霞が関で「気付いた中高年」春祭り。反ワクチン集団、省庁解体ブームに乗って大規模デモ(前編)
すっかり新緑も眩しくなった4月29日。国民の祝日、昭和の日だ。
「国民大集会」などと銘打ち、晴天に映える国会議事堂をバックに、雄たけびが上がった。
「ウォール街は日本の食料自給率0パーセントにしようとしている!片棒を担っているのは農林省!自民党!ふざけるなー!」
この運動の中心人物となっている作家の林千勝氏だ。

(林千勝氏の演説)
「この人、今までウォール街がどうとか言ってた…?」
ウォッチャー勢の確認作業が始まる。理解は難しいが、仮想敵を作ることに長けている人達だから、これまでのディープステートなどに加勢があったようだ。
午前11時過ぎのこうした演説を皮切りに、春の祭典は幕を開けた。
「いまのままなら財務省解体、厚労省解体等を求める国民の連合」が主催する大集会だ。
主催者の名称こそ新しいが、メンバー構成やスタッフなどを見るに、当レターでも何度か取り上げた通称「国民連合・国民運動」そのまま。
この集団が構成された流れを振り返っておこう。
昨春に反ワクチン集団「mRNAワクチン中止を求める国民連合」「WHOから命を守る国民運動」やその周辺の反ワク・インフルエンサーが結託。それらに合流した政治団体・新党くにもり(チャンネル桜)のデモ運営のノウハウも借り、東池袋で約5000人、日比谷公園で約1万人参加の大規模デモが開催された。
くにもりや元自衛官である発起人の佐藤氏の存在も大きく、思想的には完全に右寄りの集団だ。
日本国内における反ワク・反体制運動のパイは、この通称「国民連合・運動」にほぼ集約される形となった。
勢いのまま昨秋、有明で1万人規模の集会をおこなったが、そこで大きな過ちを犯す。
デモ行進要員として金を払って若者を動員していたことが発覚。参加者の半数近くがサクラであることが確認され、闇バイトも絡んでいたことが報じられ、運動の勢いは一気に萎んだ。
そうした「お金配り」は団体が主導ではなく、主催者に協力したかった個人が気をきかせた末の行動だったらしい。
今回のデモ開催にあたっても、主催者はその部分に過敏になっている。宣伝には「金銭の授受による参加はお断りします」と注意書きがついていた。
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さて、今回の昭和の日のイベントを簡単にまとめれば、「WHO脱退」などを掲げていた反ワクチン集団が、昨今の「財務省解体」のブームに本格参戦してきたということ。
気に入らないものを色々と解体したいらしい。宣伝用のイメージ画像には「グローバリストに打ち勝ち、日本の主権を取り戻せ!」とあった。
25年上半期最大級のトンデモ・フェスティバルの様相に、ウォッチャー勢も腕まくり。「反ワクバイトデモ」の汚名返上(?)に参加者、観察者の双方の期待が高まっている。
さあ、観察だ。今日も一日頑張るぞ。なんでも来い!
まずは国会議事堂前。およそ1000人が集まった。
過去の集会と比較すると、そこまで多くは感じない。年齢層はやはり中高年が多め。毎度のことだ。あのバイト騒動以降、この手の反ワクチン集会の類に若者の姿は多くない。
プラカードや旗は変わらず色とりどり。
今回は、おそらく新党くにもりが用意したのであろう「財務省解体!」の旗に「ディープステートの手先」と明示されていた。とうとう開き直った感じがとてもいい。
お、なんだ横断幕を広げはじめたぞ。

…ううう、持ってくれ俺の体よ。まだ…まだ、始まったばかりじゃないか。
日本の反ワクチン運動の生き字引である池田としえ日野市議がドンドンと足を踏み鳴らしながら演説するなど、国会議事堂をバックにこの界隈だけの著名人が登壇するスピーチ会は続く。
あ、あれは日米合同委員会反対デモでよく姿を見た「ウイルスは存在しない」の男性だ。こんなところで演説させてもらえるような立場の人だったんだな。
「私は、河野太郎がワクチン担当相の任命を受けていないことを確認し、この事実を暴露しました」
…うーん、これは酷い。
いたたまれなくなって参加者の最後尾に回ると、出店のような掲示が。
「5Gによって東京は電子レンジの中みたいになって、ワクチン接種で入ったナノチップが電磁波に反応してみんな死ぬんです!」
おじさん二人組が喚きながらチラシを配っていた。

……すまん、みんな。オイラとうとう限界みてえだ。
議事堂を背にした壇上からの「独立を勝ち取ろう!」「日本を守ろう!」のコールに参加者全員で返し、最後にはよく分からない「表現の自由を」どうちゃらな会のおじ様も登壇して、「youtubeでワクチン薬害で検索してみてください。ワクチンは世界的に有害なんです」「気付いている我々が気付いていない人に伝えていきましょう」などと話していた。
ああ、17時半の終了まで、先はとてもとても長いな。
あの代議士がこっそり合流
国会議事堂前での演説が終わると、早足で徒歩5分ほどの日比谷公園へ。
次なる出し物(?)は銀座を通るデモ行進だ。
その終着地は、ここに集まった人達にとって憎むべき敵であるMeiji Seika ファルマ本社前だそうだ。
公園前では規制線や通行止めの鉄柵、盾などが見える。いつより警備が物々しい。そう思っていたら、突如として右翼の街宣車が数台ほど大騒音を鳴らしながら横切った。
どうやらこの日は、反天皇制運動連絡会(反天連)も付近でデモをやるらしい。そのカウンターに右翼が現れたのだ。恒例行事だそうで、厳重な警備が必要なわけだ。
反ワク集団デモ、左翼集団デモ、右翼の街宣車……。ああ、このまま日本の頭脳である霞が関は一体どうなってしまうのか。
ま、今日は祝日なんですけどね。
公園入口ではデモ行進に備えた梯団が既に組まれていた。
警察からの指示を受けて設定した上限の500人に達したとのアナウンス。国会前から来た参加者は、厚労省横の沿道に移動してデモ隊に声援を送ってほしいとのことだった。
梯団の先頭で確認できた顔ぶれは、林千勝氏、池田としえ日野市議、深田萌絵氏、安藤裕氏(参政党)、山田正彦氏(元農水大臣)まきやま大和・長崎県議、水島総氏(チャンネル桜)ら。
あれれ、あの原口一博代議士がいないぞ。
さすがにMeiji Seikaファルマに訴えられている身としては、原告の本社前まで向かう挑発的な行進に入ることはできないか。
そういえば国会前の演説会も何か不都合があるのか参加していなかったな…。
いやいや、しかしそこはさすがに歴戦の原口大先生。
自身も焚き付けての通称「国民連合・運動」の大祭に姿を見せないはずがない。
デモ隊が出発してしばらく進んでから突如として現れた原口議員は、林千勝氏らに迎え入れられ、しれっとするっと梯団に入隊だ。
ほんの一瞬の出来事。ほとんどの人が捕捉できなかった中、私はその瞬間の撮影に成功した。(巨大魚を追う特番みたいな文章になっちゃったな)

(行進途中で林氏らに迎え入れられる原口一博氏)

(原口議員を中心に進むデモ隊)
500人限定との警察からの指示なのに、原口先生が割り込んだから501人になってしまったのではないか。
そんな野暮なツッコミはやめてあげよう。
昨年の日比谷公園からのデモでは「ワクチンやめますか、それとも人間やめますか」のプラカードとともに笑顔で行進し、300メートルほど歩いたところで早々に離脱していた原口先生。
ついに今回は意を決したか、宿敵であるMeiji Seikaファルマ前へと着実に歩を進めていく。
「財務省のほかにも解体したいものいろいろ」の横断幕を掲げて先頭に立つ元総務大臣の原口氏。その後ろには、大先輩である元農水大臣の山田正彦氏の姿も。
あのさ、マジでいい加減にしとけよ立憲民主党。
あれ?原口先生は…?
さあさあ、デモ行進は進む。
「財務省解体!」「消費税廃止!」「いつまでGHQの言いなりになっているのか!」「厚労省はエボラウイルスを持ち込むな!」「日本に真の独立が芽生えることを願っております!」
そんな叫びを上げながら、国会通りを抜けて裏コリドーの高架下をくぐり、いよいよ西銀座の繁華街へとお出ましだ。
見よ、祝日午後のランチタイムを楽しむ銀座の民よ。これが日本の反ワクチン集団の大進軍であるぞ。どうだ。
「うわ、なんか来た。うるさっ。きっしょ」
若者たちは正直でいい。うんうん、同意見だよ。
「国産米のすき家を応援しよう!」などと声を上げていた集団は数寄屋橋にさしかかる。(これだけは書いてやろうと思ってメモしてたけどもね)
交差点の名所、不二家の看板が見えてきた。「ミルキーはママの味」を横目に、原口先生がいつも通り「ワクチンは国の恥」と猛アピールしてくれるに違いない。
まだ「気付いていない」沿道の羊どもにさぞかし、ネクターよりもねっとりした訓示を…
あ、あれ…?

…い、いない! 原口先生がいないぞ!!
まただ!また人が増える前にデモ隊から離脱したんだ!!
い、いや、前回と同じく、のっぴきならない用事が他にあったに違いない。お忙しい人だもの。ね。
(以下はサポートメンバー限定。行進の模様とイベントの画像をたっぷりお届けします。次回の後編は厚労省前の演説から。よかったらぜひメール登録してお待ちください。無料購読でも限定部分までの記事は届きます)