財務省前で「ええじゃないか」連呼。反ワクチン集団、省庁解体ブームに乗って大規模デモ(後編)
▽前編はこちら
厚労省前?に難敵
2キロ以上の行進を終え、デモの舞台は厚労省前の演説会へと戻る。
前編でも触れたように、付近で反天皇制集団もイベントをしていたため、カウンターに来た右翼の街宣車が多数いる状況。
こうなると、厚労省と日比谷公園の間の狭い歩道ではいつものような抗議活動は難しい。

(厚労省前を旋回する右翼の街宣車)
そのためか反ワクチン・デモの集団は、国会通りを挟んで二手に分かれて配置された。眼前には中央合同庁舎五号館の別館がある。
…この場所は「厚労省前」と言ってもいいのか?
「厚労省解体!」「ワクチン反対!」を人事院や農水省に向けて叫ぶことになった。
(しかも祝日だから庁舎内にはほぼ人がいないよ☆)
組み立て式の簡易ステージに登壇した元参政党の吉野敏明氏(歯科医)が「日本人が日本人に注射をして我々が自ら民族絶滅させられているような状況じゃありませんか」と煽った。
反ワクの重鎮としておなじみ井上正康氏(大阪市立大学名誉教授)は、「厚労省とWHOは病原体ビジネスをけん引することしかしていない」などと語った。

(スピーチに立つ井上正康氏)
林千勝氏(作家)は、「日本人の謎の大量死はモデルナ・ファイザー・厚労省の合作じゃないでしょうか」「日本のアウシュビッツ化です」などと身振り手振りで聴衆を煽っていった。
このあたりの演説はいつものことなので割愛する。反ワクチンいつメン、ずっ友の会だということがよく分かった。
それらの演説を受け、「許せない!」と参加者の怒りも募りノリノリになってきた。
そんなところに、さあ難敵の出現だ。
例の右翼街宣車が国会通りも旋回し始める。あまりの大騒音に、反ワク・デモは以後たびたび演説の中断を余儀なくされてしまう。
騒音が通り過ぎるのを待って演説者は黙るが、聴衆は厚労省への怒りのボルテージを上げられているので、その矛先が右翼に向かってしまった。
「うるさい!」「邪魔すんな!」「帰れー!」
果敢にブーイングを浴びせる。しかし、こんな反ワク集団の中高年なんかに百戦錬磨の右翼の皆さんがビビるわけがない。
「なんだてめえら。うるせえんだよバーカ」
街宣車のスピーカーから容赦なく罵声。そしてかまわずに軍歌などを大音量で鳴らす。こんなにも「勝手に戦え!」が似合う場面もない。
ああ今日は最高の一日だ(性格が悪い)
街宣車は反天皇制の極左のことを指し、「赤い悪魔が集会している!」と発していた。
なんという奇跡的なタイミングだろう。今まさに、ここ反ワクチン・デモでは「全国有志議員の会」(これも反ワク集団)の赤い旗を立て、真っ赤なお洋服の池田としえ日野市議が登壇しているではないか。

(演説する池田としえ日野市議)
事情が分からない参加者は「池田先生が右翼に目をつけられてる…」と心配そうだ。
すかさずスタッフから、「極左集団への反対運動です。私達に向けられたものではありません」みたいなアナウンスがあった。
こういうのを見たくて私はウォッチに来ているんだと実感する。
このほか、川田龍平議員が「国民の命をないがしろにしている厚労省を解体しましょう!」という趣旨の演説で叫んでいた。(立憲民主党さん、マジでどうにかしなさいって)
ここぞとばかりに表情豊かな川田氏は、この場所が厚労省前ではないことを分かっている。だから斜め後方の奥にある庁舎を指ささないといけなくて、窮屈そうでとてもよかった。

(厚労省の方向を指さして叫ぶ川田龍平議員)
財務省前で「ええじゃないか」
15時を過ぎた。いよいよメインディッシュ。財務省前での集会に入る。
簡易ステージの上から、まずは林千勝氏が「ワクチンも増税も食料自給率低下もLGBTQ法案も夫婦別姓も受験システムもすべて財務省が元凶」みたいな演説を始めていた。はあ…。
林氏は庁舎に向け、「財務省職員!国民とともに生きようよ!」「君達は死ぬまで日本を裏切るのか!?」などと激しく呼び掛けた。
祝日だから職員いねえっつってんだろ。

財務省前で登壇した林千勝氏
「消費税はロンドンでグローバリストが考えたシステム」「ウォール街が日本の豊かな中間層を潰すために消費税を導入した」
そう語る林氏に、参加者たちも「そうだったんだ…!」と目覚めた目をさらに見開いてしまう。もはやガンギマリ製造装置のようだ。あーあ、もう……。
このほか、元衆議院議員で現在は参政党の安藤裕氏や、反ワク界隈に人気のユーチューバーら謎のインフルエンサーが次々に演説に立った。色とりどりの財務省解体論が続いていく。
最も時間をとったのは、この界隈なら知らない人はいないHEAVENESEのマレ氏。コロナ下で反マスク・反ワクチンの主張などを垂れ流してきたバンドのリーダーである。
マレ氏はいきなり「財務省を解体しても意味がないでしょう」とちょっとカマす。大臣や政治家ではなく官僚が悪い、という主張のようだ。
「官僚は(選挙で)選ばれていない。誰が政策を書いているのかを覚えておいた方がいい」と話し、そのまま三人の官僚の実名を読み上げ、デモ参加者にその名を復唱させるという、とんでもない行動に出た。
「ターゲット」にされてしまうことは確実。もしも三人の身に何か起きた時には、この集会が原因の一つと思った方がいいだろう。

(HEAVENESEマレ氏の演説は長かった)
かつて「日本のイーロン・マスク」のような政策をした名士を紹介するなど、20分にも及ぶ大演説を展開したマレ氏に、「ずっと何しゃべってんの?」と参加者からもちょっぴり不満が漏れていた。
そしてマレ氏は最後に、前からやりたかったことがあるとして、「ええじゃないか」の連呼を呼び掛けた。
マレ「オタンコナスは退場させよう!」
聴衆「ええじゃないか、ええじゃないか」
マレ「ええじゃないか、ええじゃないか!」
聴衆「ええじゃないか、ええじゃないか」
財務省前に、2000人近くの「ええじゃないか、ええじゃないか」が何度も響き渡る。
参加者もちょっとヘラヘラしながらで、乗り気とは言い難かったものの、今までの抗議活動では見られなかった異様な光景には違いなかった。
軍歌にぴったり?
お次は、この通称「国民運動・国民連合」のまとめ役のようになっている新党くにもり・水島総氏だ。
財務省や各省庁は悪くないそうで、「ディープステートに国家主権を奪われて敵が入り込んだ」などという持論を放った。
「縄文時代は奪うことをしなかった」「明治維新の在り方を問わなければならない」「ヨーロッパの近代の考え方を日本は与えられなければならなかったのか」「今こそ日本人の心を取り戻す戦いを」…などなど「日本人本来の尊さ」みたいなお得意の話である。
そして「特攻隊」を持ち出し、今日の集会についても「靖国の英霊が微笑しながら見守ってくださる」と、語りを繋いだ。
「ずっと何を聞かされてんねん」と思った次の瞬間だ。
ああ、やっぱり来た。財務省前にも右翼の車が登場だ。もはやウォッチャー目線では「待ってました!」の感すらある。
ここでも軍歌を大音量で流し始めた。しかしさっきと決定的に違うのは、ちょうど水島社長の偏ったお話にジャストフィットなのである。奇跡のコラボと言っても過言ではない。
…いや待て。ちょっと様子がおかしいぞ。
これ以上はないBGMなのに、壇上の水島社長は激怒している。
「妨害は許さない。邪魔をするな!」
これまでの演説者はみんな黙って過ぎるのを待っていたのに、ついに街宣車に一喝だ。
こうなれば、聴衆もやはり右翼への怒りは収まらない。またしても一部の参加者が街宣車に向けて何か言ったらしく、そのクレーム自体は聞こえないのに、やっぱり右翼のスピーカーからは大声が返ってきた。
「なんだよ、うるせえな。お前らの味方だバーカ」
確かに方向性は近いかもしれない。こうなったらこの先もずっと反ワク・デモに来てほしい。

(スピーチする新党くにもり水島総氏)
(以下の限定部分では終盤の謎の揉め事の様子、特別ギャラリーなどをお送りします。興味がある方はぜひ、この機会にサポートメンバーになってご覧ください。これまでの記事も全文読めるようになります)
飽きたのか、小競り合い
もうじき終了時間だが、財務省に向かって右側に陣取った連中が騒がしい。
どうやら勝手に「財務省解体!」のシュプレヒコールが起こされている。きっと、何時間も演説を聞かされて飽きたのだろう。
さあ、お立ち合い。謎の縄張り争いが始まった。祭りはここからだ(?)