【潜入】「反ワクチン市長」コロナ後遺症に水素、アロマ、ヨガ、足湯デトックス…? 同調の地方議員が全国展開を提唱

市議主催の「反ワクチン集会」に潜入してきました
黒猫ドラネコ 2023.12.16
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反ワクチン市長の講演

 駅前デパートの最上階にある集会用施設に、およそ150人が集まっていた。高齢者がかなり多い。見たところ65歳以上が7割を超えていたはずだ。

 このイベントは12月2日の夜、埼玉県某所で開催された。

 タイトルは「WEST meats EAST!~全国へ繋ぐ‼」

 日本語に訳すと「西 肉 東」で意味が分からなくなるので、おそらく「meets(出会い)」の誤りだろう。

(イベントのチラシ)

(イベントのチラシ)

 副題は「泉大津市・南出市長からのMessage!新型コロナ/ワクチン後遺症対策プログラム~感じよう。広げよう。呼び覚ます身体本来の力~」

 つまり、大阪府泉大津市による「独自のノウハウ」を全国にも広めようとする講演会である。

 同市長の南出賢一氏は、新型コロナワクチン接種券を市民に送らずに申請方式にしたことで、ごく一部の界隈から脚光を浴びた人物。参政党の神谷宗幣代表の親友でもある。

 当ニュースレターでも早い段階から警鐘を鳴らしてきた。

 司会者から「皆さん大好き南出賢一市長」との紹介も受け、今回のイベントにはリモート出演。大型スクリーンの中から「独自の取り組み」を自ら解説していた。

 同市では3年前から新型コロナ感染後に体調を崩した人と「ワクチン後遺症と自ら訴えてきた人」を受け入れ、様々な「改善プログラム」を施しているそうだ。

 月に一度、「その界隈」の医療従事者らも立ち会って「古民家風施設」に人を集めて行われてきた取り組みは徐々に規模を拡大。今年から市の委託事業としていることが明かされた。

 なにせ泉大津市は、この市長の肝入りで「スピリチュアル粉撒き活動」でおなじみバクチャーの製造会社と提携までしている。なので個人的には驚きはあまりない。

 リモート講演の中で南出市長は、「新型コロナはライフスタイルを変えなさいというメッセージ」などと記された独自の対策を紹介するスライドを表示。

 体調不良を申し出てきた人に、水素吸引アロママッサージ高濃度マグネシウム鼻洗浄などを施し、ハイレゾ音源から癒しの音を流して、ハーブティー瞑想で気持ちを落ち着かせることや、「医学的な観点のヨーガで自律神経を整え」「足湯デトックスで重金属をとり除く」(いずれも同市長談)といった様々な民間療法をおこなっていることを解説した。

 特に足湯デトックスについて南出市長は「やった後の水を触って体調が悪くなりました」となぜか誇らしげだった。市長代理として会場に来ていた市の非常勤特別職の黒石匡昭氏が、ステージ上から「シェディングですね」と嬉しそうに返していた。

(リモートの南出市長と、同市非常勤特別職の黒石氏=左)

(リモートの南出市長と、同市非常勤特別職の黒石氏=左)

(紹介された泉大津市「改善プログラム」)

(紹介された泉大津市「改善プログラム」)

 「泉大津市新型コロナオンライン相談」と題する取り組みも続けており、市民が無料相談できるドクターを市長が自ら見つけに行っているとのことだった。

 案の定、その「相談」のサイトに掲載されている9人の医師の肩書きには「統合医療」「分子栄養学」「漢方医」などの分野が並んでいる。中にはなんと波動測定器メタトロンを使い、ホメオパシーを扱っている女医までいた。

 反ワクチン思想のそっち系の医者で固めた、かの有名な「有志医師の会」への賛同率は、脅威の100パーセント。もはや「お見事」としか言いようがない人選だ。

 今回はその医師のうちの一人も市長に続いてリモートで登場。改善プログラム内でおこなってきた「プラーナエナジー」について語った。調べてみると「生体電流を流して自律神経と細胞のバランスを調整する」というようなハンドセラピーの一種である。なにやらオーラやチャクラが重要らしく

 あの…申し訳ないが、このへんで書くのを止めておこう。頑張ってみたが、だいぶキツくなってきたので。

 しかし、市長ご自身の強い思想もとい意向があるのは分かるが、ここまで市政でやりたい放題ができるとは。

 市では4月に「健康づくり推進条例」を制定、「学びの場を提供」したり「現代医学だけでない伝統医学など多彩な選択肢をつくる」ことを掲げているそうだ。

 個人的にも標準医療が全てだとは決して思わない。しかし、はたして泉大津市民はちゃんとした病院で自身の体調不良を相談できているのだろうか。さすがに何から何まで市長頼りで言いなりではないのだろうが、ちょっと心配にはなってくる。

 たとえば市の職員はちゃんとワクチンを自分の希望通りに接種できているのか。そして、市内の医療施設で働いている方々は市政をどういう目で見ているのだろうか。

(泉大津市独自の対策を紹介した)

(泉大津市独自の対策を紹介した)

色んな「有名人」集合

 さて、今回のイベントは埼玉県八潮市議会議員が立ち上げた「やしおファイトの会」が主催していた。

 発起人の大島あいと議員は、自身が重篤な病状(新型コロナ感染かどうかはこの講演からはうかがい知れなかった)から回復した経験があり、「いろいろと調べて病気に対する考え方が変わった」とのこと。講演内では、日野市の池田としえ議員の反ワクチン活動を称賛していた。…あーあ。

 そんな大島市議は、イベントのタイトル通り「いろんな町で泉大津の取り組みを」と提唱。こうした呼びかけにより、それこそ「反ワクチン界隈」の有名医師らが今回の講演会に登場したのだった。

(大島あいと八潮市議=右、と登壇した医師)

(大島あいと八潮市議=右、と登壇した医師)

 兵庫県宝塚市にある医療法人の理事長の児玉慎一郎医師は、医師会からのワクチン接種せよとの圧力と、自身のクリニックでも煙たがられていたことを面白おかしく伝えていた。

 スキンヘッドの自虐ネタや、コロナ禍で訪問診療に使った自家用車について「カローラじゃなくてコローナやん!」というおそらく鉄板ネタをぶっこみ、会場にまるで演芸会のような「おじいちゃんおばあちゃんの笑い」を巻き起こしていた。私の隣に座ったおばあ様は、児玉医師のファンであるとして同行者にずっと説明していた。

 東京近郊にある耳鼻咽喉科と漢方内科のクリニック院長の正木稔子医師も登壇。感染対策を揶揄するスタイルで、参政党の政治資金パーティーでもコンサートした音楽グループ「べヴニーズ」の専属医だという。「ヘヴニーズスタイル(動画番組)を知っている方は?」と尋ね、会場の9割ほどが挙手したことを喜んでいた。

 正木医師は「江戸時代から昭和(初期)まで平均寿命は変わらなかった。なぜ変わったかは戦後に乳幼児死亡率が下がったから。西洋医学のおかげとは言えない」との自説などを披露していた。

 臨床薬学博士の堀内有加里氏も講演。予防接種の救済制度の現状などを図を使いながら解説した。勉強になる解説もあったし、「副反応はいろんな要因が絡んで個々の体質の原因も」と話すなど、一見して普通の考え方の人であるかのようにも思えた。

 だが、登壇した全員での座談会形式の最後の最後で突如として「完全に今回のワクチンは史上最大の薬害になる」と断言してしまっていた。

 観客席には「自然派の方々」が大集結し、講演に聞き入っていた。

 ラベルのないでかい容器から謎の液体を飲むおばあ様、同じくラベルのないでかい容器から目薬をさすおば様、大きな箱に野菜をつめて訪れて葉っぱを広げて見せるおじい様など多士済々だ。

 「議員席」「医療関係者席」も前方に用意されており、私が確認しただけで参政党の地方議員が3人、反ワクチン派の市議ら2人ほどの姿があった。

 一方で、反ワクと陰謀論を掲げて参院選に出馬したおっさんは後方の席で気持ちよさそうに爆睡していた。トンデモ主張とはいえ信念がないことがバレたから落選したのだろう。

 今回の入場料は「お気持ち制」。中には払っていない人もいたようだが、それでも四つほどあった寄付箱は、ちらっと見えただけでお金がぎっしり。

 高齢の観衆の関心の高さと、世間一般とは異なる情報発信への感謝の度合いがうかがえた。

黒猫の見解「行政の民間療法への加担は…」

 さて、まず泉大津市による「医学的観点のヨーガ」「足湯デトックス」「プラーナエナジー」などの色々は、直接的に体に悪いことはないのだろうが、問題はそれらが本当に新型コロナ後遺症(と自己申告の体調不良)に効果があるかどうかである。

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