しんではいた。

「国民連合」をずっとウォッチしているので、こういうことはしなさそうだと一旦は信じたのだ。

しかし、これまでのデモで見てきた「ある集団」の違和感を思い出すと、「バイト募集もあり得るな」と考え直すに至った。そして、現地でその予感は的中する(後述)。

こういう時は潜入用アカウントの一つで連絡してみるに限る。

何かの詐欺だったらそれはそれで面白い。私は自分がコケても読者の皆さんが楽しめたらそれでいいと心から思っている(猛アピール)。

「本当にお金がもらえるのか」「何か個人情報が必要なのか」

DMで数々の疑問をぶつけたが、その「スカウト」は全てに返信してくれた。

有明駅での集合場所、目印と時間が設定されたので、ひとまず暇つぶしをしなければ。こうなったら仕方ないので反ワクチン集会でも見るとするか。(いや本来の観察対象はこっちこっち!)

第一部デモ行進は朝8時半から始まった。

最初の参加者はおよそ2000人ほど。相変わらず「遺伝子注射を中止しろー!広島長崎に続く第3の原爆を日本人に落とすなー!」などのシュプレヒコールが上がっていた。

こんなもんに慣れてしまって「また言ってるな」ぐらいで済む自分が怖い。

(慣れてない人ごめんなさいこういうデモです)

(慣れてない人ごめんなさいこういうデモです)

(こういうアレな感じのやつなんです)

(こういうアレな感じのやつなんです)

行進を終えた梯団が戻り、ステージが設置された芝生の上にはじわじわと人が座り始める。早朝からテントを張って待っていた猛者もいた。

ステージ前の芝生ゾーンに向かっての道には、焼きそば、たこ焼き、から揚げ、かき氷などのキッチンカーが一通り。この集団主催で、ここまでフェスの雰囲気があるのは初めてだ。

この界隈にありがちなオーガニック系の店はざっと見たところ1軒だけ。製菓会社を敵視して「甘い物を食べさせ支配してどうのこうの」「小麦粉は体によくない」などを信じる参加者も多いはずなのに、チュロス屋だけで3軒もあった。

個人的にこういうのが思い出し笑いできるほど大好きだ。

正午過ぎまでの講演が始まる。芝生に座る観衆の数は、デモ行進の梯団などから概算しても多くて3000人ほどにはなったと思う。

立憲民主党の原口一博議員らが登壇。原口氏は特に9時過ぎには来場していた熱心さで、相変わらず「生物兵器まがいのものを止めましょう」などと言って聴衆を盛り上げていた。同氏が新たに立ち上げた団体「ゆうこく連合」もずらりと旗を掲げて披露された。

このほか、立憲からは川田龍平議員、その妻でジャーナリストの堤未果氏が登壇。この界隈の有名人によるワクチン反対のスピーチに聴衆が沸いた。

あのさあ、立憲民主党さんさあ…。というのももはや言い飽きた感がある。

(芝生席を埋めた反ワクチンさんたち)

(芝生席を埋めた反ワクチンさんたち)

主催者「国民連合」で不動の地位を確立した林千勝氏(作家)は、いつも通り「幸せなら手を叩こう」「ニッポンちゃちゃちゃ」をゆっくり低い声で歌って手拍子を促していた。

やはりここはとても怖い場所だ。

そして最も会場を沸かせたのは、都知事選にも出たトンデモ医の内海聡氏。「石破新総裁よりもどうしても許せない」と、自民党の河野太郎議員を名指しした。

うつみんは「まだ言えないけど」などとしながら、反ワク界隈にとっての不倶戴天の敵である河野氏と同選挙区から出馬しての一騎打ち(?)を「匂わせ」宣言。

これには会場が「うおおおお!」「決戦だー!」「神奈川行くぞ!」と最高潮の盛り上がりを見せていた。

(河野太郎氏に「宣戦布告」し聴衆を興奮させたうつみん)

(河野太郎氏に「宣戦布告」し聴衆を興奮させたうつみん)

個人的に最も「これ大丈夫なの…」と心配になったのはジャーナリスト山口敬之氏

以前からゲスト席や参政党の演説などに顔を出していたが、今回ついに登壇を果たし、自民党への罵詈雑言と「ワクチンの害」について興奮気味に叫んでいた。そっち方面に振り切ったんだろうか。

出番を終えた原口先生が公園内でハイタッチして参加者を喜ばせる。そんな中、颯爽と登場したのは元参議院議員の須藤元気氏だ。なんと仲間を引き連れて「街宣自転車」の集団で現れた。

キッチンカー通りを往来しながら気さくに撮影に応じるなど愛想を振り撒いていく。ゲスト出演でもなく、運営に関わるでもなく、参加者として訪れての奇抜な自己アピール。これが最も賢い手かもしれない。

参政党入りをやんわり断った件もそうだが、思いっきりこの界隈の人なのに、いつも「危機回避」の巧みさを須藤氏には感じる。

(チャリで来た。)

(チャリで来た。)

担当スカウトと合流

さて私が裏垢で連絡をとった「スカウト」との約束の時間。公園を出て有明駅に向かう。

いやはや度肝を抜かれた。反ワクさんが公園側に集って閑散としていたはずの駅近辺は、数えきれないほどのヤンキー風の若者で溢れかえっていたのだ。

彼らが反ワクチンさんではないことは確実。なぜなら何一つグッズを持っていないし、駅周辺にたむろするばかりで、熱いステージ(反ワクさんにとっての)が続いているにもかかわらず会場に向かう気配が全くないからだ。

地べたに座るギャルのグループや、明らかに中高生のヤンチャな男子たちがタバコをふかしていた。

「歩くのだるくね?」「これで1万じゃ安いよ」「デモのデモやる?1万じゃ足りないぞー!」「やばいうけるw」

このような若者らしい会話がたくさん聞けた。彼らが「参加報酬1万円」目的で集まったことは明白だった。

(大混雑した有明駅前)

(大混雑した有明駅前)

(有明駅前に集結した若者たち)

(有明駅前に集結した若者たち)

以下、個人情報保護の観点から多少ボカしながら書く。

駅員さんが「ここに集まらないで」と必死に叫ぶ中、若者がここに溜まってきたのには理由があった。彼らは、駅名の表示などをバックに次々と自撮りをし始めていた。

どういうことなのか聞いてみると「有明に来ている証拠を撮るよう言われた」そうだ。その場にいた多数の若者が、一緒にいる「スカウト」らしき人物に撮ってもらったりもしていた。

詳しくは書かないが、私の待ち合わせの情報とは違う部分もあった。小さな別々のグループが集まってここまで規模が膨らんでおり、そこには多数の指示役が散らばっていることが分かった。

「本当にそれだけでもらえるの」と野太い声がした。若者だらけの中で、明らかに異質なおじさん達数人やホームレスであろうおじいさん達のグループもいる。よく見ると中東かインド系の外国人たちも、アジア系の家族連れも。

彼らを率いて写真を撮るよう指示していたのは20代前半ぐらいのホスト風の若者だった。

結論から言うと、今回のネット上の募集は詐欺などではない。何らかのビジネスが展開されていたことは確かだ。 デモに参加することによる報酬はあった。

金額は1万円だけではなく、取材した範囲で2万円や1万5000円の人もいた。表に出ている最高額は3万円。例えばスカウトの人間が、1人集めるごとに3万円ずつ大元からもらえる場合、「一人1万円を渡します」と募集をかければ差額の2万円(×集まった人数分)をゲットできるというわけだ。

そんなピンハネの最下層にしてボリュームゾーンが1万円なのだが、現地の他のウォッチャーによると、それよりも低い額の受け渡しも散見されたらしい。

スカウトからお金をもらう所に後輩を連れていき、その人数分の報酬の数万円(スカウトがピンハネ済み)を受け取った先輩から、後輩は数千円ずつの小遣いを渡される。下請けの下請け、ネットワークビジネスの構図。「行くだけでいいらしい」と口コミで人が集められていったのだろう。

さあ私の待ち合わせ場所へ。目印の帽子の色で「担当者」であるスカウト君はすぐに分かった。

アカウント名(裏垢)を告げてDM画面を見せると、「どうもー」と軽い感じで挨拶を返してきた。下唇のピアスが光り、中肉中背で茶髪、柔道の阿部一二三にちょっと似たイケメンだ。年齢はおそらく20代であろう。

自己紹介などはなく、その場に続々と集められた見ず知らずの若い男女10人で一緒に行動するようになった。私と同世代ぐらいの中年女性もいたが、ほとんどが学生だと思う。

その場で、やはり有明駅前にいることが分かる写真を一人ずつ順番に撮られた。スカウト君の説明によると、行進の最終地点で全員の顔と人数が照合できる写真を撮れば完了。その場で報酬を渡すという。

渾身の演技で「初めてで不安なんだけど…本当にそれで1万円がもらえるの?」と聞くと、スカウト君は「絶対もらえるので大丈夫ですよ」とにこやかに言い切った。

「これってどこの会社がやってること?」

私のその問いには、優しかったスカウト君の顔色が少し変わるのが分かった。

(今回は特別に、以下の限定部分をメール登録者全員に読んでもらえるようにしています。この機会にぜひご登録ください。次回配信の後編では終着地点で目撃したものなどを綴り、サポートメンバー部分も設けますが、今回の限定部分を読めばより楽しめると思います)

「1万円は出ません!」叫ぶ集会スタッフを若者たちが囲み…

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