【解説】「令和の百姓一揆」とは。デモ現場の光景と問題点
3月30日、全国14カ所で「令和の百姓一揆」と銘打ったデモが行われた。
東京は、港区の青山公園南地区多目的広場に約3200人(主催者発表)が集まった。
山伏の法螺貝を合図に始まった集会では、トラクター運転手、主催者、超党派の国会議員がそれぞれ登壇してデモへの意気込みを語った。

(集会に登壇した国会議員)

(挨拶する日本共産党の田村智子委員長)
14時30分には、またしても山伏の法螺貝を合図にトラクター30台が出陣。
海外の映像などでよく見るような公道を占拠するほどの隊列ではなく、1車線を使って1台ずつ順番に進む形であったが、デモに集まった参加者は大歓声で送り出した。

(出発したトラクター)

(沿道から歓声が送られた)
トラクターとは時間差で参加者も行進へ。特別にトラクター2台だけが行進の先頭と最終梯団に付くことになったらしく、これも参加者は大喜びだった。
またもや山伏の法螺貝を合図に出発。「農家に!補償!」「所得の!補償!」「国産!守ろう!」「今が正念場!」「百姓!一揆!」「戸別!補償!」などの声を響かせ、渋谷~原宿のおよそ5・5kmという長い距離を歩いた。

(山伏の法螺貝で出発したデモ行進)
高齢者が多いので心配ではあったが、大きな事故もなく、約400人区切りの8、9梯団ほどが代々木公園までの行軍を日が暮れるまで続けた。
トンデモ色は薄め?
私はこのデモ開催についてのSNS上での呼びかけや広がりが、反ワク・陰謀論的な「いつものメンツだな」と感じていた。
というわけで、ニヤニヤしながら(いつも通り)観察に行ったが、現地で見た光景は予想とは違っていた。
トンデモ系のエグみはあまりなく(ゼロとは言わないので後述する)肯定ではないが「これが本来のデモの姿だろうな」という感想を持った。
参加者の9割以上が「農家の窮状を訴えたい」との思いで集まっていたと思う。現地で会ったウォッチャーの皆さんの感想も概ね一致した。
志を持って参加した方々は何も悪くない。これだけは強調してペンを進めたい。
そのような現場の雰囲気と、しかしデモに賛同しない大多数の農家の方々の意見とのズレは気になった。
X上で「令和の百姓一揆は農家の総意ではありません」とのハッシュタグで投げられた意見も真っ当。参加者の気持ちも偽りではないだけに、分断が起きてしまったのは残念なことだ。
そうなってしまった要因の一つは、今回のデモが「農家の声」と謳いつつも、一部の純粋な方々を利用した「反体制デモ」に見えてしまったことだろう。

(公道を行くトラクター)
デモの問題点
デモ発案者は元農水相の山田正彦氏。
農業に関する不安を煽ったことなどで、ごく一部の勢力を除いて評判がよろしくない人物ではある。参加者に配るうちわなども全て山田氏が事務局として担当していたようだ。
事前に国会議員らに呼び掛ける集会をおこなっており、山田氏との関係性もあってか立憲民主党の関係者が多数デモに参加していた。息子である山田勝彦議員、あの川田龍平議員、あべともこ議員ら「あー(察し)」と思う部分が多いメンツ。
原口一博議員が来ておらず「フルコンボだドン☆」にできなかったのがざんね…失敬、不可解だった。

(集会で語る山田正彦氏)
実行委員長は山形県のコメ農家の男性。かつて成田空港の三里塚闘争や、近年ではTPP反対デモで代表も務めた経歴があるそうだ。
共産党とれいわ新選組の所属議員が何人も来ていたが、与党議員は見当たらず、左派色の強さは隠せなかった。「超党派議員が参加」に嘘はないにしても、ちょっと偏りが過ぎた。
とはいえ運動を大きくするには活動家や政治家の介入は必要だろうし、難しい部分でもある。

(挨拶する実行委員長の男性)
参加者の思いは感じられた中で、雑な主張が目立っていたのも事実だ。
特に「農家は時給10円」は眉唾もの。この強い言葉に着目したメディアも多かったが、デモに賛同しない農家の方々によれば、注意書きが必要なデータだという。
「時給10円」は稲作農家の統計だそうだが、稲作だけで生計を立てていない兼業農家なども計算に含まれている。つまりガバガバで意味がないデータで、デマとまで言う人もいる。
たしかに、作物がなければ収入ゼロになり得る仕事を時給換算する意味は分からない。誰の思惑か、窮状アピールにちょうどいい悲惨な数値と言葉が一人歩きした。
苦しさを知って欲しいのは分かるが、大げさな情報で目を引こうとする手法には苦言を呈す人も少なくない。それで信用を失うこともあるだろう。
また、デモでよく叫ばれていた「戸別補償(かつてはあって廃止された)」も現実的ではないという。
助成金の制度は現在もある。なおも一律に「農家を名乗る者」を厚遇すれば財政的にキリがなくなり、知識も経験もない有象無象が金目当てに新規参入してくるし、農地が荒れて逆効果になるだけだそうだ。

(デモ隊が掲げた主張)
「貧しいから金よこせ」が容易に通る職業にしても先はない。あらゆる職種に言えるかもしれないが「頑張った分だけ稼げる仕事」をどう保持して醸成させるかに公的補助を使うべきだろう。
そもそも「農家」といっても業態も様々、農地の規模もそれぞれ。一括りに語ってしまって大丈夫なのか。
ざっくりと「農家は困っている」を渋谷や表参道の沿道に伝えたところで、何をどう動かしたいのかは見えてこない。
農家が集まったXスペースでは、いま最も困窮している酪農家などが立ち直るまでピンポイントで支援を厚くすることや、収穫量や目標値に応じた「褒賞」など、モチベーションアップとしての意味合いでの公金投入の提案があった。
政治主導にせず、もっとこうした現場の声で議論を深めた方がいいと感じる。

(デモ行進の一幕)
評価できること
「デモ運営」の面だけ見れば、お世辞抜きに評価できることはあった。農業に関係ない主張をしそうな勢力がほとんど目立っていなかったのだ。
当レターで取り上げてきた「WHOから命を守る国民運動」「日本列島100万人プロジェクト」「新党くにもり」などがやはり来ていたが、彼らも含めて参加者の言動が制御されていた。
「WHOから」の連中はいつもの自前の旗を何種類か掲げていたが「集合の目印として挙げるのはいいですが、行進が始まったら降ろしてください」とのアナウンスに肩身が狭そうな様子だった。(まあ始まっても降ろさなかったんだけど)
「新党くにもり」は「百姓一揆」と書いた旗をおそらくオリジナルデザインで用意し、普段ならステージで発言させてもらえそうな張り切りようだったが、全く出る幕がなかった。
集合時からやや離れて隊列を組み、まるで招かざる客のような扱い。相容れない左派の有力議員が多く来ていたことも影響したのだろうか。

(ちょっと距離感があった新党くにもりの一団)
「WHOから~」と「100万人プロジェクト」のデモでよく見たメンバーはスタッフとなって警備や誘導に尽力していた。
当初は私も「コイツらがいるってことはやっぱりそういうデモか。これはいいぞ。ウフフフ(性格が悪い)」と思ったが、実際は違った。
財務省解体デモなどで活躍していたいつもの面々は、単純に労働力として機能していた。彼らはどんな主張であれ、反体制に寄って声を出せれば満足なのだ。
こうした勢力を完全に排除するのは難しいが、今回はそれを逆手にとって、デモ慣れした連中をうまく動かし、結果的にデモ運営のノウハウをいただくことに成功していた印象だ。
「関係のない主張の掲揚禁止」の呼びかけもおこなわれ、現場で徹底されていた。
デモに全面賛同しない農家の方々が主催者に近い人と議論を重ね、「誤解されないように農業と関係のない主張を掲げさせないで」と再三お願いをしたとのことだった。
これが奏功したと見える。普段から反ワクチンや陰謀論的な主張を掲げているような「デモ大好き」勢力は、行進でも終盤に押し込められた。
極め付けに、デモ終了後の小規模集会では、反ワク運動の中心人物による農業と無関係な発言はしっかり遮られていたと聞く。(グッジョブ!)
下手すればデモ自体を「そういう勢力」に乗っ取られてもおかしくなかったところを回避し、現場でもウォッチャー勢から「主催者、なかなかやるじゃん」と声が上がっていた。

(集合場所で反ワク団体の旗がチラホラ)
黒猫ピックアップ
繰り返しになるが参加者の強い思いは感じるデモだった。その一方で、ウォッチャー的に気になる部分がなかったわけではない。
当レター読者なら注目しそうな場面をピックアップしていこう。沿道の目を引いてナンボだろうけども、次回があるならもうちょっと考えて欲しいところだ。
(以下の限定部分では、当日の写真でトンデモウォッチャー的に気になった部分を振り返ります。今回は特別にメール登録するだけで誰でも読むことができます。ぜひこの機会にご覧ください)