渋谷1500人デモ行進を追う。反ワクチン・陰謀論集団「神真都Q」とは（後編）

なんとDJポリスが、その満を持しての第一声にかぶせるように「ご通行中の皆さん、デモ行進が通過します。交通の混乱を避けるために警察が誘導しております」と大音量を流してしまった。

デモ隊の拡声器では全く太刀打ちできない大きさ。

行進中は何人かのスピーカーが思い思いのことを述べたのだが、終始、このDJポリスからの交通整理の音声ばかりが大きく響いていた。

筆者もできるだけ対岸で離れてついて歩いたが、拡声器外からは「マスクは健康被害が出ますよー」「いつまでやるんですかこの茶番をー」などの主張は割と聞こえた。「ワクチンは毒ですよー！打ったんですかー解毒しましょうー」などと声が上がった。

８割の人が接種した昨今、休日の繁華街にいきなり現れたおばはんたちにこんなん言われたら気分が悪すぎる。

やけに饒舌なおっさんが拡声器を持ったので耳を傾けてみる。

「ワクチン接種でたくさんの人が死んでいます！データを見るとコロナ騒動って茶番なんですよ。私は職場で経理部長なんです。数字には強いんです！」

こんな部長がいる会社で働きたくねえ。

渋谷スクランブル交差点、明治神宮前、原宿駅前を経由して、ちょうど１周のように集合場所の裏にある代々木公園側の広場の解散地に到達したのは１４時５４分だった。

印象的だったことを記していく。

まずは沿道の反応だ。デモを目の当たりにして、どう考えてもみんな何のこっちゃ分かっていない。スクランブル交差点付近で、思いがけず交通を妨げられたであろう若い男性たちの感想が聞こえてきた。

「この中に知り合いいたらキツいな…」

「ああ、それはキツい」

思わず吹き出してしまう。

明治神宮前、表参道に続くエリア。沿道の幼い子どもがおそらく人生で初めてデモをみて母親に話しかける。

「ねえ、テロ行進がきたよ」

可愛い勘違いだが「概ね間違ってないぞ」と心の中で褒めた。

雨宮純さんや私と同様に、出発地からこのデモ隊を追いかける年配男性の姿があった。見たことあると思って雨宮さんに聞くと、UFO研究家で都市伝説などに詳しい竹本良氏だという。検索するとビートたけしの「超常現象」の番組などに出ていたセンセイだ。

竹本氏は息を切らし原宿駅前の歩道橋を上がり、デモ隊がよく見える位置に立った。

取材に来たのだろうか。熱心な人だなと思っていたら、なんと行進に向かって必死に手を振るではないか。

「おーい！やまとー！」「やまときゅーガンバレーー！」

ズコー！　そっち側かーい！！

沿道からこうした声援を送ったのは、私が見た限りではこの人だけだった。

終着地点。１時間弱は歩いてかなり疲れた。

しかしデモ隊の老人たちに思ったほど疲れた表情はない。むしろ充実感に満ちていた。

スタッフや警察から「集まらないで速やかに解散してください」「集会はありませんのでそれぞれ駅方面に向かってください」の声がかかる。みんな「え、おわり？」という感じで不満そうだが、じわじわと解散していった。

先頭の部隊の到着からおよそ１５分ほど遅れ、第２隊が現れた。デモは全部で６隊に分けられていたのである。眺められる場所に移動してざっと数えているといずれも２００～３００人ほどだ。

隊ごとの解散を促されていたがとても追いつかず、終着点に数分ごとにどんどん人数が増えていく。みんな何か集会があることを期待している様子。

「解散してください」の声が届かなくなる。スタッフも「少しずつ歩きながらであれば集まっていることにはなりません」などと言い出している。おいおい。

第４隊か５隊か忘れたが、先頭に年末年始を騒がせた偽煉獄さんことカズアキくんの姿。到着ぎりぎりまで何かをどなろうとしたが、クライマックスぐらいのところで警察に制止されてしまい、よもやよもや。穴があったら入りたい心境だろうか。声を止めて恥ずかしそうにはにかんで頭を下げた。

最終の第６隊が到着。その先頭に一兵衛がいた。もはや解散する気配も失せたデモの集団から大歓声が沸き起こる。

人気者のように囲まれていた偽煉獄さんの周囲から人がいなくなり、最終部隊の到着を見ようと走り出す者まで。

熱狂に合わせるように、一兵衛が拡声器の怒鳴りのトーンを上げた。数人の警官が駆け付け、対峙するかのような形に。

「国民のために立ち上がっているのに警察は邪魔をするのか！？」

「国民や子どもを救う（？）のがあんたらの仕事だろ！」

うおおっ！そうだそうだーーー！！

いちべえさあああああああん！

……言っておくが、警察はおそらく五十人を超える態勢でこのデモ行進をしっかり警護した。唯一妨害との言いがかりをつけられそうなのは最初の発声だけ。どう見たってこれは一兵衛が解散地での大勢に向けてのパフォーマンスだ。

そもそも一兵衛は自ら事前に警察署に赴いてきちんとこの日の行進の申請手続きをしているのである。  

なんだろうこの酷い茶番劇は……。

それでも集団のボルテージは最高潮。一兵衛が去るまで数百人が彼を囲んで握手会、撮影会のような状況に。子どもをだっこしてもらう者までいた。力士かよ。まるでヒーロー扱いだ。

デモ参加者は達成感と高揚に震え、憧れの「教祖サマ」一兵衛との時間の共有に、感涙にむせぶかのような表情。

対照的に、多数の警察官は最後まで警備を続けて淡々と仕事をこなした。

内心は「なんなんだよコイツら」だったと思う。

一兵衛が去り、隊はじわじわと解散。

そこで、円になって反省会をする十数人のスタッフが気になった。服装など、あまりガラがよくない。どうも純粋で妄信的なデモ参加者とは雰囲気が違う。

それでいてやけに統制が取れ過ぎではないか。SNSでの自然発生の有志でここまで首尾よくやれるだろうか。みんな元々の顔見知りのようだ。

周辺を取材すると、Vシネマ出身の一兵衛の裏にはどうもきな臭い連中がいることが分かった。それがただの「デモ屋」のような存在であれば別にいいのだが…。

しばらく解散地に残って遠目からスタッフ達の撤収作業を眺めると、旗や拡声器などが  「TRUMP 2024」の旗がついた車に運び込まれていく。

この神真都Qはやけにトランプ推し。以前のトランプ支持者によるデモには統○教会系の団体や、幸福の○学が関わっていたことが分かってるが、今回も何か関係があるのだろうか。今後、機会があればさらに調べていきたい。

トランプ旗の車の前、なぜか集まった私服警察の数人に向けて、スタッフ代表らしき女性が笑顔で挨拶をしていた。

「ありがとうございました。皆さんワクチンだけは、打たないでくださいねえー」

みんな苦笑いしている。いろいろと怖い。

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長くなりましたが、いかがでしたか。

このあと一兵衛はツイッターを凍結されますが、どうも内紛？のような形で、デモ前に別のやり方で集めた参加者の個人情報を持ち逃げされる事態が起こっているようです。言わんこっちゃない……。

神真都Qのオープンチャットでは、その持ち逃げについて、被害届を出すために一兵衛に委任状を渡してほしいということがしきりに投稿されています。

この委任状にも住所や氏名が必要とのこと。

あの、まさかとは思うけどここまで全部計画されたものじゃないよね……。

もう一生やってなさいって感じで、変なものに騙されて気付けない人はとことん騙されるんですよ。皆さんは何事も注意深くやりましょうね。

黒猫ドラネコ

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