「陰謀論者たちの姫」八王子で大騒ぎ。深田萌絵ファンが駅前や警察署周辺を埋め尽くし…
JR八王子駅北口を出てすぐの高架型歩道は「マルベリーブリッジ」というそうだ。
「八」のモニュメントが置かれた地域の象徴たる広場で6月1日(日)午前、インフルエンサー・深田萌絵氏による街頭演説がおこなわれた。

(八王子駅前で演説する深田萌絵氏)
危険な群衆
反ワクチン・陰謀論界隈からの人気が非常に高い女性で、ファンの熱量は最上位と言っても過言ではない深田氏。
扇動的な発信も多く、「陰謀論者たちの姫」のポジションを確立したと言える。
街宣の告知も短期間だったにもかかわらず、SNS上では多数の好意的な反応があり、やはり当日は駅前まで驚くほどびっしり人が詰めかけた。
広さがあるとはいえ歩道橋の上だ。過去に選挙期間などで多くの人が集まることはあったのだろうが、今回は誘導スタッフが少なく、人が増え続けるので歩行者の動線が塞がれていた。
群衆が分散できず制御不能になっている。事故が起こらないか心配だった。
私は撮影もそこそこに、危機回避で少し距離をとりながら観察した。

(デッキを埋めた聴衆)

(デッキを埋めた聴衆、解散前でもこの状況)
反ワクチン集会でよく見るスタッフから「一般の方の道を確保して」「点字ブロックに乗らないで」と、何度も注意が飛んだ。
「萌絵さんの姿を見たい気持ちは分かりますが、危険な状態です。このままでは中止せざるを得なくなります。前の人は10分経ったら後ろの方に下がってください」
そのような呼びかけも虚しく、どんどん人は増えていく。
500人までは予想していたそうだが、ざっと1000人以上は来てしまい「こちらの想定ミスです」とスタッフが陳謝。
しかし、「演説が聴こえないじゃないか」と文句を言う人もいて、「最後に萌絵さんが全員と握手をして回りますから」との話でなんとか折り合いがついたようだ。
イライラが募っているためか、そこらじゅうで「押された」「肩が触れた」だのの小競り合いが起き、そのたびスタッフらがなだめ、警察も呼ばれる騒ぎになった。

(そこらじゅうで起こるバトル)
そんな状況下で簡易ステージに立ち、視線を一身に集めたのが深田氏だ。赤い洋服に身を包み、スタッフに日傘を差されている。
最前列には多数のYouTube配信者らが陣取った。日の丸の旗が振られ、「もえちゃんガンバレー」の声がひっきりなしに飛んだ。
一般の歩行者が「誰なのあの人…」と不思議そうに眺めていた。
「脅迫された」?
そんな「姫」の演説は午前11時過ぎに始まった。
長くなるので簡単に説明すると、萩生田光一議員(自民党)から刑事告訴された深田氏は、そのことを「権力を使った脅しである」「内乱罪で、と聞いている」などとして、ここ萩生田氏の選挙区に自分の支持者を集め「おかしいと思いませんか」と主張したのだった。
刑事告訴は、国政進出を計画している深田氏を潰すための選挙妨害だ、とのこと。
発言などを総合すると、LGBT理解増進法に伴い「女子トイレが無くなって子どもたちが危険に晒される」と深田氏らが反対運動をしていたことに、萩生田氏(と日本財団?)が圧力をかけてきたのが発端なのだという。

(聴衆を煽った深田氏)
で、それらはあくまでも深田氏の言い分。
女子トイレの件で書面が届いたというのも別の話だったようだ。事実だけ追えば、深田氏は一昨年頃から画像やチラシなどで延々と萩生田議員への不穏な言及を続けていた。
そのため、萩生田議員側が「事実無根の話を撒くのは止めてほしい」と警告した。そして、そのことも「脅迫だ」として訴えた裁判では原告の深田氏が敗れている。
それでも深田氏からの言及が続いたので、このほど萩生田議員側がついに刑事告訴に踏み切った形だ。

(萩生田氏のインスタグラムよりスクショ)
「脅迫には当たらない」とされた判決について、深田氏は今回の演説でも声を震わせ「たとえ裁判で決まっても私は違うと思います」「裁判官は本当に日本人なんですか」と叫び、「そうだ!日本人じゃない!」などと声援の後押しを受けていた。(ひい)
身振り手振りで、「日本を狂わせている萩生田こそ豚箱に入れ」「裏金の二倍の金額を税金で納めて能登の復興に使え」などと発せば、「泣くな萌絵ちゃん!みんなついてる!」といった野太い声が響く。
聴衆から「萩生田と自民党を許すな!」「死刑だー!」の声まで飛んでいた。(ひいい)
ともに活動してきたという吉澤あかね日野市議、橋口かずや氏(無所属連合=内海聡医師が立ち上げた政治団体)や、一般女性らも深田氏に促されて演説した。
いずれも「萌絵さんが脅しに屈さず立ち上がった」「萌絵さんがいなかったら日本の子ども達はどうなっていたか」とかなんとか感謝を述べて、「今日はみんなで立ち上がった始まりの日だ」みたいな宣言があった。
深田氏は刑事告訴された身であるが、逆に「萩生田氏から脅迫された」として八王子警察署に行くという。
興奮気味の聴衆も、午後から大挙して警察署前に向かうことになった。

(ファンが掲げたプラカード)
警察署を取り囲んで
駅からバスで20分。3キロほど離れた八王子署は、住宅地に隣接している。
予定の午後1時を過ぎて、最終的にはおよそ400人が大集合。道路を挟んだ向かいの歩道まで埋めるように警察署を取り囲んだ。
近隣住民が「何事か」と心配そうに家から顔を出していた。

(八王子警察署前に集まった人達)
一応は警察側も、集団の来訪を覚悟していたのだろう。カラーコーンを置いて規制し、しっかり準備がされていた。
反ワクチン集会でおなじみ元自衛官の佐藤和夫氏が場を仕切り、「皆さんのトイレが心配。あちらにコンビニがありますから」と迷惑な誘導を開始。
しかし、警察署を取り囲むような人達がそんなに聞きわけがいいはずもない。おば様が出入口警備の警官に「どうして署内のトイレを使っちゃいけないの」「こっちは血税を払っているんですよ」と食ってかかる。
同調しかけた者もいたが「揉め事はやめましょう」「萌絵さんのためにならない」となだめる人もいて、しぶしぶ引き下がっていた。
なんだか色々と限界は近い。
そんな不満も募る中で事件は起きた。「あ!見て!」と群衆がどよめく。視線の先には一台の車。
「皆さま、お騒がせしております」
朗らかな音声とともに、おそらく何も知らない自民党の街宣車がやって来るではないか。
車体には当然ながら萩生田光一氏の顔! こ、これはマズいぞ…!

(警察署前を通っていく自民党カー)