どうなる財務省解体デモ。どんどん「濃く」なっていく珍ブーム
花散らしの雨が降り注ぐ霞が関。国の中枢を担う庁舎に、またしても不穏な叫び声が響いていた。
4月13日(日)ピーク時でおよそ300人が集まった「財務省解体デモ」だ。
人が溢れて騒然となる歩道に面し、肝心の財務省は門が閉まって静まり返っている。そりゃそうだ。なにせ日曜日である。
なぜ休業日なのに叫ぶ奴らがいるのかって? そんなの私に聞かれても…。こういう集団を理解するのはとても難しい、としか。
デモ参加者は財務省正面に向かって横長に広がり、「休日出勤している職員!聞け!」などと言いながら、ほぼ無人の建物に叫んでいた。休日出勤の職員が実際にいたかどうかは置いといて、終始それぞれの不満をぶちまけるような、統制もクソもないイベントであった。
▽前回までの財務省デモの解説などはこちら
財務省職員への言いがかり
13日のメインになっていた場所は正門に向かって左側。次々にマイクが回るスピーチは雨音もあってあまり聞き取れなかった。
右側ではもう誰が音頭をとっているのか分からないが、「財務省!解体!」「消費税!廃止!」が延々とコールされていた。
参加者の主張内容、キャラや態度もどんどん「濃く」なっている。気になった様子や言葉をいくつかピックアップしよう。
・涙ながらにスピーチ
ネットを見て来たおば様。「私が悪いんじゃなくて財務省のせいだったんだ」と気付いてデモに参加したそうだ。
結婚して30年、旅行にも行ったことがなく貧しい生活をしていると涙ながらに語った。聴衆から「そうだ!」「もっと言っていいよ!」と煽られ、「税金返せー!」と声を震わせていた。
この人をこんなに苦しめた財務省め…許せない……
って、なるか?
貧困をバカにはしないが、「財務省が悪い」ってなる短絡的思考はどうなのか。こう考えるのも仕方ないって本当に言ってしまっていいの?
・「政府も解体!」
賛同者ばかりの前で話せることが嬉しそうな人が多い。別の中年女性は自信満々に「所得税も廃止しろ!」「社会保障がなくなるなんて嘘だろ!」とまくしたてた。
この場所ではそれが共通認識のようだ。スピーチを聞いていくと「政府も解体しろ!」となって、ここまで来るとむしろ清々しい。主催者が、これから毎月「自民党解体デモも計画している」と補足していた。
このスピーチの最中、自前の拡声器を持つ男が何度も「宮沢(洋一)死ねぇ!」を繰り返していた。
自民党前でこれをやるの…。はあ……。
・謎の紙芝居
元気いっぱい叫ぶ人がたくさんいる一方で、かろうじてマイクが拾えるほどの穏やかな声で何かを解説し始める者もいる。
全ては聞こえなかったが、中年男性による謎の紙芝居が始まった。スケッチブックを手に「結局はこういうことで」みたいな話に。
どうでもいいが、三角形を描くのに定規ぐらいは使えよ。

(謎のスケッチ)
・またもやM資金の話
以前も話題になったが、「財務省はGHQのM資金13京円をスイス銀行に隠している」との珍説がまたもや出た。やはり同じおじ様である。
この人は、消費税が5パーセントになる際に、要人のところに乗り込んで激しく抗議したところ最終的に「君が正しい」と言われたそうだ。
もしその話が本当でも、それは「あしらわれた」って言うのでは…。しかし聴衆には「おお…」と感心が広がってたので、こういう真偽不明な話を鵜吞みにするような人達が集まっているということだ。非常に分かりやすい。

・どう考えても言いがかり
庶民の気持ちが分からないと言いたいのか、別の男性は「財務省職員は東大を出ているから、学生時代はイジメを見て見ぬふりをして勉強ばかりしていた奴らなんです」とのこと。
どんな言いがかりなんだよ…。東大卒じゃない職員もいるだろ(そういう問題でもないが)
もういい、次だ。
・個人的恨み?
そんなこんなで、財務省の内部には日本人がいないという話に落ち着いたようだ。はいはい、平常運転、平常運転。
庁舎(ほぼ無人)に向かって「中国人帰れ!」と叫んだ女性は、続けざまに「インドネシア人も帰れー!」
…インドネシア人?
どっから出てきたんだ。この手の人達の定番である中・韓ヘイトではなく、なぜピンポイントでインドネシア?? 個人的な恨みでもあるのかな…。
・南妙法蓮華経
カオスがカオスを呼ぶのはトンデモ・デモではおなじみの光景。リズミカルな太鼓(木魚?)とともに、延々と「南妙法蓮華経」をスピーカーで唱えて練り歩く方々が到着した。おふざけの様子はなく、ずっと真剣な表情だ。
デモと無関係かと思っていたら、道を渡って経産省前で唱え続けた後、またも財務省前に戻り、少なくとも4周半ぐらいはした。
ネタならネタでいいが、ちゃんと説明してもらわないと何が何やら。例えば「財務省を葬った後のことを考えてお経を」とか…?

(お経を唱えて練り歩く人達)
・警察にケンカを売る
「ワクチンは毒!」と書かれたTシャツを着た自称ジャーナリストが、しゃべったり叫んだりしながら数名を引き連れてデモの周りをぐるぐる回っていた。
警察から「デモ行進になっている」と注意を受けると、「デモ行進の定義は?」などとキレ気味に対応。ひとまず「警告」が与えられたようで歩くのは止めていたが、納得がいかない様子だった。
取り巻きが「外国人は不起訴にするくせに」「警察つかえねえな!」などと悪態をつきまくっていた。
デモ行進は通常、警察の許可を得て行われている。いい大人が調子に乗る様子は実に情けない。

(警察から注意を受ける自称ジャーナリスト)
・テンションが上がって走り回る
参加者が警察にたてつくシーンはそこら中で見られた。「権力に屈しない俺達」のような感覚になってしまっていて本当に頭が悪そうだった。
反ワクチン・デモなどでよく見る男性が「解体!解体!」と叫んでは走り回っていた。車の移動を命じられたことに腹を立てたのか、「マークしてるの?」「俺みたいなのをローン・オフェンダー(※)っていうんでしょ?」などと何度も警官を挑発。
(※…社会に不満を持って過激化した個人の危険人物)
歩行者の邪魔にならないよう作られた囲いから何度も飛び出し、警察の注意を振り切って「CMでも『はみ出していい』って言ってたもん!」と、どや顔。本当に頭が(略)
すっかりテンションが上がったコイツ一人を警戒するために人員を割かれるハメになった警察が気の毒だった。そもそも