がん患者や高齢者を「暗号宇宙銀行」へ…? 旧ウィンメディックスのME Link社は開き直って活動中【セミナー潜入(前編)】

セミナー潜入記事の前編です。本当に反省してないんですね
黒猫ドラネコ 2024.07.25
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世の中には騙す人と騙される人がいる。被害者は責められない部分もあるが、「こんなのどう考えても胡散臭いだろ」という話で誰かを絡めとろうとする者がいるのだ。

土曜の正午過ぎ。高齢者ばかり集まった会場に、「国連世界平和協会・人権大使」という肩書きも高らかに登壇したのは白木成(しらき・しげる)氏。旧名は白木茂だったが、名前を変えたかった理由でもあるのか。このセミナー中に字画の関係で改めたとことを明かしたが、本当のところはどうなのだろう。

株式会社ME.Linkの「健康セミナー」は20日、東京・溜池山王駅から徒歩すぐの赤坂の貸し会議室で行われた。大型スクリーンが3面ある地下の大部屋。144席ほどのキャパは4分の3ほど埋まっていた。参加料金は無料である。

ウィンメディックスの現状

(セミナー会場前の看板)

(セミナー会場前の看板)

このセミナーを主催しているME.Link社の前身はウィンメディックス。素性については、以前にもセミナーに潜入し、その後も被害者や弁護士らから話を聞いて書いた。

簡潔に言えば、病人や高齢者をマルチ商法や未公開株などの投資へハメ込む手口で荒稼ぎする会社である。

「海外と連携して新薬開発」などとの謳い文句にお金を払ってしまって、その被害に気付いていないケースも多い。そのため、たくさんの家族から心配の声が上がっている。

私のように同社の行動を追っている記者もいて、被害者や弁護士らと連携しながら動向を見守っているメディアも複数ある。

ただ、社名がME.Linkに変わったことも含め、まだ世間への注意喚起や周知は薄い。

ウィン社の中心だった白木氏は、関係者とともに金融商品取引法違反などで逮捕されて裁判の最中だ。検察は懲役4年を求刑しているらしく、9月にも判決が言い渡される予定である。

報道では、末期がん患者らをターゲットにして治療薬開発などを謳い、無登録で未公開株を売買して配当金がないことなどが明るみに出てきているが、それでも懲りずに同じような内容でセミナーを続けているのだから、ツラの皮が厚いというべきか。

今回も開き直ったように、堂々と陰謀論までぶっこんで露骨に暗号資産への勧誘が行われていた。

その詳細をレポートしていこう。

自殺遺族への暴言も

今回の赤坂でのセミナーは、久しぶりの都内での開催だといい、白木氏のテンションも高かった。

冒頭から、判決待ちの身でいることについて「4年の実刑か執行猶予かの瀬戸際。苦しんでいる人を助けるためなら法律なんて…」などと愚痴とも強がりともつかぬ言葉を述べ、「司法の力でいろいろとやられちゃうんじゃないかなって。言いたいことを言えばまた色んなことをやられるので、申し訳ありませんって謝るのが一番いいのかなってやってきました。利益を優先してやってきたわけではありません」と語った。

やはり反省はしていないようだ。

(セミナーに登壇した白木成氏)

(セミナーに登壇した白木成氏)

そうして、まずスクリーンには、小児がん患者なのか病床の幼子が4人ほど連なった画像が映った。それと同時に会場には、お葬式のような悲しいBGMが流れ始める。これはいつものパターンである。

自己紹介を兼ねて、白木氏がかつて弟を病で亡くし、幼い娘も白血病で亡くしたエピソードを語る。それで病気の人を救いたいと決意して新薬開発などの事業を展開していることや、がん患者や難病の方々を救いたいというようなアピールが続いた。

「支配者、またはグローバリストといって、世界を牛耳っている人の権利に少しでも入ろうもんなら妨害や迫害があるんです」

自宅を訪ねてきた集団に襲われて半殺しの目に遭い、今も痛みが残っているという話などが披露された。これも全ていつものパターンだ。

これに、今回は新たに「今もSNSで誹謗中傷を受けている」との話が加わっていた。

「SNSであることないことばっかり叩かれてます。なに?患者さんの弱い心を利用して、お金をまきあげて?自殺に追い込んだって?お前、出て来いよ。って言いたくなるんですよ。たまにね」

このような挑発めいた言葉を発したのは驚いた。

これはウィンメディックスへの投資が起因で、自死に追いやられた人がいるという投稿に対してのもの。親御さんを失ったそのご家族の証言もあり、私は実際にご遺族に会っている。

自身の弟や娘が亡くなったことから新薬開発事業に取り組んだという人から発せられたとは思えない暴言ではないか。これに違和感を覚えず、ヘラヘラと笑っていた参加者も多かったから信じられない。

「SNSの悪い噂なんて嘘だ」の空気づくりなのだろうか。冒頭から色々と胸クソ悪い空間だったが、なんとか最後まで冷静に観察するしかない。

参加者は8割近くが株主、つまりセミナーのリピーターで既に白木氏を信奉している方々だ。信者化していると言っていい。もはや何を言っても信じてしまう人達だから話は早そうだ。

残りの2割ほどの参加者はリピーターに連れて来られた方々、つまりは今回のメインターゲットで、それもほとんどがネットに疎いのであろう高齢者ばかりだった。

白木氏の大げさか嘘か分からない話に、「すごい人なんだな」と思ってからがこのセミナーの真骨頂だ。逮捕起訴されて実態が詳しく報じられている事実なんてこまけえこたぁどうでもいいのだ。

コロナデマもお手の物

今回の白木氏は、PCR検査は嘘で、開発者のキャリー・マリス博士が何でも陽性が出ると言っていたという非常にオーソドックスな「コロナデマ」を語っていた。

新型コロナのワクチンで130万人が亡くなったとのデマに加え、今秋にも始まるレプリコンワクチン接種によって60歳以上の3000万人が死ぬと言われているので政治家が火葬場を整備している、などという妄言を垂れ流した。(3000万も死ぬ前に止めるだろ…)

これらのトンデモトークを「国も政治家も守ってはくれない」という話に繋げる。

「散々言ってきました、推奨する治療法5つをやってください、この通りすれば必ず病気は絶対に治ります。100パーセント治る。5つその通りにやったら治ります」

「治らなきゃどうぞ(私を)殺してください。命を引き換にしますよ。死ぬ覚悟してます。本気で言ってきました。指先を切ったら必ず自然治癒力でふさがる。この確かさと同じようにがん細胞は死んでいく」

このように自信満々に述べていた。

薬事法違反ど真ん中ドストレートのバカげた発言の数々も、説得力があるような低い良い声で何のためらいもなく発するから恐ろしい。

それで、このセミナーではすっかりおなじみの話なのだが、STAP細胞の小保方氏は世の中にとって良い物を出そうとしたから潰されたのだ、という珍説が披露された。あの騒動のあとにハーバード大学が特許をとったのでSTAP細胞は実際はあったが、気まずかったのでマスコミが黙殺したそうだ(当然これらも全てデマである)。

続けて、今回はタイムリーな話題で小林製薬の件を持ち出した。レプリコンワクチンへの「殺菌作用が強い(?)」ヨウ素が邪魔だったので、紅麹サプリの問題で小林製薬を潰しにきたのだという話だった。

白木氏が語るこれらの「世間が知らない真実」に引き込まれてしまい、「ああ…」とか「へぇ…」とか感嘆が漏れる会場。

どういうことかというと、結局は自分達が作っている「ヨウ素」のサプリや健康食品などを皆様に勧めたいという話に繋げていくのだ。

会場の隅では、いろんなよく分からない高額の健康食品などが机に広げられている。

開演前にはリピーターらしきオバ様が「え~?どうしてこんなに安いんですか~?」とわざとらしい大声を出していた。あのさあ…。

(会場の隅で売られていた液体。フタの文字に気付いたアナタは立派な陰謀論ウォッチャー)

(会場の隅で売られていた液体。フタの文字に気付いたアナタは立派な陰謀論ウォッチャー)

白木氏はニヤリと笑いつつ、「世の中の良いものは表に出ません。絶対にかき消される。金か圧力か権利か。僕は絶対に表に出したい。なぜかって?ヘビ年だからしぶといんです。ヘビはしつこいんですよ」と言った。

会場もどっと笑って、すっかりヘビのペースに丸のみされたようだった。

話題は「暗号宇宙銀行」へ

それまで悲しげだった会場のBGMが、パパラパパパーとトランペットが響くような希望を感じさせる明るい曲調に変わった。

スクリーンに映された会社名や事業のイメージ図を指しながら、白木氏の口調が軽やかになる。

「研究員をサポートする投資家。これが絶対必要なんです。研究者と投資家をマッチングするプラットフォームを作りました。150か国に展開しています」

なんでも、これが評価されてイギリスの大会社が4000億円分も株式を買ってくれたという。

…なぜ、そんなすごい話を世間は誰も知らんのだ。そんなに儲けているなら、なぜお前らは未公開株を無登録で売って逮捕されて配当金を出していないことまで報じられてしまっているのだ。

というツッコミはまだ待て。

ME.Link社が契約したのは、「ヨーロッパで最も大きなエネルギー会社やトルコ空港の筆頭株主、元大統領が10名も入っている」2020年創業のIkar(イカール)という会社だそうだ。

その筆頭株主らのコネクションによって宇宙衛星までも飛ばしているらしく、投資先からの配当金だけで950億円を稼いでいるとのこと。「4年間でこんなに成長できる企業は他にはない」と白木氏は胸を張る。

…だから、なぜそんな超絶に景気のいい世界的企業と深く関わってるお前らは、こんな日本国内でちまちまセミナーやって配当金のない株を高齢者に売ってんねん!

(やっとツッコめた)

(スクリーンに映された事業の図)

(スクリーンに映された事業の図)


スクリーンには「暗号宇宙銀行を設立」の文字が大映しになる。

そして白木氏はやけに早口になって矢継ぎ早に語っていった。

「地上よりも宇宙で事業をしている人が多くなってきます。テスラの社長(イーロン・マスク)も今はスペース事業をしていたり、ゾゾタウンの前澤さんもスペースに行っていますね」

「ガラケーの3Gの時代に8Gを作ったのは、地上では難しいものでも宇宙だと早くできるからです。例えばガンの新薬も地上では長いと50年かかるけど、スペースに持っていくと数日でできちゃう。というのが宇宙テクノロジーとして、いま1万件以上も持っているんですね(?)だから今後は地上よりも宇宙衛星に飛ばして何かをすることの方が多いです」

「宇宙での事業をすることになった時に、円とかドルとかユーロとかポンドとか為替、貧富の差がよくないってずっと言っている。1パーセントの人が99パーセントを支配するのがよくないので、だから全部を一対一にして、レートも全部。紙幣は使いません。今後は携帯電話で全てのお金を管理できるようにするようにと、209か国が印鑑を押しています。これがネサラ法案といいます

…すまん、もう何がなんだか幼稚すぎるのでツッコミが疎かになった。

まず簡単なところから言っておくと、世界には209も国はない。独立国として認められていない数を合わせると、それぐらいはあるのかもしれないが、だとすると世界のほとんどが「印鑑を押しています」となるわけだ。印鑑って日本とアジアのごく一部だけの文化やろ…。

既にほとんどのお金は携帯電話というかネットで管理できているのだけど、今どきこんな話に騙される人がいるのだろうか。

まあ私の横のおじいさんおばあさん達は目を輝かせていたから、信じているのかもしれんな…。はぁ…。

それで、宇宙ならなんでも早くできるってのは夢物語の類なのか分からないが、「宇宙テクノロジー」ってのは宇宙空間に向けての技術開発のことであって、「宇宙なら何でもできちゃうよ」って意味ではないと思うが。

そしてそして、さあついに出ましたよ「ネサラ法案」

これはネサラ・ゲサラ陰謀論としておなじみ、金融リセットが起きて全ての借金がチャラになって全人類に6億円が配られるとかいうアレだ。

ここから期待通り(私にとっては)、このセミナーはかつてないほど陰謀論どっぷりの展開となっていく。

長くなったので後編へ続く。

(「暗号宇宙銀行」を紹介するスクリーン)

(「暗号宇宙銀行」を紹介するスクリーン)

(黒猫ドラネコ)

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(以下はサポートメンバーの皆様へ向けたメッセージ)

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