【潜入レポート】主催者らの背後でバイト代支払い。地域の憩いの場も荒らされた反ワクチン大会in有明(後編)
▽前編はこちら
9月28日、土曜日昼の東京臨海広域防災公園は反ワクチンにもワクチンにも全く興味がない若者らが集まって大混雑した。
「小遣い稼ぎ」のためのデモ行進を待機させられる彼らは、芝生に寝転んだり、地べたに座ってタバコをふかしたりしていた。
このだらけた光景とサクラの実態はFNNで報道もされた。
早朝からフジテレビ社屋に向けて「真実を報道しろー!」などと叫んでいた反ワクチンさんたちの集会で、こんなにも皮肉なことがあるだろうか。
この先どんなに人が集まっても、金をばら撒いて動員した今回のイメージが消えることはないだろう。浅はかなことをしたものだ。
なお、この集会には「ドキュメンタリー映画を撮ろう」なんてことで、監督や撮影スタッフが入っていた。
今回のサクラ騒動や報道を受けてもなお、上辺だけで「こんなに盛り上がったんですよ」という反ワク満足映画を作るつもりならいよいよ救えないと思う。
サクラの子たち
当日、もはやウォッチャー勢の興味は反ワク集会にはなかった。
私が高校生のグループに詳しく話を聞かせてもらっていると、すぐ横の若者たちが、スマホに届いたメッセージに怒っていた。
「タバコだめなんだって」「は?なんで?だる」「アイコスはセーフっしょ」
どうやらサクラたちの素行の悪さが主催者に伝わり、人集めの懺悔投稿をした人物を経由してなのか、それぞれのスカウトに連絡がいき、「行進中や公園内で喫煙するな」のような注意の通達が一斉に回ったらしい。
ただ、それもグループごとにまちまちなようで、若い子らには何の通達もなかった。なのでタバコを吸う奴は、ばかばか吸い続けていた。
(若者たちがデモ行進を待機する様子)
(どうみても反ワク集会に興味のない若者たち)
ステージでは、都内で反ワク・反マスクのカフェを経営するバンド「ヘヴニーズ」などがいつもの「気高き日本人はどうのこうの」みたいな内容の歌や音楽をかき鳴らしていた。
観衆の反ワクさんたちが盛り上がっているようには見えない。それは周りを囲むサクラの若者たちの好奇の目もあってのことだろうか。
「何あれキッショ」などの容赦ない声はいくつも聞こえてくる。
私も「うんうん、そうだよなそうだよな」と慈愛に満ちた表情を向けながら取材を続ける。
「お兄さん(黒猫)はこのデモ、どう思ってるんですか?」
やや心配そうな逆質問だ。私は食い気味に「ヤバいやろ。見たら分かるやん」と答え、すぐ若者たちと爆笑の輪が広がった。なんだかとても嬉しい。
全員の視線の先には「3発目の原爆を落とすな」「厚労省解体」「レプリコンの大虐殺を中止せよ」などと書かれたプラカードを掲げてデモ行進のために並んでいる中高年がいる。マジで目が怖い。
「やっぱりな~」「カネもらえんのかなあ」「もらえないなら帰ればいいだけだし」「でも電車代痛くね?」
このノリのいい素直な高校生たちは自ら応募したのではなく、地元の先輩から人を集めるように言われ、何も知らない友人達を誘って来たのだという。
前編でも書いたが、最後までその先輩について行けば、スカウトがピンハネした後のお金から小遣いぐらいはもらえるかもしれない。
中国のカルト団体が紛れ込んでチラシを配っているので受け取らない方がいいと伝えると、高校生たちは「マジすか…やっべ…」と絶句していた。
ステージ上では、何も知らない司会者の男が、若者たちを小馬鹿にするように「1万円もらえませんよぉ?(笑)」とか言っていたそうだ。
集会スタッフも次々と「バイト募集はデマ」ということを若者たちに呼びかけていた。
手書きのプラカードを持って練り歩き、「デモの参加報酬はありません。ネットの誤情報です」などと断言するアナウンスが広がる。
若者たちが「はあ?報酬あるし。こいつら嘘つきだろ」とか言いながらスタッフをなじったりしていた。
態度はすごく悪いが、実は正しいのは若者の方である。
(若者に向けてプラカードを掲げる集会スタッフ)
こうした呼びかけによって、「デマだったのか」と帰って行く若者も一部いたらしい。
反ワクさんたちの懸命な呼びかけが初めて若者に届いた瞬間だったかもしれないと思うと、それはそれでちょっと面白い。
デモ行進が出発、終着地へ
ステージ後方の出口から、続々とデモ行進がスタートしている。
海外からも反ワクチンの重鎮たちを呼んで講演しているのに、行進があるので会場内からどんどん人が減っていく。「シンプルに意味がわからん」というのはウォッチャー勢の共通見解だ。
時間制限があるにしても、もうちょっとやり方はあるだろうに。
梯団の数は30ほどだったそうだ。
サクラの若者だけで構成された梯団もあったようだが、若者たちが反ワク中高年さんの列に組み込まれたり、無理やりプラカードを持たされたりしていた。
別のウォッチャーの取材によると、現地では「幸福の科学」関係者らがメガホンなどデモ用グッズをたくさん貸し出していたようだ。ひいぃ。
あとで分かったが、デモ翌日の都議らの清掃活動でメガホンや横断幕などが発見されたのはおそらくこのため。若者たちは棄てたのではなく、グッズを返却する相手が分からずに置いて帰ったのだろう。
責任をもって回収しなかった主催者側の責任でもある。
万が一今後同じ事が発生した時に、近隣にお住まいの方が通報(相談)できる窓口や対応して頂ける管轄についてもご案内できる様確認しておりますので、進捗状況等改めてお伝えさせて頂きます。
人が多すぎてかなりの数の若者が出発できず、行進の最終時間に間に合わなかったという話はあとから聞いた。
多くの若者が「どうすればいいのか」と戸惑ったに違いない。
このあたりは若者に紛れ込んで潜伏取材していた雨宮純さんのレポートにも詳しい。
私の身は一つなので、全ての状況を見届けられるわけではない。ほかのウォッチャーによる熱心な取材は本当にありがたい。
午後のデモ行進「豊洲ルート」は、朝の「お台場ルート」よりも長く、多少アップダウンもある道のり。ここ有明からおよそ3km先にある豊洲公園が終着点だ。
このルートは、ほとんどが湾岸道路や埋め立て地を結ぶ橋の上。繁華街もなく、海沿いのタワーマンションの並ぶ閑静な地であることもあって、沿道に人はそんなにいないはずだ。
なぜこんな所でデモ行進などする必要があるのかさっぱり分からない。
タワマンに向けて叫べばいいと思っている反ワクさんもいたらしいが、東京湾沿いに建つ日本有数の高級マンション群の窓の性能をナメすぎだ。
ウォッチャーの一人は「参加者は見るからに貧乏そうだし、お金に困っている若者もたくさん来たので、良い暮らしをしている人が多い豊洲エリアで叫ぶのはいいストレス解消になりますね」みたいな割と辛辣なことを言っていた。
いくら私でもそういう酷い意見には同意である。(ワオ!)
出発地でシュプレヒコールの紙を配られ、「何のことか分からんけどどうせなら派手に叫ぼうぜ」的にギャーギャー喚いていた若者たちも、やはり途中で飽きてダルそうに歩いていた模様がしっかり捉えられている。
私が潜入中の担当スカウト君のグループも、無事にどこかの梯団として出発できたようだ。あとになってウォッチャーの撮った行進中の映像に、だらだらと歩いている様子が映っていた。
あれだけ大人数がいたのに、ほんの短い時間の映像に自分のグループがピンポイントで映り込む。こんなにもいらない奇跡があるだろうか。
そのスカウト君からDMで、早くも終着地の集合場所が送られてきた。間に合わなかったらまずいので電車で豊洲に向かった。
終着の地・豊洲公園。
駅からすぐ近くの地域の憩いの場は、ガラの悪い若者と反ワクチンさんにすっかり占拠されてしまった。
午後3~5時過ぎまでの時間帯に、遊具のエリアや芝生広場にもいられなくなった親子連れが、どんどん隅に追いやられていく。あんまりだ。
(豊洲公園を埋め尽くす反ワクデモ行進後の若者たち)
地域住民のX投稿にもあったが、何よりも残念だったのは、そこらじゅうに捨てられた吸い殻、空き缶やペットボトル、反ワクチンのチラシ(まあそうなるわな)…。
新党くにもりのシャツを着た人達が2、3人でごみを集めていたのを見かけたが、前述の都議らの清掃活動の投稿でも分かる通り、少人数ではどうにもならないほどに公園全域が荒れてしまった。
後日、主催者に近い反ワクチン配信者さんが「デモの印象を悪くするため夜中のうちにゴミを撒かれた可能性もある」みたいなことを主張していたが、本当に本当に頭がアレなんだなと思った。
終着地での金銭授受
駅側の狭い入口では、スピーカーからワクチン反対の変な歌(と書いて騒音)が大音量で鳴らされる。自転車で通りがかった地域の人達が迷惑そうに耳を塞ぐ。
到着したての若者らはヤケクソで「ワクチンはんたーい!」「ゆるすなー!」とか叫びながらゲラゲラ笑っては公園内に吸い込まれ続けていた。
(ようやく到着してテンションの上がる若者らの梯団)
そうして若者が溜まっていく中で、主催者の共同代表である林千勝氏、新党くにもり(チャンネル桜)水島聡氏らが「ありがとう!」「みんなよく来てくれた!」と感謝し、「君達の声は届きました!」などと称えながら握手を求めたりしていた。
実はこの行進の前、ステージ上で林氏は「桜響明隊として20代の若者500人が来てくれます!」などと叫んでいた。
バイト代の若者のことまでは知らなかったのかもしれないが、少なくとも主催者側と桜響明隊との繋がりはあって、大量動員できる見込みとの事前連絡があったことだけは確実だ。
たった500人ならば、デモ取材に慣れた私は数えきることができる。梯団の数などから考えるとその10倍近い数の若者がいたはずだ。
(豊洲公園で若者を出迎えた主催者側の林氏、水島氏ら)
事態が分かっていないのか、それともわざとなのか。反ワクおじさんおばさん達も主催者らの横で若者の到着に拍手を送り続けている。
バイトの若者の中にもお調子者は多く、「いえーい!」と嬉しそうに拍手に応え、おどけて反ワクさん達と握手して回り、「やめとけお前w」と仲間にツッコまれたりしている。
実に分かりやすい若者のノリはそこらじゅうで広がっていた。
さて、そんな偽物の交流よりも残酷なシーンをお届けしなくてはならない。
読者の皆様お待ちかね、金銭授受の模様である。
行進の余韻で満足そうな反ワク中高年たち。そのすぐ後ろ側で、若者らには「こっち集合で!」といろんなところから声がかかっていた。
全員の顔が映るようにして写真撮影をするのはほとんどのグループが共通だ。
その撮影後に、人が少なければその場でさっさと現金の手渡しが始まり、多ければ少し離れたところで行列を作ったりもしていた。
(若者らの集合写真。公園にいたらしき親子連れが退避する)
(並んでお金を渡す様子をあちこちで現認)
電子マネーで払っているのかスマホをかざし合う姿があったり、「振り込みで後払いらしいけど大丈夫なのかな」などという言葉も飛び交っていた。
それらの多数の証拠が、ウォッチャー有志によってカメラに収められていく。
隠す気も多少あるようだが、あからさまなグループもあった。
まるで地下チンチロ大会でもやるかのように車座になり、嬉しそうに現金の受け渡しが始まってしまった。座っているので上から丸見えだ。
なんとそこは、若者を感謝の言葉とともに出迎える水島氏らのすぐ後ろの芝生ゾーン。
「本当にありがとう!お疲れ様です!君たちの行進はたくさんの人に届い…」
いや、主催者ぁ! 後ろ!後ろぉー!!
(主催者ら近くで堂々と報酬のやりとりをする若者たち)
この終着地にも「デモの報酬はありません」との呼びかけはあった。
だが、現在進行形で報酬をゲットする者だらけの中でそんなプラカードを掲げても全く無意味だ。
現金を受け取っているのを間近で目撃し、「(ああ…誤情報では…なかったんだ…)」という感じで明らかに落胆していたスタッフのおじい様を見た。
無力感、そして悲しみが溢れるシーンだった。
スタッフが周知を諦めて置いていったプラカードは、おそらくは悪ノリした若者らによって上書きがされ、そのへんに転がっていた。
こんな一部始終を撮れるのがトンデモウォッチの醍醐味である。(決して良い趣味とは思っていない)
(公園内に置きざりのプラカード。訂正したのは誰だろう…)
#陰謀論 #反ワクチン
#ウォッチャー勢の力でドキュメンタリー映画を撮ろう
(以下、サポートメンバー限定部分では、私の潜入グループはどうなったか、怪しい外国人集団を捉えた様子、フィナーレのデモ行進などを取り上げます。ご興味のある方はこの機会にぜひよろしくお願いします)