【潜入ルポ③】有名俳優「事務所に内緒で」登場!戦争映像の音楽祭に観客が号泣した参政党の政治資金パーティーin東京ビッグサイト
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「波動米」のあの人が!
目覚めた議員対談に続いて「東西スピーチコンテスト」である。議員候補の党員が東西5人ずつに分かれて弁舌を披露するのだ。
スクリーンにQRコードが大映しになる。会場の皆さんに投票してもらうシステムだそうだ。会場内は撮影禁止のはずだが、QRコードを使うには撮らないといかん。いいのか…。ちょっぴり不安になる。
東西一人ずつの対決らしい。まず東軍の若い女性から。「子ども達の心と体がコロナワクチンで壊されてしまう」と、やはり”目覚めちゃった”ところ「参政党がテレビでは言わない本当のことを言っていると感じた」「不安だったのが参政党に救われた」そうだ。
ああ、君は完璧で究極の参政党員。THIS IS 参政党にハマる人。コロナ禍さえなければきっとこんなことには。ああ…。
さて、対する西軍はダウンタウン浜ちゃんの若い頃みたいな年齢不詳の男性。公立小学校の元教師だそうで「学校が本当の歴史を教えない」と感じ、今はフリースクールの教員とのことだ。
「日本は建国以来教育を大事にしてきたんだからもっと幸せに生きる教育をしろ」みたいなペラッペラな主張だった。
…なんやこの対決は。参政党っぽさを競うやつか!?
投票タイムがスタートした。スクリーンのQRコードをバシャバシャ撮る観衆。
しかし高齢者が多いためか、読み込んだスマホで何をやっていいのかチンプンカンプンなようで、そこらじゅうで操作を教えあう姿がある。隣の中年の娘さんらしき人に教えてもらいながら「撮影禁止なのに撮ってもいいのね?」と、剛速球ストレートを叩きこむおばあ様がいて思わず感心してしまう。
一組ずつのスピーチ対決を詳しく語りたいが、ここでメモは途切れる。
なぜなら、東軍で出て来た割と美人な女性が「政治はビジネスではありません…」などと参政党へのブーメランとは思いもせず、深刻そうに語ったシメの部分で「国民の三つの柱。基本的人権の尊重、平和主義…………と…あ…なんだっけ…。えっと…憲法の、中にあるものがっ守られていないのでっ(笑)」と、暗記が飛んだら中学レベルの公民すらダメダメなことを一気に露呈したからだ。
いや「ガンバレー!」じゃないんだよ観客も…。これを衆院選に出すんかよ…。
私の集中力も完全に飛んでしまった。
先ほど国歌を独唱した豊中のオペラ歌手も西軍で参戦。「緊張して9時間しか眠れませんでした」みたいな演説でもなんでもない大阪漫談で、神谷代表の名ゼリフのパロディなどをエエ声で披露してウケていたが、内輪の盛り上がりは割愛する。
このほか「コロナ騒動のおかしさに気付いた」「LGBT法案は性の区別を無くすとんでもないもの」「神様に聞かれた時に後悔しないように」「目覚めようニッポン!」「アクション×3(掛け声)」などなど、それぞれの濃い候補者から参政党的な主張が相次いだキツい時間だった。
だがしかし、このパーティーに来てよかったと思ったことが一つだけあった。
西軍として、「大調和波動米」「米本位制」でおなじみの和歌山の林元政子サンがご降臨なさったのだ。
ご尊顔を拝み、肉声を聞くことができるなんて。参政党ウォッチャーとしては21世紀で最幸の出氣事である。
分からない方は今からでも遅くないので雨宮純さんのまとめをどうぞ。
そんな林元サンのスピーチはこうだ。
数年前の神谷氏主催の勉強会合宿にて、狭い部屋でみんなで未来を語り合い「日本を覆いつくす戦後レジュームに挑戦するプロジェクトだと思った」とのこと。
そんなこと言いながらアンタの言う米本位制に移行しちゃったら戦前どころか米俵を納めるみたいな時代になりそうなんですが、そのへん大丈夫なんでしょうか…。
「文明の転換点。日本人は賢い。情報さえ届けば、一定割合に達したら形勢は変わると思いませんか?」と林元サン。
おお「文明の転換」! やはりお米を通貨代わりにする決意表明か…?(わくわく)
「オセロはまだ塗り替えられる。だって知らないだけだから。知ってしまえばこんなにワクワクするプロジェクトはないですよね。衆院選を使って必ずオセロを塗り替えましょう!」(ワー!大拍手)
チッ…違った。いつもの参政党的な身内へのゲキだった。
波動米360万円分(を林元サンから買う)通貨システムについての言及が全くなかった。政権を奪って、米を領主に納めるような時代に戻したいとの決意はないのか。つまんねえ。何がオセロだ。オコメはどうしたんだよ。
ただ、私の後ろの席からも「あれが林元さん…」「ほら波動米の…」とか聞こえてきて、党内でもそんなに有名なのかと思うと、もうそこからニヤニヤが止まらない。
そんなこんなで誰よりもスピーチコンテストを堪能した私である。
(入場口付近でもわざわざ立って挨拶していた候補者たち)
ぐだぐだの投票タイム
さて、実はコンテストの投票はぐだぐだだった。
「投票お願いします!」と司会が言い続け、何度もスクリーンにQRコードを映しておきながら、3組目ぐらいの対決後に突如「まだ投票ボタンは押さないでください」とのアナウンスがあったのだ。
「ええぇー…!?」とざわつく観衆。決して交わることのなかった参政党員と私の気持ちとが大調和した瞬間である。
「すでに投票してしまった人はもう一度、ブラウザを開きなおして…」と指示が出る。しかし、ただでさえ操作方法を教えてもらっていた高齢者の党員の皆様は「ぶらうざ…?」と、もはや放心状態。
ああ、そうだ。こういうぐだぐだが見たくて私は潜入をやっているんだ。(とても性格が悪い)
30分間の休憩に入った。この間に集計するようだ。
ここで投票タイムのお詫び…があるはずもなく、再び投票へのアプローチがある。
座席案内で立たされていたスタッフがいつの間にかQRコード掲示係に転身。その周囲には人だかりができた。
これに加え、客席前方にオープニングの揮毫パフォーマンスの作品も展示されて休憩中の館内はみんなバシャバシャやり放題になる。もう「撮影禁止」のルールもぐだぐだのぐっだぐだ。
念のため男性スタッフに「撮ってもいいんですよね?」と聞いてみると、「ここ(作品展示)以外は原則禁止なんですが、みんな気にせず撮っちゃってますもんねえ(笑)」となぜかフレンドリーに返された。なんかうぜえ。
でもこれはもう撮影解禁だな。やったぜ!
おっと、危ない。パーティーの雰囲気にそぐわないと判断されたら追い出されてしまうんだ。楽しみつつ撮るようにしようっと。
(QRコードを掲示して囲まれるスタッフ)
偏った爆音ライブに号泣
休憩が終わると、ステージ上にはド派手な和装の集団が準備万端だ。もう投票のことなどみんな忘れた。
ここからはHEVENESE(ヘヴニーズ)というバンドのコンサート。
ヘヴニーズはコロナ禍の当初から、感染対策やワクチンに異を唱える独特な主張の「We Rise」なる集会を主催し、コロナ禍の政策や取り組みを揶揄する音楽動画を配信して反ワクチン・陰謀論界隈を賑わせてきた集団である。
「We Rise」の実行委員会には神谷代表も名を連ね、昨年はリーダーのマレ(石井希尚)が参政党の応援演説にも来た。マレらが経営する都郊外の「ノーマスクカフェ」は週刊誌にも否定的に取り上げられている。
(We Riseのトップ画像より)
参政党と近しい反ワクチン音楽団のライブは、白煙の柱が何本もバシュー!と吹き上がる演出から始まった。
音が割れてほとんど何と歌っているか聴き取れない。パイプ椅子がきしむほどの爆音での演奏。当初は驚いて思わず耳を塞ぐ人もいた。もう少し音響はなんとかならなかったのか。
5面もあったスクリーンでは演奏中の姿を全く映さず、歌詞やPV(竹林など)が延々と流されている。ステージが見えない端の席にファンがいたらお金を返してあげてほしい。
私は幸いにも(?)ステージとスクリーンが両方とも見える位置にいたが、そんな環境にもまして辛い気持ちになったのはその内容だ。
太鼓、三味線、笛なども交えた和風ビジュアル系といった様相だが、スクリーンのPVに映された歌詞で「『侍(さむらい)』とは古代ヘブライ語の”シャマライ”から…」のような単なる嘘でしかないトンデモ論の語りなどがあった。
何が面白いのか全く分からなくて申し訳ないが、愛国がどうのこうの先人が守った血や文化がどうこうのの曲が続いた。
かと思えばアップテンポで「小さな頃から変わり者と言われていた」みたいなマイレボリューションを薄く伸ばしたような曲も。これは党員へのエールのように聞こえる。
その曲のバックで、白Tシャツ姿(そこはオレンジだろ!)のキッズがたくさんステージに登場してダンスを披露した。「未来を託したいフリースクールの子ども達です!」とのことで、よく見ると会場出口付近に保護者らしき集団が立っていて手拍子で見守っている。きっと参政党員だろう。なんだか心が痛くなる。
子ども達が去ると、再び爆音BGMの中、ボーカルのマレが「かつての日本がいかに優れていると思われていたか」のように、古い海外文献の内容を大声で朗読した。
一つ一つの言葉のたびに観衆から大拍手が送られる。独壇場になったマレは独特な主張のシャウトに入る。
「コロナを恐れ!治験のない薬物を強制した政府!恥を知るべきではないのかぁ!」
(そうだー!ワーーー!拍手)
「保身のために!マスク一つ外すことができない人は恥じるべきだぁ!」
(そうだそうだー!!ドワーーーー!大拍手)
「だが責めるのではなく!今こそ立ち上がろう!日本人の使命を自覚することだ!ここに仲間がいる!国とは人だ!心に刻め!国の形が変わろうと日本は滅びない!あなたこそが!日本!だからだぁ!!」
(ジャンジャンジャーーンジャジャーン……ドドンBGM終了でうおおおおおおおおお!!!)
指笛も飛び交う大喝采。頼むやめてくれ…もう終わってくれ…。しかしまだ宴は終わらない。
ラストは「靖けき国へと」みたいな感じの歌詞でバラード調。スクリーンには戦時中の白黒映像、特に特攻隊の出陣の模様や、艦隊への激突シーンなどが何度も延々と流された。いったい何回爆撃したのか分からないほど。
そんな映像に合わせ、大音量の荘厳な音楽が耳に入り続けることで、観客席の多くは感情を揺さぶられ、トランス状態に陥ってしまったようだ。
私の右斜め前の若いお母さんは、爆音に顔をしかめ退屈そうな幼稚園児ぐらいのお子さんの隣で、自分の目にハンカチを押し当てていた。しばらくすると震えながら床に落涙するほどエンエン号泣しはじめた。きつく抱かれた幼い子が不安そうにしている。
なんなんだこの地獄は。俺、なんか悪いことしたか?(自分で潜入してんだろ)
ハッ!まさか…! ふと気付いて見渡すと、そこらじゅうですすり泣きが漏れ、ハンカチで涙を拭い、リズムに合わせて日の丸とオレンジ色の旗が揺らされ、何かにウンウンと深く頷き合う姿がある。
完全に囲まれた…もうダメだ。助からないかもしれないが念のため一緒になってウンウンと頷いておく。ああ…これが…大調和…(たぶん違う)
色とりどりのレーザー光線が反射する真顔や涙涙の表情があまりに怖い。
スクリーンにはなおも白黒映像で戦地に向かう人々、原爆、空襲、昭和天皇、東條英機、GHQなどが次々と映され、「目を背けてはいけない」なのか潤んだ目を乾かすように見開いて自分達の世界に入る党員たち。
言っておくが、これは国政政党の政治資金パーティーでの音楽コーナーである。
あまりにも偏りが酷すぎる。マジでなんなんだこの集団は。誰が許可したんだ東京ビッグサイトなんて使うのを。
シークレットゲストはあの俳優
コンサートが終わると司会者も「すごかったですね。素晴らしかったぁ…」とか言い、会場全員(私以外)が絶頂に達したかのような興奮冷めやらぬステージでは、党の新ボードメンバーの紹介が始まった。
神谷代表によると、今後は党所属の県議会議員らを主体とし、社外取締役のように党内をチェックしていくそうだ。
特に面白味のない人達がなんか決意表明していた。あまり興味が沸かない。それとコンサートの精神的ダメージのせいであまり聞いてなかった。割愛する。
あと読者の皆様は忘れていると思うけど、ここでスピーチコンテストの結果が発表され、西軍が勝ったらしい。なぜか林元サンが代表して「オセロが」どうのこうのとまた言っていた。やったぜ波動米(ベイビー)。
票数も何も言わなかったけど本当に集計できたのだろうか。しかしそんなくだらないことはどうだっていい。問題は予定表になかった次のコーナーである。
司会から「シークレットゲストが来てくれています」と紹介があり、神谷代表が嬉しそうに「党員ではないけど、参政党に興味があるということで…」と前振り。そして今日一番の渾身のドヤ顔で叫んだ。
「皆さんご存知のセクスィー部長!沢村一樹さんにお越しいただいています!」
音楽とともに沢村氏が舞台袖から颯爽と登場。
端正な顔がスクリーンに大きく映されると、会場からは「ええぇー!?」「キャアアアアア」と悲鳴まじりの大歓声が起こった。