「全員に暗号コイン差し上げます」。謎のカード申し込みに並ぶ高齢者たち…旧ウィンメディックスのME Link社のセミナー【潜入レポート(後編)】

セミナー潜入記事の後編です。高齢者のご家族の方、大丈夫でしょうか
黒猫ドラネコ 2024.07.31
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▽前回までの概要

旧ウィンメディックスのME.Link社が都内で「健康セミナー」開催。会場には支持者らしき高齢者ばかりが100人ほど詰め掛けた。旧ウィン社の白木氏は刑事裁判の真っ最中ながら被害者遺族への挑発めいた言葉や、コロナデマなどもまじえた講演。その中で欧州の有力企業との深い関わり、宇宙開発などの景気の良い話が飛び出して…

「天皇より上の存在」
(ME.Linkの健康セミナーで講演した白木氏)

(ME.Linkの健康セミナーで講演した白木氏)

会場からは何度も「ほお~」との感嘆や「すごい…」と息を飲むような声が上がっていた。

「マリオ(イカール社)に言ったんですよ。宇宙衛星を飛ばしちゃえばって」

白木氏によると、ME.Linkの株式を大量に買ってくれたイカール・ホールディングス(HD)に、世界の軍事企業トップのロッキード・マーティン(これは実在の企業)の役員が入っているそうで、「オーダーを受けて(イカール社が)35億円の宇宙衛星を買ったんですよ」。

これにはまたもや「はぁ~」との感嘆が漏れる。続けざまに白木氏は「35億円の宇宙衛星を120機も打ち上げたんです」と話し、「えぇ~!」との悲鳴みたいな反応に満足そうにしていた。

…あの、なんていうか、日本の民間の医療ベンチャー企業(未公開株を売って刑事告訴されている人達)がそんなものすごい事業と繋がっていて何も報道されていないのはメディアの怠慢ですよねえ。(もういいやこのツッコミで)

あとは「Qフォン」とかいう「量子力学を使ったスマートフォン」の開発現場を見たことがあってどうのこうのとか話が膨らんできたところで、そのイカールHDに入っている欧州最大のエネルギー会社社長らのバックには、表に出てこない巨大な存在がいるとの話になった。

白木氏は「頭がいかれていると思っていただいて結構なんですけど(笑)」と会場を盛り上げつつ、「天皇の上にもさらにもう一つ上の存在があるんです。外国でも同様で、イーロン・マスクにお金を出している人もいるし、その人たちにお金を出している人もいる。そういう人達がこのプラットフォームのアドバイザリーに入っているのが大きい」

これが例の「研究者と投資家を繋げるプラットフォーム」のことだ。何やらこのプラットフォームが出している「UPTコイン」という暗号通貨があるらしい。

今回のセミナーはこれを勧めるのが狙いなのだろう。(後述)

(景気のよさげなスライド)

(景気のよさげなスライド)

白木氏によると、イカールHDは総資産450兆円ものアラブのファンドと契約間近だそうだ。

しかし、ここまで割と順調に騙し…失礼、もっともらしく話を進めていた白木氏がここでちょっとしたしくじり。

「イカールHDはイギリスの国際最優秀持ち株会社賞を受賞して賞状をもらっていましたね」

かなり雑な情報を付け足して言ってしまった。本当にそういう賞があるのなら申し訳ないが。

世界の国々が契約で印鑑をついたと言ったり、総資産450兆円ファンドと契約しようかという企業が賞状をもらったと言ったり、スケールが大きいのか小さいのかさっぱり分からんのは私だけか。

とにかくME.Link社が手がける「研究者と投資家を繋げるプラットフォーム」は、そのような超成長企業からの高評価を受けていて、協力体制にあるらしい。

ウィンメディックス時代は、SHIGERU(しげる)というスイスに立ち上げた会社に株主のお金を預けており、そこから同プラットフォームに投資をしていたのだという。今回はイカールHDの利益がウィン社の株主に利益還元できると考えているとのことだった。

まあ、何が言いたいかというと、株主さんはこれでもう安心ですね?という念押しだろう。

どんだけ株を買っても配当が全くないんだけど…なんてもう言わないで、イカールHDとやらがついているんだからドンと構えておけってことよ。細けえ話は気にすんなって。ガハハハ。

あーあ…。本当に気の毒だな(ぼそっ)

皆さんにコインを差し上げます 

白木氏は、暗号通貨についてなおも語る。

なんでも、ビットコインの価値が下がってきていて、市場はUPTコインの価値に気付いているそうだ。

「暗号通貨が絶頂を迎えた時に、宇宙衛星に銀行口座を持っていますから(?)そこに入ってきたり、プラットフォームが大きく動いてくれば今まで説明した数字よりも大きくなるのが想像できます。ビットコインを買っている人がUPTの動きに気付いて流れてきているのも見受けられますが、今回、イカールHDとUPTはビットコインホテルを世界各地につくると発表しました」

ビットコインホテルに泊まる人の個人情報を得て、UPTコインへの切り替えを促していくことが予想されるとのことだった。(どういう理屈なんだ…)

さて、ここでおそらくこのセミナーの本題である。

「この会場、何人いますか?100名ぐらい? このUPTコイン、タダで欲しい人いますか?」

白木氏のおどけたような問いかけ方に笑いも漏れつつも、客席では次々と手が上がる。

「じゃあ、10枚ずつ差し上げます皆さんに」

これには「おおっ」と大きな拍手が起こって、高齢者たちも嬉しそうに顔を見合わせた。

「約束をしてください。コインがどうなっていくか見届けてください。10ドルのものを10枚、皆さんに差し上げますので、これがビットコインのように(1枚)1000万円になったら1億になりますから。暗号通貨の世界は来年の冬頃にピークを迎えます。それが入ってきたら正しい医療をアピールしてもらいたいんです。正しいものは正しいと言ってもらえるように」

それっぽいことを言って正義を気取った白木氏は、「うちの株主さんは平均年齢が70歳だから3時間ぐらいかかる」ので暗号資産用のウォレットを作るのは難しいとして、「カードを用意しました」と、説明を始めた。

スマホに当てるだけですぐに反応する画期的なカードというような解説だったが、それはおそらくスマホの読み取り機能が働いてのことで何一つも珍しいことではない。ただ、会場の多くはそれが分からないのだろう。

暗号宇宙銀行の話などを立て続けに浴びせられ、最新技術のカードを安価で手に入れられると思ったに違いない。

デジタル最新事情に浸ったかのような参加者たちの目の輝きは増していった。

(暗号通貨を入れてもらえるカードの説明)

(暗号通貨を入れてもらえるカードの説明)

UPTコインなる暗号通貨をなんと10枚入れてもらえるというこのカード。実際のところは無料ではなく、手数料で5000円かかるそうだ。

白木氏に代わってME.Link社の遠藤氏からの説明があり、会場横のブースでは申し込み用紙が配られることになった。

講演は一旦の休憩時間に入り、カードを求める列ができた。

私の隣の席の高齢のご婦人も用紙を手に戻ってきて、やや悩みながらもスラスラと住所氏名や口座番号などの個人情報を記入していく。

「…でも、ウォレットがあればカードはいらないのよねえ。どうしよう」とか何やらブツブツ言ったので、私はつい「いったん家に持ち帰ってご家族と相談してみてはどうでしょうか」と話しかけてしまった。

会場ではタイミングよく(悪く?)「当日のみ有効で、申し込み用紙の持ち帰りは不可です」との声が上がっている。怪しまれたか…。

突然の私からの声掛けにご婦人はややフリーズしたものの「私もよく分からなかったし、こういうのは家族に連絡して聞いてからにした方がいいよね。ありがとう」と言ってくれた。

ちょっとホッとした。こんな会場で一人救えたからと言ってどうなるのかは分からないし、薄情ながらこの後にご婦人がどうしたかは知らないが。

(会場で配布された申し込み用紙=加工あり)

(会場で配布された申し込み用紙=加工あり)

後半に語られた陰謀論の数々

休憩が終わってもカード手続きをするための列は途切れることなく、「講演終了後にも申し込みはできます」とのアナウンスがあった。

後半の講演のテーマは「混迷の国際情勢」。その内容はまあ聞くに堪えないものと言ったら失礼だが、もう今さらだ。時間が押しているらしく、白木氏の早口もますます早くなっていく。

主に、借金が全てチャラになって税金がなくなって全人類に6億円配られるとかいうネサラ・ゲサラ法案について詳しく説明していた。

話に信憑性を持たせるためなのか、福井県議会で斎藤新緑氏(元議員)がネサラ・ゲサラ法に言及している映像を流した。

「世界的に金融リセットが起こる。ゲサラ法により宇宙テクノロジーが6000ほど解放される。世界で一つの変圧器を作って電波で電気エネルギーを飛ばす技術もある。リーマンショックの100倍の基金ができる」などと発言したものだ。

(斎藤新緑氏についてはこちらを)

陰謀論者さんが…失礼、元議員さんが言うようなネサラ・ゲサラが発動されてフリーエネルギーなどの画期的な技術が解放されるとどうなるのか。

「どこに通貨を入れるのか、宇宙の暗号通貨を預かるところにお金を入れるんじゃないかなって予測するわけですよ。だからマリオ(イカール社の人)に作ったら?って言ったら、どんどんどんどん120機も宇宙衛星を上げちゃったってことですね」と白木氏。

なるほど…そう繋げるのか…。これはもう暗号通貨を買い漁るしかないな!(洗脳完了)

皆にお金を分配するというネサラ法案をめぐっては「自分達の利益をとられたくない支配層」からの様々な妨害があったそうで、可決してから発表当日に9.11テロが起きたり、東日本大震災があったり、ずっと「善と悪の戦い」が起こっているらしい。

そしてバイデンの違法選挙(出たあ!)での勝利によってネサラ発動ができなくなっていたのだという。ここに旬な話題で、トランプ氏が撃たれたふりをしたのだとかが身振り手振りで色々と付け加えられた。トランプ氏の支援を表明したイーロン・マスクも、闇側から鞍替えしたのだそうだ。

白木氏はスライドやホワイトボードを使ってディープステート、ロスチャイルド家、ビルダーバーグ会議などなど「支配層」の話も次々と繰り出した。

私の知る限り、これまでのウィンメディックスの講演でここまで開き直った陰謀論を語ったことはなかった。もうこの方向で行くと決めたのだろう。

しかしまあ、白木氏のこの話術はどこで鍛えられたのだろうか。ツッコミを受けない環境下での話の進め方が本当にうまいと思う。会社で練られたものか、それとも天性のものか。その内容は置いといて、ちょっとだけ感心してしまう。

時折「これ言っていいんだっけ?」とかスタッフに確認するようなシーンもあって、「それはまだ言ってないやつです」とか焦ったように言われ「あ。やめましょうか…(ニッコリ)」のやり取りで会場をワクワクさせる仕草も完璧と言っていい。

情弱の、失礼、ピュアな人達はそれにコロッと騙され、あ失礼、信じてしまいそうだ。

2時間半ほど壮大な話ばかりを繰り広げたオチではないだろうが、白木氏はコロナ禍で「ヨウ素の有効性をイスラム20億人に向けてプレゼンしてほしい」と言われていたそうだ。それで渡航しようとしていた矢先にパスポートを奪われた(逮捕された)という自虐ネタを披露していた。

(ネサラ・ゲサラについて語る白木氏)

(ネサラ・ゲサラについて語る白木氏)

調べても謎は深まるばかり

このセミナーでの話を総括すると、とにかく世界的な成長企業のデカい後ろ盾があって、これまで利益をむさぼってきた支配層が倒されてネサラ・ゲサラ法も来るし、世界の金融システムが変わるから安心しろ。それに備えて我らが勧める暗号通貨を手に入れろ。ということだろう。

オーソドックスな陰謀論の数々はともかく、海外事業については本当のことかもしれない(大事な姿勢だと思う)から、イカールHDやらUPTプラットフォームやらのサイトを調べてみた。

何の事業をしているのか具体的なことがほとんど書いておらず、様々な業績の報道なども、自らPR会社に出したリリースしか見当たらない。

うーむ、謎は深まるばかりだ。

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