横浜スタジアムに「打ったら死ぬぞ!」響く。反ワクチンが接種会場デモ、来場者も恐怖
梅雨入り前の猛暑に見舞われた金曜日。
プロ野球・横浜ベイスターズの親会社DeNAが、球場施設を利用して希望者にワクチン接種を実施した。これに対し、「有志」という反ワクチン勢が抗議街宣のために集結することになった。ただでさえ少なくなった接種場所に、とんだ水差し野郎どもの登場である。
ここ横浜スタジアムで、ファンが観戦するのではなく、反ワクが感染対策に抗議。接種希望者や通行人らは、アレな感じのマシンガン打線を目の当たりにすることとなった。
(試合がなかった金曜の横浜スタジアム)
果たして本当に人が集まるのか、横浜まで見に行って損はないか、そんな心配は私にはなかった。SNS上で流れを観察していると、ある程度は騒ぎになるはずと分かる。
同日までにしれっと削除はされたものの、立憲民主党の原口一博議員らによる「死のスタジアム」などとしたX投稿があった。立憲は本当に本当にどうにかした方がいい。
これに影響されたように反ワクチン界隈が怒りや憤りを表す事態になり、「チラシ配りをします」と表明するアカウント(一応のデモ主催者)が登場。
そして動画配信者など反ワクチン・インフルエンサー的なアカウントらも同調し、今回の抗議活動になったわけだ。
抗議活動開始
少し早めに着いてJR関内駅前を散策していると、珍しい昆虫食の自動販売機を発見。ここに集まるであろう反ワク・陰謀論界隈の彼らは「政府は昆虫食を薦めようとしている!」という極端な思考に陥りがち。
なので、これを見つけてちょっと幸先がいいなとか思ってしまう。
きっと私もどうかしている。
(JR関内駅前の自動販売機)
そんなこんなでデモ開始予定の17時には、反ワクチンさん達が集まっていた。中高年ばかり。どこかのデモで顔を見た人ばかりだ。
ハマスタを臨む駅前広場で、何やら鉄柱や街路樹に旗を巻きつけたり、工事現場のフェンスにアレな主張を貼り付けたりと作業が進んでいた。
許可はとってあるのだろうか……。
(チラシ配りとフェンスに貼り付けられた主張)
(鉄柱や街路樹などにも)
サラリーマンや中高生に向けて、チラシ配りが始まる。
ほとんど無視されたり避けられたりしていたが、「大変なことになっています。知ってください」などと食い下がって叫んでいた。
内容の深刻さとは裏腹に仲間と談笑したりもしつつ、しばらくするとこの駅前と接種会場との二組に分かれた。
接種会場は、スタジアムに沿って数百メートル進んだ個室観覧席ゲートから入れるようになっていた。
来場者が見当たらないうちから、ゲート付近には黄色い旗が何本も立てられ、不穏な掲示物がフェンスに貼り付けられる。
そうして接種会場前に陣取るような形で、数人の男女がチラシを配り始めた。
それだけならよかったが(いやよくはないが)、マイクとスピーカーがあったから始末が悪い。
チラシを渡されまいと逃げるように駆け込んでいく来場者が現れ、いよいよ抗議活動も本格化する。
「ワクチンを打てば打つほど病気になります」「打った人が次々と亡くなっているんです」「ネットで調べてください。テレビではなくXを見て」などのお決まりのフレーズが大音量で響き始めた。
道を挟んで眺めていた私の横で、スマホを確認しながら「あそこか…うわあ何かいるなあ…」と呟いて立ち尽くすお母さんと幼い子の姿があった。気の毒で仕方がない。
渡されそうになるチラシを迷惑そうに手で払いのけるようにして、迂回しながら場内に急いで入って行った。
連中は、マイクなしでも「打つなよ!打ったら死ぬんだよ!」と絶叫し、「死にますよー」「毒なんだよお」と通行人にも大声を浴びせる。会場スタッフの男性にも何やら説教をするかのように真剣な顔で詰め寄っていた。
もちろんターゲットは来場者だけではない。自転車に乗って信号待ちをしていた小学生の男の子に、チラシを渡しながら話しかけたりしていた。
怖かっただろうな…。
(会場前の掲示物や子どもに話しかける様子)
デモの人数は徐々に増え、ピーク時にはおそらく14人(と小型犬1匹)ほどがこの接種会場前に集まることになった。
しばらくして会場からスタッフらしき男性が早足で出て行き、そのまま若い二人の警官を連れて戻って来た。通報したらしい。そりゃそうだ。
すると、デモ参加のサングラスの男が「警察は関係ねえだろ!」と叫ぶ。いや関係あるだろ。お前ら思いっきり入場の邪魔になっとるがな。
マイク片手に「千島学説は正しかった」「紅麹は悪くない」などのよく分からない演説を垂れ流していた男が、警察と会場スタッフとやりとりをし、何やら要請を受け入れたようだった。
(神奈川県警と会場スタッフらしき人に諫められる演説者)
ひとまず道路沿いのフェンスに貼り付けられていた不穏な横断幕だけはテープを外され、参加者が手で持つスタイルとなった。
しかし、これをいいことに(?)デモ参加者はその掲示物をゲートのすぐ真横に移動させ、掲げてアピールするようになってしまう。
スタジアムショップがある二階からの階段も遮っていて余計にタチが悪くなった。
あーあ、もう…。
(フェンスから外された横断幕をゲート前に掲げるデモ参加者)
(不穏な横断幕の内容)
取材者も
どこからどう見ても邪魔になっているこの集団。
さすがにスタッフや警備の男性も渋い顔だった。しかしスタジアム敷地外であることもあって強引な排除はできないようだ。
法律さえ許せば全員ぶん殴って追い払うところだろうに。
さて、こうした様子を撮影していた面々がいた。
まずはスタジアム向かいの横断歩道を渡った場所に、この界隈では大人気の人。超過死亡をワクチンのせいにしたがる反ワクチン・ユーチューバーだ。私のような異物とは違い、ここのデモ参加者にほぼ溶け込んでいた。
デモ開始まで煽るような投稿もして、チラシ配りも手伝いつつ撮影していたようだが、しばらくしてどこかへ行ってしまった。(後述)
(デモの様子を撮影するこの界隈のユーチューバー)
参政党の外部アドバイザーでもあるジャーナリスト我那覇真子氏と、恰幅の良い外国人男性が連れ立って登場した。
何やら我那覇氏が「ワクチンという名の生物兵器を打つ所です」などと解説や通訳をしながらライブ中継して、接種会場から出て来た人に取材のためなのか、接触を試みている様子が分かった。本当にやめて欲しい。
外国人男性はマイケル・ヨン氏なる米国人ジャーナリスト。原口議員による「死のスタジアム」という投稿の源流になった人物だ。動画では、この接種事業について「本気で止めるためには一万人で声を上げなければ」とか宣っていて、自動扉が開くと会場内部を撮影していた。
あとでこの人の投稿などを見返すと、夜遅くまで座って来場者を観察していたことが分かり、母国の同調者やフォロワーらに報告しながら、この接種事業が悪であるかのような解説をしていた。
なんなら原口議員らと並ぶこの街宣の元凶だ。
(我那覇氏とヨン氏)
このほか、熱心にデモ参加者にインタビューをする二人組の若い記者らしき撮影者がいた。
先の池袋と日比谷での一連の反ワクチン大会で大車輪の取材攻勢を見せていた大紀元(中国の気功集団・法輪功のメディア)の記者らだった。
本当に反ワクチンの行動を取り上げるのは精力的なんだよな…。
トンデモ観察記も負けちゃいられないぜ(?)
トラブルも起こった
さて、当初のデモ主催者の告知では「過激にはしません」とあった。
これにより参加者にも多少の温度差があったようで、罵声を飛ばしたり警察や警備員と揉めるたびに心配そうにして、仲間内で「それはやめようよ」「ちょっと言い過ぎ」とか自制を促すシーンもあるにはあった。
だが、頼もしい取材者らの存在も歪んだ正義感を刺激したか、気が大きくなってしまったのか、ギャーギャー叫ぶ者も目立っていたことは否めない。
ご家族で接種に訪れたところ、面と向かって「親がバカだと子どもが死にますよ!」と暴言を吐かれた人がいたそうだ。
そしてトラブルもあった。旗を何本も抱えていた大柄な中年男が激怒。通行の邪魔になっていたこともあってか来場者に旗を払いのけられたようだ。おそらく挑発されたような形にもなって、大柄な男は何か叫びながら旗を持ったまま接種会場内に入ろうとして警備員と仲間に止められていた。
どんな理由があろうと関係なく、あのまま会場内に入ればどうなっていたか。それでなくてもスタッフや来場者の恐怖は計り知れない。
デモ参加者は最後まで活発。
ノーマスク・デモでもよく見た女性が、通行人に訴えかけるように「日本人を殺したいんです政府は」などと涙声でスピーチしていた。お前さあ…。
別のおば様は「梅干しと納豆を毎日食べてください!梅干しと納豆ですよ!」と叫んでいた。
なぜ誰も、「そんなんで解毒できるならワクチン打ってもええやんけええ!」とツッコミに行かないのか。千原せいじならそうした。
こうした顛末で、抗議活動は暗くなって19時過ぎには解散する。
命を守りたいだとか、死ぬ人を減らしたいんだとか言いながら、接種がまだ続いているのに解散時間がそれより早いのは意味が分からないのだが…。
そもそも横浜スタジアムが接種会場になるのは今回が初めてではない。それなのに、原口議員らの投稿もあって、「有志」反ワクチン勢の中だけの世論が動いてしまい、そして配信者らがこの行動に勇気を与えてしまっていた。
21日にもハマスタでの接種はあり、抗議活動も継続するそうだ。デモ主催者に近い人物は「100人集めたい」としている。
ワクチンが害というネットの噂や、オーソドックスなデマを信じてしまった純粋な方々が多かった印象だ。しかし、そんなことは言い訳にもならない。
入場し辛くさせ、運営を妨げて平穏を脅かし、大声で「毒」だの「打ったら死ぬ」だのと発してチラシを配って接種希望者を不安にさせて、何より明確に「接種する人を減らしたい」との目的を掲げていることも大きい。威力業務妨害に触れるのではないか。
接種会場への「襲撃」は、陰謀論集団・神真都Qの前例がある。接種会場のクリニックに押し入った件はもちろんだが、東京ドーム会場の件では警備員と押し問答になり、集まって騒いでいた。変なものに感化されて群れて行動に移したのは今回のケースとほとんど同じだ。
あの逮捕劇から2年が過ぎた。ワクチン接種事業においては、面倒だろうが引き続きこの手の連中を警戒し、甘さを見せないことが肝要だ。
DeNA側の毅然とした対応に期待したい。