【傍聴しました】法廷に響く「黒猫ドラネコさん」に騒然

山田ノジルさん三浦ゆえさんが橋迫瑞穂氏を訴えた裁判を見てきました
黒猫ドラネコ 2024.02.29
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 2月初旬。東京地裁826号法廷には、諦める人が出るほどに傍聴人が集まっていた。入廷した原告弁護人が思わず「満席!」と発して驚いていた。

 裁判ウォッチャーだけではなく、鈴木エイトさんら複数のジャーナリストやライターも駆けつけた。それだけ業界内の関心が高いということだろう。

 2022年から続いているこちらの裁判である。

 名誉棄損とプライバシー侵害について、今回は尋問がおこなわれ、被告人である大学講師の橋迫瑞穂氏が初めて証言台に立つ。

 原告の山田ノジルさんと三浦ゆえさんを誹謗中傷し、メールを無断でツイッター(現X)上に公開したことなどについて双方の弁護士から尋ねられるのだ。

 入廷してからずっと落ち着かない様子(初体験だろうし無理もないと思うが)の被告に対し、原告席の三浦さんは真っ直ぐ見据えるような視線を逸らさなかった。正直すごかった。

 主観が入りすぎるとよくないので、原告らの様子の詳細はこれ以上は省く。

 そんなことばかり考えていると、被告・橋迫氏の宣誓書の読み上げが始まった。「嘘偽りなく証言する」というものだ。満員の法廷がその証人となる。

 慣れていないもので、本当にこういうことするんや…ドラマみてえー、とちょっと興奮してしまう。自分の時は本当に気を付けたい。大人にならなければいけないな。

どういう訴訟かおさらい

 まずは今回の訴訟をおさらい。

 被告の橋迫氏は「三浦ゆえさん(原告)とかいう編集者が、山田ノジル(原告)と黒猫ドラネコ、マダムゆきを記事に登場させ、いい加減なやり方をさせた」「個人を誹謗中傷するライターを起用するなんて信じられない」「山田ノジルさんも黒猫ドラネコさんも問題の指摘をされると仲間内で悪口プークスクス。マダムゆきさんは堂々と誹謗中傷」などと発信した。

 マダムユキさんのブログ記事で被告の著書について書かれたことなどが発端となったようだが、どんな理由があったにせよ、事実誤認を含む投稿にはなっているし、このほかにも原告らの交友関係などについて事実無根の投稿もあったそうだ。

 山田さんと三浦さんは、こうした様子では直に要望を伝えるのは難しいと考え、面識があった集英社の橋迫氏書籍担当編集に「根拠のないデマを投稿するのはやめてほしいがどう対応すればいいか」とメールで相談。するとその担当編集から橋迫氏への転送を提案されたという。

 そうして転送されたメールを橋迫氏がSNS上で公開してしまい「山田ノジルさんと三浦ゆえさんは記事への批判を裏から手を回して黙らせようとしている印象」と投稿、前述したように原告が「デマ」と主張する投稿もさらに連投されていたという。

 さて、プライバシー侵害についての被告弁護士による尋問から。メール文をどのような意図でコピーして公開したのかなどが尋ねられた。

 この件については裁判官からも「なぜ被告はメールを公開していいと思うに至ったのか」という裁判官なりの疑問も投げかけられ、被告はそれに答えていた。

 「原告のメール文章と編集者からの文章を混同した」ことや、「事実無根のことを自身の大学や出版社に送られては困るし恐怖を感じたから」のような回答だった。

 次に、名誉棄損について。以前から山田ノジルさんに悪意を持たれていると被告が考えていることが分かる投稿について原告弁護士が尋ねた。投稿内容(前述)がいくつか挙げられ、その意図の確認などがあった。

 被告は、2019年11月に公開された記事(※)などを見て、編集者である三浦さんの主導などで山田ノジルさんらが被告の悪口を言っていると考えて発信したようだ。

(※…山田ノジルさん、マダムユキさん、黒猫ドラネコの三者が子宮系女子の壱岐島移住について対談している記事)

 一応、三浦さんと三者との間にそんな主従関係はないので全くの誤解であると改めてここに記しておく。そもそもあの記事を三浦さんが編集したかどうかを当時の私は知らなかった。

黒猫ドラネコは悪いヤツ…?

 その瞬間のことは、忘れたくてもしばらく忘れられないだろう。

 原告弁護士からの「あの3人とありますが、誰に言われていたんですか?」

 そういう内容の質問だった。これに対して被告は特に悩むこともなく、「山田さんと、黒猫ドラネコさん、マダムユキさんです」と回答。ここまでなら訴状にもあるので想定内だったが、問題は次だ。

 「その悪口を言われた根拠は?」のように問われた被告は割とスムーズに、「黒猫さんからは以前(不穏で失礼なことを)言われたことがあります」みたいに答えたのだった。

 傍聴席からズルっと崩れ落ちそうに天を仰いだ。「お、俺かよ…」と半分ほど口から出かけた私に注目し、ざわつく聴衆。

 「オイオイ…なんかやってもいないこと言われとるでオイ」と思った記憶は微かにあるものの、ほぼ意識が飛んでしまったせいか、自分では正確に証言内容をメモできなかった。ライター失格である。

 隣に座っていた裁判ウォッチャー山口三尊氏がこっちを向いて嬉しそうに「悪いヤツじゃないっすか」とか小声でいじってくる。ぐっ…静粛にしろ…! さんそんチャンネルめ…!

 とにかく不穏なことで自分のペンネームが何度も法廷に響き渡る。

 尋問では「個人を誹謗中傷するライターとありますが、誰ですか」「黒猫ドラネコさんとマダムユキさんです」「『悪口プークスクス』とは誰が」「黒猫ドラネコさんと(略)」「チマチマ悪口とは」「黒猫(略)」などの応酬があった。

 頭が真っ白になった。囁き女将に隣に居て欲しかったが、私が何か発する機会はないし、いま隣にいるのは山口三尊氏である。

 被告は証言台にいるので背中しか見えない。私についてどんな表情で話していたかだけは気になった。

 自信満々だったらすごく嫌だなと思った。なぜなら少なくとも私は、橋迫氏を名指しして不穏な言葉をぶつけた記憶が全くない(後述)。何か誤解されているのでは。

 原告弁護士によると、やはり被告が我々に誹謗中傷されたという証拠資料も出ていないとのことなので、やはり最後に「(本当にその証言で)大丈夫ですか?」と原告側から確認のための念押しがあった。

 これにも被告の橋迫氏は「大丈夫です」と即答していた。

 尋問が終わると、和解はできないことが双方で確認された。

 次回はついに判決。3月21日午後の予定だそうだ。

どうしてこうなった…

 閉廷後、傍聴した顔見知りの方々から囲まれる機会があった。うつろな瞳の私に対し、みんな心配してくださった。

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