「チームK」は実在しなかった。Meiji Seikaファルマ、批判本の内部調査結果を公表
製薬大手のMeiji Seikaファルマは19日、同社を名指しで批判した書籍について、社内調査の結果を公表しました。この書籍は、9月18日発売の「私たちは売りたくない! “危ないワクチン”販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭」(方丈社)です。
どういう事態かを簡単に説明しますと、Meiji Seikaファルマが、同社員の有志チームが書いたとされていた16万部のベストセラー本について内部調査し、著者とされる「チーム」、書籍のタイトルなどいろんな部分で「でっちあげ」だらけだと明らかにしたというわけです。
書籍の著者名は「チームK」となっており、Meiji Seikaファルマに勤務する現役社員たちがチームを結成して、同社が手がける新型コロナウイルス対応の次世代ワクチン「コスタイベ(通称レプリコンワクチン)」の販売に反発して書かれたものとの触れ込みでした。
しかし、今回の社内調査公表では「同書籍の執筆に関わった社員は1人で、社内の現役社員グループによる編集チームは実在しない」ことが明らかにされています。
また、3年前のワクチン接種後に亡くなったという同僚のKさんに思いをはせ「突然亡くなった彼のことを忘れてはいけないと考える複数の現役社員で執筆しました」などと書籍では記されていましたが、調査ではなんと「当該社員は、『チームK』の名前の由来とされる元社員(故人)とは、面識及び業務上の接点はなかった」とのこと。
さらに、「当該社員は数年前よりSNS等を通じて、新型コロナワクチンの接種に反対する動画等を複数回にわたり配信していた」「ワクチン接種に反対する人物等とも接点を持ち、同書籍とは別の共同著書も過去に出版していた」ことも公表されました。
つまりこれって、単純に1人の社員が嘘を書いたというだけの話ではなくて、ワクチンを開発製造する会社の中にいたワクチン反対勢力の「スパイ」みたいな奴がやったことがバレちゃったみたいな話ですね。
そいつは会社内に同志が何人もいるかのように見せ、亡きKさんとは接点がなかったにもかかわらず、思想的な意図での出版に「利用した」と…。
こうなると胸くそ悪い話だと思うのは私だけではないでしょう。
(同社プレスリリースよりスクショ)
思想で社員を罰することは難しいと思います。例えば表向きに経営批判する活動だってあり得るわけで、出版も「表現の自由」でおとがめなしのケースがあるでしょう。ただ今回のように「社員たち」がそう思っていると「捏造」した本がむちゃくちゃ売れてしまったとなれば、そりゃあ調査もされるわなと。
「しかもキミ、わが社の業務を妨害する勢力とコッソリつるんでそういう副業してたよね」ってことで、普通はこんなの無事で済むわけがないと思うんですよね。
社員の誰にどんな処分が下されたかは、さすがに個人情報だけあって外部に出ていません。そういうちゃんとした大手企業が内部調査を公表するってことは、当然ながらこの本によっぽど怒ってるということなのでしょう。
Meiji Seikaファルマは、今回の調査をもとに、版元の方丈社に対して「正確な記載に訂正する要請をしております」としています。
しかし、この本って「私たちは」のタイトルをはじめ、内容にも「私たち」「チーム」「我々」と、「複数でやっていた」記載が、数えるのが面倒なほど出てきますし、訂正しようにも一体どうすればいいんでしょうか……。
例えば「迷っていることをお互いに打ち明け、悩みを共有したりということもありました」なんて表現までも確認できます。これ、1人で書いていると分かった今では、なかなか良い「自分会議」「イマジナリー頼もしい仲間たち」だなと思いますが、そんなこと言ってる場合ではありません。
それと、亡くなった元社員との関係性についても、その存在を知っていたかのように「常に周囲を明るく照らしてくれていた」などと記されていて、どういう手を使ったのか故人のお父様の談話まで掲載していました。
亡くなった元社員の方は多くの人に慕われていたのでしょうから、だからこそ本当に彼のことを知っている人からすれば、絡んだこともないワクチン反対派の社員に、まるで知り合いだったかのように色々と書かれたくないんじゃないでしょうか。亡くなった友人にそんなことされたら、私は絶対に嫌ですけどね。
版元の方丈社はどれほど「チームK(1人)」「Kを忘れまい(実は知らない)」の内幕を知っていたのでしょうか。これだともう、タイトルを「少なくとも私個人は売りたくない」みたいに訂正すれば済むという話でもなさそうです。
19日現在、出版社側にはこの訂正要請や、複数の取材依頼も届いているはずなのですが、表向きには動きがありません。
(方丈社の書籍ページよりスクショ)
Meiji Seikaファルマ社内では、この書籍が出版された当初から、小林大吉郎社長をはじめ上層部の皆さんに「デタラメを書かれて許せない」との怒りがあった一方で、「もしかしたら社員の間には不満が渦巻いているのではないか」などと疑心暗鬼になるような思いもあったようです。
そして特に営業面では、期待を背負った新たなワクチンを売り出すことになったのに、多くの医療機関などとやり取りをする中でも、この「社員たちの告発」かのような本のせいで肩身の狭い思いをしていた社員も多かったことでしょう。
それでなくても、これまでワクチン反対勢力によって、会社の前で何度も抗議活動をされたり、ネット上のデマや誤情報の嵐に理不尽にも苦しめられてきた企業です。
本日19日付けの同社のリリースでは、亡き元社員を含め「元社員のご家族や当社社員を含む関係者に誤解やその他の影響が生じないよう、真実をお伝えする必要があると考え、本日の公表に踏み切る判断をいたしました」となっています。
そして、「同書籍においては、当社社員の多くが次世代m-RNA ワクチン(レプリコン)を『売りたくないと思っている』という記載もございましたが、当社といたしましては、次世代m-RNA ワクチン(レプリコン)を新型コロナ感染症の予防接種に供することについて、多くの社員が誇りを持って取り組んでいます」と記されていました。
おそらく企業としての発信の制約がある中で、こうして毅然と表明を続けていることには、同じような有象無象からの誹謗中傷を受け続けている医療従事者らを中心に、称賛や支援の声が上がっています。
(黒猫ドラネコ)
(本社前での抗議デモの様子=11月22日)
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