潜入!反ワクチン討論会【前編】
どうも、黒猫ドラネコです。
関東も梅雨入りしたようですね。夏本番に向けてエアコンの点検は万全でしょうか。
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前回のレター記事では陰謀論YouTuberについてお届けしました。
感謝の声だけでなく、予想通り「うちの親も…」のようなメッセージも多く、やはり濃淡こそあれ、動画やSNSの情報だけで変な色に染まってしまう人は後を絶たないようです。
そうした「症状」は主に中高年の方々に多いようですが、今回の取材でもそれを確信しました。6月4日、反ワクチンのイベントに潜り込んできました。
長くなるので前後編に分けてお送りします。
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ノーマスク集うイベントへ
京成電鉄曳舟駅から徒歩1分ほど。曳舟文化センターに、テンション高めのノーマスクの中高年がたくさん集まっていた。有志による手作りのイベントといった感じ。おばさま達が嬉しそうに看板を設置している。
墨田区は23区の中でもコロナ対策、ワクチン政策ともにかなり優秀で全国的に評価の高い自治体だ。ここで反ワクチンの集会が開かれるというのだからすごい。
「徹底討論会、選挙でコロナを終わらせる」と銘打ったイベントだ。
主催は「コロナ前の暮らしを取り戻そう市民の会」「スト☆ワク市民ネットワーク」など。
(ポスター)
うーん、この名称とメンバーからしてお察しなのだが。そういう先入観を抜きにして潜入をしてみようと決意した次第。
ロビーに入ると、もうノーマスクの巣窟。暑くなってきたこの時期、人との距離があればマスクを外してもいいと思うけども、密集した場所でこんなに素顔の人間がたむろしているのを久々にみてさすがに面食らう。
しくじった。どうやら口元の”異物”に気付かれたようで、ジロジロみられている。ここでは私がマイノリティだ。開演30分前なんかに来ることはなかった。直前に来て後ろからスーッと入ればよかったのだ。
おそるおそるボランティアであろう受付係の女性に入場料金を払うと、「あ、マスクなんかつけやがって!さては大物コロナ脳インフルエンサーの黒猫ドラネコだな」とか言われることも全くなく、普通に案内された。(そりゃそうだ)
立派なステージがある582席の劇場型ホール。
よかった、何人かマスクをつけている人もいる。ヒトリジャナイ。8割強は埋まった客席を見渡して数えると、顎にかけている人も含め10人ほどは着用している。いやはや、ここだけ世間と比率が大逆転しているのはさすがだが。
案の定、中高年ばかりだ。おそらく会場内の平均年齢は50歳を軽く超える。アラフォーの私より年下らしき人が全く見当たらない。そして気になったのは、そこら中で「あー誰々さーん」とか「こっちこっち!」とか、おばちゃん連中の顔見知りの多いこと多いこと。もはやサークル活動のようなノリだ。
隣の席のオバハン、スマホに「マスクは有害」と描かれたステッカーを貼っている。アロマみたいな匂いがきつい。こんなのもうシェディングだろ…
ああ、とても怖い。色んな圧を感じる。
早くも地獄か
まずは前説だろうか。勢いよくメガネの中年男性がステージに上がってきた。ツイッターでよく見る、珍しい名前の”医療ジャーナリスト”だ。
あれ? スケジュールを確認すると、コイツの出演は予定には入ってないぞ。
「いつも僕ばかりが司会だとおもしろくないでしょう」「表で売っている本、50冊を売って帰らないと私、ディープステートに殺されるシステム…というのは冗談なんですが、私と誰々先生のズームで打ち合わせした新刊」「買っていただきましたら寿命が3カ月延びるシステム。危険なことを避けるようになって。いま霊感商法やってるわけじゃないですよワハハハ」「買わずに帰ったら石につまづいて…、Amazonでぽちっと押してしまうかもしれませウハハハハハッ!」
ひたすらスベリ散らかしている。まばらな拍手。それでいて客席のおば様方の見守るような慈愛に満ちた表情…。なんなんだこれは。早くも地獄じゃねえか。
なんでこの人だけ特別に宣伝の時間が? 反ワクチン界隈はイベント開始前のこういうのをなあなあで済ますのか。脇に立っていたスタッフの様子を伺うと「コイツに関してはしゃーない」みたいな表情をして頷いている。あとで知ったが、このジャーナリストも主催者側「コロナ前の暮らしを取り戻そう市民の会」発起人の一人のようだ。こうはなりたくねえな、と思った。
いざ開演。今度こそ前説だろ。
主催「スト☆ワク市民ネットワーク」代表者のおじさんが出て来た。
「マスクをしなきゃいけなかったり、ワクチンを子どもに打たせるのはどう考えてもおかしいのに日本の国会は腐ってしまったのか」と、静かな怒りを表明していらっしゃる。
もういい、もういい。今からそういうのを浴びるほど聞かなあかんのやろ。いいから早くしろ…!
植草氏、ガチだった
やっと始まった。まずは経済評論家の植草一秀氏による45分間の基調講演だ。
第一声「冤罪被害者の植草です」で会場がドッと沸く。冤罪なの?うーん、さぞ大変な思いをしたんだろうな(棒読み)。
この講演内容がすごかった。今回のイベントにおいて、なんだか一人だけテイストが違うなと当初は思っていた。識者として依頼され、仕事だからと割り切って政治経済のゲストスピーチをしに来たとばかり思っていた。
まったく違う。植草氏の話を抜き出すとこうなる。
「コロナウイルスがあるかの疑念すら存在する」「陽性者で亡くなったらコロナ死として集計される。速やかにやるためとの反論もあったが、集計から確定値に至るまでに数字の移動はほとんどない。コロナを主因として亡くなった人が水増しされている状況」「ワクチンの広がりとともに死者が激増。人口減少が加速。ワクチンの大きな狙いに人口を減らすというのがあるのでは。着実に成果を挙げているのではないか」「ほぼ間違いなくワクチン接種と接種後の様々な障害、死亡は明らかになっている」「猫の実験では5匹全て死んだ」「ワクチンを打つたびに病院が儲けるシステム。こんなに美味しいものはない」「1パーセントの金儲けのために既成政党が取り込まれワクチンを止める勢力がいなくなっている」
あ、あんた…完全に「ガチの人」じゃねえか。
知らんかった。心の準備ができていなかったのでびっくりした。
(ワクチンのリスクを語る植草氏)
終始穏やかな口調で、興味深い政治経済の流れの話もあったし、データやグラフの分析などは軽快に話してはいた。
が、ワクチンの仕組みなどの説明はやや詰まりながらで、ネットで調べたのであろう内容ばかり。有名なトンデモ医の名前を出すなど、そこらの反ワクチンさん方と情報収集先が変わらないとみえる。
そのうえ、それを自身の専門である経済と結びつけ、ところどころ「断定はできない」とは言いつつも「利権」と結論付けてしまっている。
目立った主張としては、ビル・ゲイツによる人口削減などの周回遅れな陰謀論、ワクチン利権で儲けようとするグローバル資本主義の話…。
そして極めつきがこれだ。
(新型コロナのアナグラムを語る植草氏)
おい、わざとか…?
植草さんよ、それはちょっと前にクソ陰謀論界隈で流行ったネタなんだ。他にも並べ替えで「NO MEDICAL ROT(医療腐敗なし)」「EROTIC ALMOND(エロいアーモンド)」にもなる。なんぼでも作れるのよ。
お願いだ、会場のレベルに合わせてサービス精神を見せたんだと言ってくれ。なんなら今までの話も全部ネタだと言ってくれ…!
植草「メディアによってコントロールされてワクチン接種が推進されてきた。一番大きく感染したデルタとオミクロンを合わせると、メディアコントロール…。かなり出来過ぎた話だなという感情を持つわけでございます」(客席「おぉ…(驚嘆の吐息)」)
…そうでございますか。出来過ぎた話と思っているならまだマシかな。まあいいや、サヨナラ。
いや、ちょっと待てよ。これって「基調講演」だったよな。てことは、これを基準としてイベントが進んでいくってことか。多少は覚悟してきたとはいえ、ドえらいことになった。どうして毎日ただ一生懸命に真面目に生きているだけの私がこんな酷い目に(自分で潜入してんだろ)
いよいよ本番、登壇者の自己紹介
短い休憩を挟み、「徹底討論会」が始まる。いよいよだ。ここから司会進行は鎌倉市議の長嶋竜弘氏、元横須賀市議の一柳洋氏。
植草氏に並んで(サヨナラじゃなかった…)、政治団体・参政党の共同代表・松田学氏、元格闘家の参議院議員・須藤元気氏、元衆議院議員で弁護士の青山雅幸氏が登壇した。
(登壇したメンバー)
会場から割れんばかりの拍手が起きる。
以前の記事「トンデモ政治団体・参政党」で、松田氏のヤバい演説は取り上げた。他の方はツイッターではよく見かけるものの、反ワクチン派ということ以外はよく存じ上げなかったので、自己紹介を注意深く聞こう。
まずは青山雅幸氏から。色んな意味でツイッターで目立っている方だ。
「前の衆議院で、厚労委員会では尾身さん田村さんと喧々諤々でやってきた。国会議員はお医者さんとか専門家のレベルをほとんど分かっていない。私は弁護士で30年のキャリア、医療訴訟専門で25年のキャリアがあるが、お医者さんはテキトーなことばっかり言ってるんだと骨身に沁みて分かっている。ところが皆さんは信じてしまう。尾身さんなんかが手作りのテキトーなグラフを出してるのを全部信じちゃう」
いやあ、早速きてるねえ。ハイハイそうですかそうですか。青山氏によると、議員時代に言いたい放題に言ってきたが、ワクチン接種のことだけは発信が自由にいかなかったと。それで維新を離れたそうだ。現在は自分で政党を作ったとのこと。まあこのへんは次回にも。
次に須藤元気氏。有名な御方だ。会場からの拍手もひときわ大きい。
「戦う男として、肌感覚でワクチンは危ないんじゃないかなと。格闘技で勝つために一番大事なのは負けないこと、距離をとって間合いを見て勝てる時に行く。ワクチンも最初に出た時に、治験も終わっていない、モンタニエ博士とかファイザーの副社長が危ないって言ってる、これはなにかおかしいんじゃないかとツイートしたら攻撃がすごかった。人気商売を20年以上やっていると攻撃が組織的かどうかが分かる。だいたい『格闘家の頃はファンだったのに残念です』と来る(会場爆笑)。そういったのを含めて、常に慎重派でいて、5~11歳の接種には躊躇なく発信させてもらおうと思った」
ウワー…これほどまでだったか。オーソドックスな反ワクチン・陰謀論者さんによるネット情報として、リュック・モンタニエ博士や元ファイザーのイードン氏の話は必ず出てくる。いずれの主張もデマとして否定されている。格闘技界の中でもかなり知性のありそうな方だと思っていたのに、なんでそっち方面にいっちゃったのか。本当に残念だ。
さあ松田学氏。出たよトンデモ参政党のひと。
「コロナが始まった頃から上久保靖彦先生と、時の総理にかけ合って集団免疫をと一般国民に正しい知識を進めてきた。今は井上正康名誉教授とタッグを組み、動画を何度削除されたか分からないが、言論弾圧にめげず、現在ではニコニコチャンネルで井上先生のコメントを紹介したりずっとやっている。超党派の議連を作るお手伝いをして、2年前には参政党を立ち上げ、コロナについてモードチェンジを主張している。先ほども押上駅前で演説。ああいう場でワクチンと発すると音声がYouTubeでは消えてしまう。このおかしな構造を追求したい」
以前も書いたけど、この人らの妙な自信はなんなんだろう。井上正康氏といえば反ワクチンの旗印になっているような人物。もはやそこに行きついたら止めようもない感じはする。
動画を削除されるのは規約違反だからだっつってんだろ。
さて植草氏だ。今度は何を言うのか。
「冤罪被害者の植草です」(また会場ドッと沸く)この掴み、美味しいと思ってんな。過去の話とはいえ、ネタにできるような内容の罪だったか…?
あらためての自己紹介は「市民連合を作って野党共闘などで政治を変えようとしている」との内容。平和主義の維持、原発廃止、共生の経済政策などを打ち出しているそうだ。実は先ほどの講演でも、「鳩山内閣はハメられた」的な話が出ていて、左寄りの人だと分かる。
実はここから本番だ…。皆の衆、覚悟はいいか。まったく存じ上げなかったが、このイベントの主催者側の二人が挨拶する。
まずは一柳氏から。横須賀市議を6期務めて引退した70代とのことで、「市民の会」発起人の一人らしい。登壇者では最も高齢の方だ。
「2020年の段階で『なにこれ、騒いでるのにぜんぜん人死んでないじゃん。なんでこんなバカ騒ぎしてんの?何が目的なんだろう』と知り合いの議員に、このバカ騒ぎをなんで止めないんだと言った。それも洗脳されちゃってて『政府は生ぬるい』と。『こいつらなんなんだ』と思っていたら、昨年からワクチン打て打てと。『あ!これが目的だったんだ!これは世界的に大きな仕掛けがあるんだな』と気が付いた。自民党から共産れいわまでコロナ問題の我々の声を全く取り上げない。ワクチンを止めろとも言わない。やっと今回の参議院選挙では自由共和党(青山氏の政党)と参政党という、我々の声を取り上げる政党が出て希望の灯がともった。デモクラシー崩壊の状況を変える希望が持てる。コロナ愚策にブレーキをかける参院選にしたい」
あらあら、マイクの音が割れるほどの大声で。コイツはしびれるぜえ…。つまり「気付いてしまった」おじさまなのだ。すっかり「目覚めて」いらっしゃる。
最後に司会の長嶋氏。鎌倉市議4期目だそうだ。反ワクチンでおなじみ「全国有志議員の会(77人)」の副代表。代表はあの池田としえ氏(日野市議)。…あの、すんませんが、この人の紹介は省略してもいい?え、だめ?
要するにアレな集団のナンバー2なわけだ。地方議員という立場で、反ワクチン活動に妙な正義感を持ってしまった人。頼むから市民のため他のことに力を使ってくれと。
「現状はパンデミックではないプランデミック。情報統制がされていてテレビで一方的、偏った情報しかいかない。投資家グループがいて統制されているのが現状。世界の富豪トップテンは資産が倍増している。富豪の意向のもとで日米合同委員会で降りてきて」
な? だから言ったろ?
しかしこの方、最後に核心をついてきた。
「だいたいこういう会を開くと工作員がまぎれている。それはそれで聞いてもらっていいと思いますが」
おお、さては私と目が合ったな!?
よくぞ見破った!ここにいるぜ!前列から6段目の左側の席になあああ!(もう夜中のテンションで書くのやめます)
しかし、そもそもの話、「徹底討論会」って意見の違う人達が登壇しなきゃいかんのではないか。この様子ではただの反ワクチン座談会だろう。これはだいぶキツい。あと2時間もこの濃いメンツでの反ワクトーーークを展開するつもりなのか。
おれの体、もってくれよ…!
(次回に続く)
黒猫の見解「反ワクチンの候補者なんて信用できない」
ここで一旦、コラム的なものを。予定よりも長くなって前後編に分けることになって申し訳ない。
文字起こしを全公開するのが最も早いのだろうけど、さすがに有料イベントでそれをするのはまずいという分別はある。次回はさらに要点を絞ろうと思う。それでいくと「一部を切り取った批判」だのなんだの言われるジレンマは感じつつ。
しかし「切り取った」で言えば、つくづく選挙というものは難しい。どこを切り取って表向きにするか決められるのは候補者自身だからだ。