悪魔合体…!「がん新薬」を謳って株を買わせる会社に反ワクチン勢が加担【前編】
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高齢者が集まるセミナー
駅からすぐの多目的ホールに、続々と高齢者たちが吸い込まれていく。
「健康セミナー」と称した講演会は28日正午過ぎ、千代田区内でスタートした。ウィンメディックス社主催。がん患者らをターゲットにして全国各地でセミナーを開きながら、株や商品を売っている会社だ。
今春に白木茂代表らが逮捕され、その手法なども大々的に報じられてはいたが、今も何も変わらず白木氏はセミナーに登壇して、ビジネスを続けているようだ。刑事司法制度の限界を感じずにはいられない。
平均年齢60歳を優に超えるであろうセミナー参加者には、体の不自由な方や、介助が必要な人もいた。顔見知りも多かったようで、スタッフが名前を呼びながらにこやかに迎え入れつつ、最終的には150人ほどが集まっていた。
この日はまず、ゲストの講演から。元・広島県呉市議会議員の谷本誠一氏(67)だ。
昨年2月に釧路空港から旅客機に搭乗した際、マスク着用を拒んでいざこざを起こした人物で、反ワクチン・陰謀論者としても名高く「新型コロナワクチンに警鐘を鳴らす医師と議員の会」などに属していた。
(笑顔で講演する前呉市議の谷本氏)
実は前回の同社セミナーで、「思いを一つにする某議員の方が次回のゲスト」と告知されていた。だが、谷本氏は今はもう議員ではない。
マスクの件で呉市議会から全会一致で辞職勧告を受けた際には「新型コロナウイルスのうそを暴くため絶対に辞めない」(中国新聞などから引用)と豪語していたようだが、ことし4月の統一地方選で落選したのだ。20年以上務めながら普通に落ちたのだからよっぽどではないか。
この日は政治団体「自然共生党」代表として登壇。「マスクで世間を騒がせた男、谷本誠一でございます」と笑顔で挨拶して「掴み」に成功すると、「笑えば免疫がアップする。今日は皆さんを15回笑わせたい」などと宣言してさらに会場をほぐした。
落語家を思わせる軽妙な語り口。フリーザ様に似ているカン高い声だ。
ステージ上のスクリーンを使い、スライドを駆使したおよそ1時間の講演は「医療利権」への罵詈雑言と、相変わらず新型コロナワクチンへの不信を煽るような、何一つもアップデートされていない不確かな情報ばかりだった。
「15回笑わせたい」の宣言通り、会場のレベルに合わせたオヤジギャグをところどころに散りばめていく。たとえば「(サル痘は)いつ去るとーも分からない」「帯状疱疹が出て苦しんで放心状態」など。会場も年齢層が高いためか温かく「クスクス」と笑ってはいたが、まあそのへんは割愛する。
繰り広げられるトンデモ説
ウィンメディックス社の白木氏と自身が「よく似た境遇。共感するところが多い」と話した谷本氏。つい先日知り合ったばかりではあるそうだが、がんの新薬などを謳って逮捕されている白木氏と、コロナ下でのノーマスク提唱や不確かな情報の流布などで議員の座を失った自身を重ねて語りながら「しかし真実は必ず勝つ」とした。
…しかし冒頭から「真実」なんてものはほぼなかった。
まず引用したのはトンデモとしておなじみ「千島学説」など。輸血は海水で代用できるが、それが知れ渡ったら献血で得た血液が病院に売れなくなって利権と衝突してなんやかんやで潰されますみたいな話だった。この場ですぐ血を海水に入れ替えるお手本を見せてもらえれば信じよう。
次に、断食すればがん細胞が血液に変わるからなんやかんやで毒素が消えるみたいな話。がん患者も多いであろう聴衆に向かってこれを言うのか…。いや酷い。
それと、参政党員の間でも根強い、精神病は薬によって作られているという話や、さらにビル・ゲイツの子はワクチンを打っていなくて、ファイザー社のマイケル・イードン副社長(実際は部長や次長クラスで10年以上前に辞めている)がどうちゃらこうちゃらとか、PCR検査は使えないと開発者キャリー・マリスが述べていて水でも陽性になるとかのオーソドックスなデマを、あーもう書くのめんどくせ。
あとは、5G基地局があるから最初にコロナで大勢が倒れたのが武漢で、ワクチンの酸化グラフェンが反応する生物兵器である5Gこそがコロナの正体(!?)だと見ていて、なんやかんや接種者は倒れていくから自分は5Gのスマホを4Gしか入らないように設定してもらったみたいな話があった。(だったらあんた打ってねえんだから5Gがどうだろうと関係ねえだろ…)
そして医療利権を追及すると天皇家に繋がるタブーなのだとか…。はあ。もういいや。
(表情豊かに語った谷本氏)
とにかくもう「☆医療の闇☆~ネットで真実を知った僕らの~」みたいなオーソドックスな反ワクチン・陰謀論・反医療な話がこれでもかと(多数のオヤジギャグを織り交ぜながら)展開された。
このクソ話の連打連打をボクシングに変換できたら、井上尚弥と勝負はさすがに無理でもフルトンとはいい試合をするのではないか。
しかしこの陰謀論フルコンボに、会場内でKOされなかったのは私だけで、他のお客さんは「ええぇ…」と唸ったり、「ふぁ~…」「ああぁ…」などと何かに絶望したりの好反応だった。
なんなんだこの地獄は。こわいボクもう帰りたい(自分で潜入してんだろ)
とにかく反ワク
なんやかんやで母子手帳もワクチン利権が関わっているとのことで、とにかく全てのワクチンは闇なのだそうだ。ワクチンには水銀とアルミニウムが入っているから子どもの発達障害が増えている原因と思われるんだとか。クソデマだよ。あーあーもう…。
「四種混合ワクチンなんて小さな身体にいっぺんに打つんですよ!打つ場所がなくなったらなんと2.5センチ離せばいいと言っているんです!」
「子宮頸がん(HPV)ワクチンはフリーセックス推奨している。今は男にも打てるようになったんです。男に子宮あるんですか!?」
これらの無知を棚に上げての悪ふざけのウケ狙いは胸クソ悪かったが、やはり会場からは「うわぁ…」と悲鳴が漏れていた。
しかし考えてみれば、この会場に子育て世代がほぼいないのは救いかもしれない。そして、何も知らないし調べもしない(調べる先がおかしい)ご年配の方々が不安に思うのも無理はない。
(谷本氏によるアレな内容のスライド1)
読者に谷本氏に同調する人はいないとは思いつつ、一応は以下を参考までに。
その他にも「新型コロナウイルスは誰も見ていない。分離同定ができていない。情報開示で国に尋ねたらそんな論文は無いとはっきり言った」とかのデマを終盤に炸裂させていた。
これに関しては未だに信じるアh 失礼、思慮の浅い人が多いのですごく分かりやすく言うと、国や自治体に対して「論文を出せ」と言っても「うちはそんなもの持ってねえのよ」と丁寧に通達されるというものだ。
「所持していません」と告げられたのに、反ワクチン界隈は「この世に存在しない」と言われたように勘違いするのかわざとなのか「うおおお言った!ウイルスがあるという論文なんかないって言ったぞおお!」とネットで大騒ぎする。そんな森の木陰でドンジャラホイな奇祭が、この3年ほど、きっと今日もSNSのどこかで開かれている。
3年もの間、ずっとその場で踊り続けている人達がいるのだ。
(谷本氏によるアレな内容のスライド2)
谷本氏は時間を10分ほどオーバーしながら独演を繰り広げた。
最後は「あと何分?」とマネージャーか秘書かの女性に尋ね、「ああ、時間ですね」と終わった。拍手喝采を浴びる氏の後ろのスクリーンには「ロックフェラー財団がどうのこうの」と映されていたが、そこまでは行かなかった。
どうせならそれも行けよもう…。
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次回はウィンメディックス社白木代表のトンデモ講演内容と、新たなビジネスの予感、そして黒猫ドラネコももらった「謎のお土産」などについてお届けします。
以下はサポートメンバー向け。講演から読み取れたことなどを私なりに述べていきます。
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