バトル発生!?国会議事堂前デモのわちゃわちゃレポート

熱くてどうでもいいバトルが勃発していました
黒猫ドラネコ 2024.02.14
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***

 寒さも和らいだ快晴の3連休初日。

 午後1時過ぎから、国会議事堂前にピーク時で130人ほどが集結した。「改憲反対を叫ぶデモ」である。

 国会はもちろん休み。なんのために集まったのか。いつものことながら、こうした集団を理解するのはとても難しい。

(国会議事堂前に集結した人々)

(国会議事堂前に集結した人々)

(国会議事堂に向かってデモが始まる)

(国会議事堂に向かってデモが始まる)

 実は前夜もここで「自民党解散!」などと歌って踊っていたデモ活動があったそうだが、そのような政治色が強い集団ではなく、この日に集まったのは反ワクチン・デモなどでおなじみのトンデモ系が多めの面々。

 私が見に行こうとなるぐらいだから当然そうなるのだ。

 ラッパーグループ「韻暴論者」も揃っていて、昨年のラエリアン・ムーブメント主催による「WHO脱退デモ行進」と参加者がかなり被っていた。

 

 やはり年齢層は高めで、反ワクチンの主張を惜しみなくプラカードにして掲げていた人も多数。

 オープニングはなぜかマイケル・ジャクソンの曲に合わせた主催者の軽めのダンスから。内輪ノリや決まりごともあるのだろう。ここは割愛する。

いきなりケンカ

 まずは主催者と親しいらしい中国出身の女性が演説。

 日本語に詰まりながらも一生懸命に参加者を焚き付けていく。「憲法が変われば中国のように独裁になって自由が奪われる」との趣旨だった。

 「日本の食糧自給率はいくつだと思いますか?」と参加者に問いかける。間があり、「60(パーセント)もないよね…?」「20とか…?」とかポツポツ声がある中で、この手のデモでよく見るシニア世代のやせ型男性(神真都Qデモにもいた)から、「38だよッ!」と怒号が飛んだ。

 「お前ら知らねえのかよ、しょうがねえな」みたいな自信満々のツッコミに「おぉ…」とちょっと感心する聴衆。

 しかし、すぐにその中国女性スピーカーが「肥料や種子のことなどを考えるとたった4パーセントほどなんです」と、ぜんぜん食糧自給率じゃない勝手な解釈を加えた答えを言ってしまった。

 これに「うーむ」「そんなに…」みたいに観衆も唸っちゃったもんだから、さっきの「38だよッ!(ドヤ顔)」が完全に恥をかかされた形になる。

 38パーセントで正解(22年度のカロリーベース)なのだが、なんとも言えない苦笑いのおじ様。思えばこの時から、参加者内のフラストレーションは溜まっていたのかもしれない。

(今回のデモ主催者ら)

(今回のデモ主催者ら)

 国会議事堂を臨み、国会前南庭に沿うように弓なりの形状に居並んでいたが、銀杏並木の大通りに面した後方で小競り合いらしき声が起こっている。

 見に行ってみると「なんで中国人に演説させるんだ」という激しい怒りをまき散らす参加者のおじさんが。「ここは日本だろ!ミスキャストなんだよ!」と、周囲が困るほどに差別意識を爆発させてブチギレ。やけに演説が長かったことも気に障ったのか。あーあーもう。

 主催者に近いらしい女性が「彼女は日本人と結婚しています」などと説明して諫めていた。

 と、ここで思わぬ”刺客”が現れる。

 ケンカの場に割り込むように「僕のこと知ってます?」と、なぜか参加者側に留まらずウロウロしている中年男性が登場したのだ。「いや、ちょっと分からないな…」とみんなから言われ、揉め事の空気が瞬時に消え去るほどの存在感。

 けっこうな長身で黒い上着にサングラス、お笑いコンビ三四郎の小宮を縦に伸ばしたような風貌。おそらく自分の似顔絵とネコンタ(以後仮名にしておく。芸名なのか?)と書かれた紙をクリアファイルに入れて掲げ「僕のこと知ってます?」と聞いて回っている。

 ネコンタ(仮)は私のところにも来たので少し話を聞いてみると、関西方面のイントネーションで「大阪市長選に出た」「集団ストーカーに遭っている」「集団ストーカーのグループがウイルスもワクチンも作っている」というような話を一気に繰りだした。

 普通の感じで話しているのだが、さすがに愛想笑いしかできない。去った後にアカウント検索してみると一般の方やお店の店員さんをストーカー扱いして盗撮画像をSNSにアップしまくるタイプのエグい御方だった。「ヒッ」と声が出る。

 ちなみに本当に大阪市長選にも出ていた。こわE。

 ネコンタ(仮)は、他者の演説には興味なさげ。警備の警察や通りがかった外国人にも話しかけるなど、このデモ序盤で最も精力的に動いていた。

 しかしデモ主催者の女性に「僕のこと知ってます?」と話しかけた際に、「いや、分かりませんが(マイクで)話したいですか?」と逆に聞かれたようで、「僕も話してええんですか!?」と大喜び。ウロウロしながら演説の順番を待つことになったようだ。

 大丈夫なのか…。ハラハラ……。

ついに熱いバトル開始

 何人かの演説を終えると、毎度おなじみの人が登場。

 日野市議会議員の池田としえ氏である。

 日本の反ワクチン議員の生き字引のような池田先生は「世界に信頼の厚かった安倍首相がコロナに対して第三次世界大戦中だと話した」「アメリカでは安倍首相と同じようなことを話した大統領が7人も殺されている(?)!」などとよく分からないことを叫び、地面を踏み鳴らすようなムーブなども加えながら、激しい弁舌を国会議事堂に向けた。

 繰り返しになるが国会は休日だ。さすがにあなたは知ってるやろ……。

(国会議事堂前で叫んだ池田としえ日野市議)

(国会議事堂前で叫んだ池田としえ日野市議)

 「徴兵制NO」と書かれたカードを振り回しつつ、徐々にエンジンをふかしていく。「安倍元首相暗殺陰謀論」「コロナは茶番」の話題へ。

 「後ろから撃たれて前から弾が入って誰が死ぬかよと。物理的にどう考えても理解できない。奈良県警も医大も全くおかしい病理解剖の状態。こんな異常を追及しないマスコミ。こんな異常な情報統制のされた中で憲法改正なんて笑わせるな!」

 「もう既にコロナの茶番ですら海外では大騒ぎになっている!」

 一気呵成に叫ぶ池田センセイ。絶好調。ああ、絶好調だとも。(日野市議会と日野市民はマジで考えろよな)

 デモ参加者からも「そうだー!」「腐ってるー!」などと同調の声が湧き起こり、いい感じにノッてきていた。どんどんエスカレートしていくいつもの池田大先生の演説スタイルだ。

 し、しかし!

 好事魔多しとはこのことか(?)

 池田議員と参加者のテンションがアゲアゲになってきた、まさにその時。横断歩道を挟んだ向かいの国会前北庭沿いから、こちら側が到底かなわないほどのマイクの爆音が響いた。

 謎の男「日本人の恐怖と不安を煽り、憲法改正を阻止しようという背後にあるものは!日本を植民地支配したい中国!ロシア!北朝鮮!彼らは何十年も日本の憲法改正反対を先導してきた!」

 なんと突如として別のスピーチが起こったのだ。

 それも、たった一人から。驚いた池田議員も「なに…大丈夫…?」と思わず中断。参加者も全員がそちらに注目する。

 なんだ? 誰だ? あれは誰なんだ…!?

(突如として対岸に現れた演説者)

(突如として対岸に現れた演説者)

(こ、こいつは…!)

(こ、こいつは…!)

 あ…ああッ! 出た! 出たーーー!

 塚口だ! 塚口洋佑のおでましだ!

 メジャーリーガーのダルビッシュ投手に「ネットDE技術論」をぶつけて論破した気になっていた、ごく一部に超有名人となった元野球指導者。

 コロナ禍で反ワクチン反マスクに転じて街宣活動を繰り返すも、お仲間がいなくなったのか別のデモ隊のそばで勝手に自論を述べるスタイルになって「あなたの方が正しい」とでも言って欲しそうな、そんな承認欲に飢えた陰謀一匹狼(陰謀ローンウルフ)である。

 昨年のラエリアン・デモ行進の時と同じく、ここにもあの塚口が推参したのだ。

 塚口による突然の妨害行為に、やはりデモ参加者は怒り爆発。

 「やめろー!」「邪魔すんな!」「うるさい!」と一斉にブーイング。当然だ。せっかく私達の池田としえセンセイが来てくれて気持ちよく声を上げていたのに!

 さあ、日本の政治の中枢、永田町は国会議事堂(今日はお休みだよ☆)前で、改憲反対デモそっちのけの場外乱闘スマッシュブラザーズがいよいよ開戦であります。

 しかし、およそ130人もの軍勢が必死にブーブー叫んでも、50メートルほど離れている塚口たった一人の声量に全く太刀打ちできていない。池田先生が負けじと頑張って話しても、全く内容が入ってこない。一体なぜそんなに性能の良いスピーカーを持っているのだ塚口よ。

 これは面白…いや大変なことになった。

 しばらくして警備の警官と主催者側の人間が5人ほど横断歩道を渡って塚口のもとへと向かう。さあさあ、そりゃあウォッチャー勢も一斉に駆け足だわよ。

(池田議員が演説を再開する中で)

(池田議員が演説を再開する中で)

(警官や主催者らに詰められる塚口)

(警官や主催者らに詰められる塚口)

 警察らに囲まれ「スピーカーの向きを変えてはどうか」「音量だけでも少し下げられないか」「向こうの邪魔になってトラブルになるから」などと詰められる塚口。

 警察も本音は「両陣営とも邪魔なんだけどネ」だとは思うが、デモをやるのは国民の権利だし、まずは申請された警備という公務を遂行しなければならない。余計なことしやがって…という徒労感がにじむ。

 だが、塚口は聞くわけがなかった。素直に聞いていたらこんな活動などとっくにしていないだろう。

 そこじゃないのに「改憲を阻止しろというデマに騙された反日的な運動なんですよあちらは」などと、逆張りの逆張りみたいな自身の主張をごちゃごちゃ説明しながら、隙を見てはマイクを使い「デマで国民の判断を鈍らそうとするのは民主主義の敵だー!」などと向こう岸の参加者を煽りに煽る。

 どっちが正しいかなんて心底どうでもいいと思ったであろう警官たちが冷静な口調で説得を続けた。ラッパー韻暴論者のメンバーの一人も「あっちで一緒にやろうよ」みたいに優しく諭していく。塚口も含めてみんな一生懸命だ。

 「(争え…もっと争え……)」

 嬉しそうに眺めているのは黒猫ドラネコとやや日刊カルト新聞だけである。

 あ…。でもヤバいかも。

 演説を終えた池田としえ議員が横断歩道を渡ってズンズンこっちに向かって来る。ああ、これはいかん。笑い事ではない。か、完全にキレてる…。

 鬼の形相の日野市議を目前に、しかし塚口も全くひるまず応戦の構えだ。

 「ああ池田としえさん、工作が得意でロシアとお友達でしょう。こんにちは。そういう反日左翼の愛国ぶりっこは見飽きたんですよ。僕の目は騙せないんですよ!」

 ラッシャー木村ばりの圧巻のマイクパフォーマンスである。お前…すげえな。

 向こう岸から「黙れー!」と池田議員を後押しする声がワーワーと上がる。もはや一触即発の状態だ。

(池田議員が塚口をシメに来た?)

(池田議員が塚口をシメに来た?)

 池田センセイは塚口の胸倉を掴まんとばかりに、囲みの後ろから接近。静かなブチギレを表すような低い声で「(アンタは一体)何…?」とメンチを切って凄んだ。

 が、警官から「マアマアマア…」となだめられ、すぐにさっとその場を離れた。

 それでも去り際に「ふざけてるよ本当に。妨害以外の何物でもないだろ!」とやり場のない怒りを叫んだ池田センセイ。そこに石があったら蹴っていたぐらいの勢いだ。こ、怖ええ。

 そのままデモからも離れてどこかへ行ってしまった。(え…帰ったの…?)

  どうしようもなく殺伐とした空気だ。

 しかし、この状況を一変させる一人の救世主が現れた。まだ囲まれている塚口に向かってツカツカと歩み寄る一人の男性の姿。

 あ! あなたは!?

 「あの…僕のこと知ってます?」

 さっきのネコンタ(仮)である。

 塚口に「知らん」と冷たく言われ、警官からも「ややこしくなるから」と、割と強めに向こうへ戻るように促されて「ああ、ややこしいですか。ハイ」とこちらも素直に去っていった。

 マジでなんなんだ。最高じゃねえか今回のデモ。(んん?私だけか?)

妨害に負けない?歌や踊り

 とりあえず塚口は、警察の説得に応じたのか何なのか、演説の間だけはちょっと配慮して黙って、音量もちょっぴり下げることになったようだ。

 本流はここからラッパーグループ韻暴論者のライブである。

 塚口に「妨害するお兄さん」などと煽るようなことも言いつつ、参加者をノリノリにしていく。このあたりの慣れた様子はさすがだった。

 侍みたいな姿をした参加者が歌の途中で法螺貝をプォーと吹くパフォーマンスを挟んだりしたが、必ずそうしなければならなかった止むを得ない事情はあったのだろうし、よく分からなかったので割愛する。

 韻暴論者メンバー3人は「RAGE against WHO」と書かれた揃いの黒い服装で陰謀論ラップをぶち込み、国会議事堂前を一気にガラの悪いライブハウスみたいにしていった。

(ラッパーグループ韻暴論者による路上ライブ)

(ラッパーグループ韻暴論者による路上ライブ)

 「中にいる議員さんにも届いていると思いますよ!」などとオーディエンスを煽りまくる。だから国会は休みだっつってんだろ。

 結局、新曲含む3曲も披露した韻暴論者は「音楽なら何を言っても動画が削除されないことが分かったんですよ。音楽の力がどうのこうの」と言いながら、最後には「少しでいいので」と専用の募金箱を出して投げ銭をお願いし、充実感を漂わせていた。

(韻暴論者の募金箱)

(韻暴論者の募金箱)

 メンバーはその後、一般の方が演説する中、公園の木陰でタバコ休憩へ。

 ……マジか。まあ、一服してもいいけどさあ。

 その後、しばらくは高齢女性による「ネットで調べてもらったらすぐ分かるけど」「ネットで教えてもらったんですが」とかのワードが飛び交う長い長い演説が続く。そりゃラッパーもタバコ吸うわな。

 そして、なぜか主催者のリクエストでわざわざ来てもらったらしい「ファイヤーダンス」が始まった。「子どもにワクチンいらない」と書かれたデカいプラカードを胸にぶら下げていた男性である。

 上着とプラカードを脱ぎ捨て、長い棒をくるくる回して無言で舞う。両先端に火が付いていれば少しは盛り上がったのかもしれないが、さすがにそれはできないようだ。

 控えめな音楽に合わせて棒をぶんぶんまわし続け、途中で普通にガシャンと落としたりして、観衆も「あぁ」とガッカリしたり。

 …いや、待て待て待て。なんなんだマジで。何を見せられてるんだよ。

(棒を振り回すおじさん)

(棒を振り回すおじさん)

 長い演説よりはマシなのか分からないが、音楽祭みたいなターンに入っている。

 主催者らしきおじ様がマイクを持った。「何かあるなら僕をツイッターで論破しに来てくれていいですから」とか言ってかなり威勢がいい。

 しかし検索したら別にそういう感じの主張強めのアカウントでもなかった。マジでなんなんだ…。一体あんたは誰なんだよ…。

 そんな論破していいおじ様は、以前のデモで歌ったら注目されたからとかいう理由で、BOØWYの「Dreamin'」をカラオケ開始だ。

 これぞ布袋というファンクなビートが流れる国会議事堂前。ヒムロックばりのシャウトさえあれば盛り上がるしかない名曲なのだが、謎のおじ様がなんとか照れを隠しながら熱唱しても……。

 しかも別にうまくもなんともない。

 言っちゃ悪いが、これまで40年間で聴いた「Dreamin'」で最も素朴だったなと思う。

 なんなんだ。なぜ歌った…??

(BOØWYを熱唱するおじ様)

(BOØWYを熱唱するおじ様)

 …なんなんだよこの時間は。

 せっかくの土曜日に私は何をしてるんだ。そんなツラい気持ちにさせられている。あんまりだよ。(自分で来たんだろ)

 ああ誰でもいい…この地獄みたいな空気を変えてくれ。頼む。

 おい、塚口よ。急に黙ってないでなんとか言え。

(有料限定部分では、満を持してのネコンタ(仮)の演説と、予定を延長してなんと岸田首相に凸を敢行した「デモおかわり」チャレンジの様子をお送りします。一体どうなっちゃうの…?)

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