潜入!反ワクチン討論会【後編】
どうも、黒猫ドラネコです。
いよいよ暑くなってきましたね。熱中症対策は万全に。今回はそんな暑さを吹き飛ばせない潜入レポートの後編をお送りします。長くなりますので、お時間のある時にでも是非。
いろんな方にシェアしていただき本当に感謝です。かなり評判がよかったこちらの続きです。
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コロナの本質を見抜く植草氏
政治団体・参政党の共同代表の松田学氏、元衆議院議員で弁護士の青山雅幸氏、経済学者の植草一秀氏、参議院議員で元格闘家の須藤元気氏。
登壇者それぞれの自己紹介が終わった。
司会の長嶋竜弘氏(鎌倉市議)と一柳洋氏(元横須賀市議)が、一人ずつに振っていく形で「討論会」は進んでいく。
(ポスターより。登壇した面々)
前回も記した通り、両司会も含めてこの場にいる全員もれなく反ワクチンさんである。
8割強は埋まった客席もほとんどがそうだろう。これでは「討論会」にならない。感染対策と既存政党を批判する「座談会」もしくは、「15時だょ!反ワクチン集合!」だ。
そんなわちゃわちゃが2時間も続く。
よし、もう覚悟は決めたぞ。この潜入が終わったら、オイラは故郷に帰ってたくさん親孝行するんだ…。
まずは長嶋氏による「コロナで世界の富豪が儲かっている」との内容に合わせ、【前編】で陰謀論ガチ勢ということが露見した植草氏から解説が入る。
植草 「2019年10月18日のイベント201で骨格が形成されている。今回のコロナパンデミックの裏側にはかなり人為的なものがありそう。まだコロナウイルスというもの自体が特定されていない。全体が詐欺のような言い方もある」
ごめん母ちゃん。頑張ったけどオイラ、もう限界みてえだ…。
(熱弁する植草氏)
イベント201とは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団や世界経済フォーラムなどが開催した、広域流行病などに対するシミュレーションだ。陰謀論者さんの間では「今回のパンデミックを前もって確認していた」などの声が根強い。点と点を繋げて真実にしがちな方々にとってはドンピシャなものである。
しかしそもそも、そんなあからさまに疑われるようなことするかって話だし、これに限らず環境や生物学上の脅威に対してのイベントは新型コロナ流行以前に世界中で行われているのである。陰謀論者さんみんなビル・ゲイツ好き過ぎなのよ。
(イベント201のロゴ)
とにかく植草氏はこのパンデミックを「仕組まれたもの」と考えている。
コンピューターOSの売り方と同じように、ゲイツが「ワクチンによって利益を得ると考えてもおかしくない」らしい。そしてもう一つ、「グレートリセット」を掲げ、生活様式を変えて一般大衆を管理して支配することで…
だってよ!よかったな!はい、もう終わり終わり!
植草 「古くたどれば1774年ロスチャイルド家の世界行動革命計画…。また陰謀論だとか言われるが、その中で世界統一市場を作り、ごく少数による世界支配、一般大衆はゴイム(家畜)奴隷として扱うと書かれている。グローバリズムは世界統一政府を作って1パーセントの利益を極大化するのが究極の目標とすると、このコロナの問題は文脈上、非常に整合性があるという印象」
そこまで見抜かれちゃあもう仕方がないよ。我々のような闇の軍団は商売あがったりよ。目覚めた人たちだけで作る新しい世界をどうか頼んだぞ。植草くんをはじめとした光の戦士たちよ…。(「光」に深い意味はないので勘違いしないように)
明かされる須藤元気氏のいろいろ
なんとか気を取り直して(これ取り直せるか?)現職の参議院議員である須藤元気氏に話が振られる。「バッシングを受けるか」「国会の空気はどうなのか」という問いだ。
まず須藤氏は「世の中をよくしたい」と考えて高校生の頃から政治家志望だったと明かす。氏のダンスパフォーマンスグループ「ワールドオーダー」の名も、陰謀論的概念である「世界新秩序(ニュー・ワールドオーダー)」からとったという。
昔から「本当にあるんじゃないか」と思うようなたぐいの話が好きだったそうだ。「まさかコロナやワクチンでこういった形で(世界新秩序が)やってくるとは正直思ってなかったんで、驚いている」と話す。
(喜怒哀楽が豊かだった須藤氏)
良く言えば、すごく純粋な方なのだろう。自己紹介でもあったように「肌感覚で」ワクチンを危険ととらえ、そしてネットで偏った調べ方をし、裏付けをとって確信してしまったのだ。回答からもその純心がうかがえた。
須藤 「ワクチンの問題に関して立憲や他の党も、そこまでみんな当時は深刻に考えてなくて、『最後のお願い、一生のお願いでいいからちょっと打つのを待ってくれ。様子を見てくれ』と議員さんみんなに言った。『俺のこと変な奴だと思ってもいいから、ワクチン危ないと思うから止めたほうがいい』って言ったけど、止めることができなかった。正直、議員の仲間はみんな、打ちました…」
そう言ってうつむくと、会場から「えぇ…」と、どよめくような嘆息が漏れる。もとから知名度と人気の高かった須藤氏が、会場の空気を支配し始めた。
須藤氏によると、議員たちは各選挙区に戻った時に「打ったか」と有権者に聞かれることを恐れて打ってしまったということだ。
なんてことだ。危険なワクチンをそんな理由で接種するなんて。これはまさに世界政府が大衆を使ってマインドコントロールしてロスチャイルド…おっと危ない、私も早くも反ワクチンさん側に感化されてしまっていたぜ。やれやれ(?)
須藤 「僕が、いち個人でいくら言っても、あの時のインフォデミックってやつですか、メディアでもどんどん打たないと危ないというものに対して(何も)できなかったことが、本当に残念で…」
このあと須藤氏は、「因果関係は分からない」としながら、友人がワクチン接種後に心筋炎で倒れて亡くなったことを声を詰まらせながら語る。そして、それでも必死に前を向きなおすようにして唇を噛みつつ「悔しいすね」と繰り返した。
客席からは「あぁ…」と嘆くような声。すすり泣きすら漏れてきた。
須藤 「今も、仲間でも、打ったところが痛いとか…帯状疱疹ができて、打たなきゃよかった、って…やっぱ悔しいっすね」
「でも…それでも打とうとしたんすよ。3回も打たないとって!」
「本当はもっと早く(自分が)元いた立憲民主党にワクチンの危険性を、野党第一党として言ってほしかった。言ってくれなかったのは…やっぱり悔しいですね。言える立場じゃないですけど」
元格闘家の熱を帯びる訴えの連打に、会場からの「うわぁ…」など悲鳴にも似た静かな怒りの声が交錯していく。もはや「つらいだろうに、よくぞ言ってくれた元気さん」のムード。完全にワクチンの全てが悪だという雰囲気である。
彼が反ワクチンに走ってしまう動機は分かった。いろいろと疑問はあるものの、他者の健康にかかわることではあるので、こうなると外野が何か指摘するのは冷血で野暮になってしまう。こうした感情のままで活動に入り込む人も多いのだろうとは思った。
この感傷(?)を、おじいさまの甲高い声でぶち壊したのが司会の一柳氏だ。
「須藤さんの話に、選挙区に帰って『打ってるか』と支持者から聞かれたから打たなきゃいけないって。それ、国民の代表の国会議員として逆でしょう!」
なぜか一人でヒートアップ。お、おう。なんだなんだ。
一柳 「こんなにヤバいのは、俺も頑張るから皆さん打っちゃダメだ、しっかり国会で追及する、と。現職議員の言い訳を聴いていると、『選挙日が』って。てめえ、選挙のせいにするな!今ごろになってワクチンが危険だとか超党派の議員でとか、遅いんですよ!われわれ市民のせくぁwせdrfhtgyふじこ:」
元々この人だけマイクの声量がでかいのもあるが、すごい勢いでブチギレ、その怒りの声も会場からの拍手でかき消され、よく聞こえなくなってしまう。
(声量ある一柳氏)
こ、これはついに議論が開戦する流れなのか!?
…いや、須藤氏は何も言わない。もう次の話に移っている。
へいへいへーい!討論せんのかーい!
今さらながら、この会は一体なんなんだ。私はどこに紛れ込んでしまったのか。誰か道を照らして示してくれ。
参院選に出る青山氏と松田氏の主張
いかん。こんな冒頭で長くなってしまった。
なにせ2時間のイベントだ。この記事を書くにも「言った言わない」を防ぐための文字起こしをやって、それが3万字を軽く超えている。これだけで2日かかった。ちょっとずつ端折るのも労力だ。
さて、登壇者のうち、いよいよ6月22日に公示される参院選に出馬するであろう政治団体のお2人がいる。松田学氏(参政党)と青山雅幸氏(自由共和党)だ。いずれも元国会議員。このほど新しい政治団体から「日本を変えたい」と意気込んでいるようだ。
参政党については、松田氏のナチス擁護の演説なども含めて、ただのトンデモ団体ということは以前も書いた。
青山氏の立ち上げた自由共和党については、よく知らなかった。話を聞くと同党は、党議拘束によらず議員が自由に発信できることを目指している。青山氏は「自由が本質」「人の選択の自由を」と語った。それ自体は立派なことだと思う。
青山 「私がなんでコロナに反対しているかっていうと、コロナ政策だけじゃなくて、人の選択の自由を根拠なく踏みにじっていいのかって話なんですよ」(会場大拍手)
うーん、でも根拠はあるから皆でやってんだけどな。
要は自分らの方が正しいって思ってるだけの話だ。それを言い出したら皆が皆そうなると思うのだが。
青山氏の主張をまとめると、ワクチンは利権で、コロナは「こけ脅し」。マスコミが煽ったから大きな力になった。その背景には政治的なものと、医療や公務員の体質がある。立憲民主党と共産党がゼロコロナを理想とし、それを政権攻撃に使って安倍菅が退陣に追い込まれた。これを議員が恐れて空気ができた。ワクチン接種は真面目な公務員の習性でただ上の指示に従って広がったのだと。
そして、ご自身としては、ツイッターで医療について言及した時にひどく叩かれた経験があり、当時所属していた党の幹部からも咎められたらしく、「本当にこんな簡単なことで言論を封殺できるんだな」と憤りを覚えているようだ。
青山 「日本最大の利益団体、既得権益団体が医師会。自民党にも毎年毎年、都道府県から、あるいは全国レベルから何億も十何億も出してる。医師会が儲かるのは、厚労省も儲かること。自分たちの天下り先もできる。その利害ががっちりハマった」
「どこに金を使ったかっていうと感染症医。あの人たちって言っちゃ悪いけど日陰もん。感染症なんてめったに流行らないから大したポジションじゃない。ところが(コロナ禍で)急に日が当たった。そこらへんにポンとお金を出せば、少数で結構有効になる」
「皆さんご承知の、私や須藤さんがやられた(叩かれた)んですけど、コロナビ(こびナビのこと?)ね。あの辺なんかにいってるに決まってるんです。だってあんなサイトなんてそう簡単に立ち上がんないですから、お金がかかりますから。だから上手にそういうところにもお金を使う。幽霊の正体みりゃ枯れ尾花みたいなもんで、日本社会における今までの既得権益だとか公務員の習性だとか厚労省のだらしなさみたいなのが相まって、今の形が作られたと私は思うんですよ」
ツイッターで受けた恨みを晴らしたいためか、もともと厚労委員会での経験から来る自信なのか、医師をこき下ろす発言が目立った。
(真剣に語る青山氏=右)
ただ、この青山氏は、一柳氏による「コロナ・ウクライナ・温暖化をマスコミは批判的に取り上げない。反ワクチンやプーチン擁護は非国民扱いをされる。このメディアコントロールはディープステートの仕業なのではないか」などが交じった謎の主張を、「裏で糸引いてるディープステートがいるっていうところ以外は賛同です」とかわすなど、努めて冷静に話を展開していた。
逆張りの逆張りという感じもあるが、事実として登壇者で唯一、陰謀論には与しないような姿勢をところどころで見せている。
…なら討論をやれよ。とも思ったが、もう仕方がない。しかし、その青山氏の冷静な視点も、程度問題ではあるのかもしれない。
青山 「欧米は常に間違ってるっていうのがまずあるんだと思う。ウクライナ(問題)にしたって、言ってみれば内戦ですよただの。もともとロシアの領土だったんだから。ところがそれもプーチンが悪って決めつけちゃって、戦争に加担してるんです。欧米が常に間違ってるんだっていうことは、常に我々は頭に入れておかないと、このパンデミックだって欧米が作り出した騒ぎじゃないですか」
結局はこの人も、自分以外の世の中のみんなは騙されているとでも言いたげなのだ。
ただ、そこは参政党の松田氏よりはだいぶマシだ。さあ来たよ。
松田 「もう既に陰謀論ってなくなってる。一般の日本人も気付きが起こり始めている感じがする」
これぞネットで絶賛売り出し中のトンデモ政治団体、参政党のドンである。
このイベントの前にも駅前での街宣をこなしてきたという。会場内には、そこから駆け付けたらしきオレンジ色のシャツを着たおばさま方も目立つ。松田氏の発言にはひときわ大きな拍手を送って、何か言うたびに「ふんふん」と荒い鼻息のような賛同が感じられる。うるせえよ。こんなのもう同調圧力じゃねえかよ…。
松田 「日本ではメディアで入って来る情報があまりにもプロパガンダが多い。今のウクライナもそうですけど、戦後77年間、洗脳の歴史が繰り返され、ようやくおかしいなとコロナで気付いた。日本の場合、欧米と違って皆さん小さい頃からコロナになっている。免疫状態が全然違う。ファクターXとかいって、わけのわかんないノーベル受賞者がですね、あのノーベル賞、形無しですよね、あれ。井上(正康)先生がいつも山中くんって怒ってますけどね(笑、会場大きな拍手)」
「コロナで死んだ人はそんな周りにいないのに、ワクチンで死んだ人の例はたくさん出てくる。やっぱり気が付きますよね。参政党は気付き、自覚した方々がどんどん増えている。ようやく日本も多くの国民が動き出したなと実感しているところ」
かあー…、そうでごんすかぁ。それで参政党員のシャツの後ろには「おはよう」って書いてたのか。いいよ、いいよー、目覚めてるねい。
(登壇者の話を聞く松田氏)
さあ、まだまだここからだ。
松田氏の「俺は分かってるんだぞ節」が続く。衆議院議員の経験もある氏は、「時の政権のトップのような方」にも「モードチェンジ」を進言したとのこと。その御方は「分かってはいた」のだが、メディアに洗脳された国民によって支持率に影響を受けるために制約を受けてしまった。
この松田氏って、そんなに政権に入り込めるような要人だったの? あまり聞いたことなかったなあ。
松田 「それでもなんとか東京五輪までにモードチェンジしてくださいと。菅政権でも、わたし原稿まで書きましたよ。でも結局ビビっちゃったんですね。デルタ株が増えてきて、モードチェンジできないまま内閣も変わってしまった」
「某総裁候補になられた女性の方(おそらく高市早苗氏)にもちゃんと井上先生と話をしました。びっくりして聴いておられましたけど。その方も『1回目ワクチン打っちゃったんだけど…2回目は打たない方がいいでしょうか井上先生』と。『絶対に打たないでください』と言ったんだけど、打っちゃったんですねえ」
おいおい、会場。「あぁぁ…(落胆)」じゃねえんだよ。いちいち反応がある良いお客さんだなあ、まったくよお。
松田 「岸田さんに言わなきゃ。3回目の接種、あんなプロモーションなんかやったら殺人罪になっちゃうって。ご存知ないのかなと。恐ろしいなと思ってまして、なんとかご説明しようと思ってもなかなかルートがないんで説明してないんですけど、もうしょうがないなという面も」
満面に笑顔で、自信たっぷりに「政治に食い込んでいる俺の話」が繰り広げられていく。
松田氏は、この4月に井上正康氏を連れて、超党派の勉強会をしたとのこと。そこには12名の議員が来たそうだが、自民党だけが来なかったという。「ハッキリは言えませんが『何か』があったんですね」。
いやいや、反ワクチンの講習会なんか普通は行かないし、「そんなもん行くな」って言われても至って普通のことだと思うよ。とりあえずそこに出た議員のリストを探そうか。
松田 「ウイルスは我々の体の中に常にたくさんいる。免疫力が下がるから発症する。答えは免疫力を付けることしかない。さっそく免疫力が落ちた事によっていろんな問題が起こってます。なんかサル痘とかいって、罹らなくてもいいものにどんどん罹るようになっちゃってる。やっぱり自然免疫力をワクチンが低下させます。ワクチン打ったことによって流行りかねない病気、ならなくてもいい病気にかかることがどんどん出てくるでしょうし、いったい人類社会は何をしてしまったのかと」
「そこまでグローバリズム全体主義っていうのは、ものすごい恐ろしい力を現実に発揮しはじめていて、『我々の敵ってこれなんだ』というのを本当によく分かるようになったなという感じがしている」
「今の医療はとにかく薬を飲ませて、それで体調を悪くされて、そしてまた薬を飲ませる。まさに海外の製薬利権の為に奉仕するようなものが中心。せっかく日本では東洋医学があるのにあんなケミカルなものでやるとか、根本から変えなきゃいけない。患者本位になって無い。いわゆる抗がん剤はアメリカで禁止されていて売れないから日本で売っている。それでがんが増える」
うーむ…。どんどん「エビデンス?知るかバカ」みたいな話になってきていないか、これ。
感心して頷いているおばちゃんや、デカいノートにメモをとってるじいちゃん、会場の皆さんは本当にこんなのを植え付けられてしまって大丈夫なのだろうか。
その敵視しているグローバリズム全体主義といい、ディープステートといい、海外資本といい、仮想の巨大な敵を作るのがお上手だな。まだまだ色々(主にヤバめの)発言があったが、松田氏の話はキリがないのでこんなところにしておこう。
参院選前にも、参政党については書いていこうと思う。お楽しみに。
最後の最後に松田VS青山、ファイ!
ふううう、なんとかここまでは耐え抜いた…。
植草氏の「メディア情報戦に敗れて鳩山内閣は潰された」とか、長嶋氏の「一人につき3人に投票を呼び掛けて電話をかければどんどん広がる」など、なんか際どい内容の微笑ましいトークは謹んで割愛させていただく。
登壇者の間で特に言い争いもないまま、実に平和的にイベントは終わりの時を迎えようとしていた。ついに討論会にはならなかった。色んな話が聞けて有意義な時間だったのだろう。私以外には。
し、しかし! 突如としてそこに電流が走る。
最後の質問コーナーの時だ。いつ質問を募集したのかは知らんが、参院選の争点でもある「改憲」「財政」についての見解を問われた松田氏と青山氏が、なんと真っ向から対立したのである。
まずは松田氏が「憲法の問題は、今の改憲に賛成か反対かではなく憲法を作るという立場」という内容で話し始めた。
端的に言えば、日本人が一から自分達の憲法を作っていくように話し合おうということらしい。これは参政党がよく言っている「創憲」というものだ。さすが極めて右側の集団だけあって、9条2項についても、周辺国が交戦権がないことを見越しているので削除することも視野には入れているようだが、「今の戦後の洗脳された国民投票では否決されるだろう」との意見。そのあたりは少し歯切れが悪く、どういう狙いで濁しているのかは気になる。
緊急事態条項には反対する趣旨で次のように語った。
松田 「グローバリスト勢力によって、時の岸田さんみたいな政権だったらコロっとやられちゃいますよ。WHOだけじゃなくて日本政府が強制権限でワクチン強制したいとか、家に居ることを強制、監禁したいとかにつながりかねない。戦争とか自然災害ならまだわかるが、今回の感染症ってぜんぜん医学的に分かってない世界において、間違った政策をとる可能性がすごく大きい。だからこれはやっぱり反対するというのが我々の立場です」
そして財政について。積極でいくとのことだ。「今日はそんな話をしている時間はないですが、『松田プラン』というのがありましてね」とドヤ顔をすると、参政党員にはおなじみだったようで、会場からどっと笑いと拍手が起きた。
簡単に言うと、国債をデジタル通貨として発行するという内容で、つまりは「僕が考えた最強の経済政策」な訳だ。しかも「誰にも反論されたことがない」という。
松田 「仕組みそのものを変えて、通貨のあり方まで変えてしまって、次の時代をにらんだ未来社会を作りながら積極財政ができる基盤がありますよと。そして積極財政をやらせる。昔、財務省にいたので、どうしたら彼らが動くか私はよくわかってます。日銀の連中の考えてることもわかりますので」
相変わらずではあるが、自信たっぷりに話してご満悦の様子で締めた。
さあ、このイベントの土壇場で、以上のような松田氏の主張に対し、青山氏がここぞとばかりに仕掛ける。
「まず、憲法に関しては、私は全然違う見方をしています」。青山氏は弁護士だ。これまでと全く違う空気になり、会場の多くが思わずおっと背筋を伸ばす。
青山 「今の日本国憲法、実はぽんと出たもんじゃないんです。調べていくと、近代憲法の歴史をそのまま積み重ねてる。9条にしたって、ただ単にいきなりあるんじゃなくて、第一次世界大戦が防げなかったことの反省で、不正条約とかがいっぱいできた。それをさらにシェイプアップしたのが実は日本国憲法。確かにGHQが主導でできたんだけど、そういう世界状況じゃなければできなかった理想を、日米ともに一生懸命考えて作ったのが日本国憲法なんです。ある意味で世界最先端の憲法。それを一から否定するというのは、私は大間違いだと思います」
「今やるべきは、もし憲法改正するんだったら、その頃は意識されなかった社会権、幸福追求権であるとか、そういったものを加えて行くっていうのはあるかもしれない。でも、営々たる人間の歴史って、権力者の暴走をいかに食い止めるか。その積み重ねです。それはもう理想に近い形で出来上がったものを一から否定するのは、人間の叡智の歴史に対する侮辱だし、それは無知からなすものです」
清々しいまでのぶった切りに、なぜか参政党員も多いはずの会場から万雷の拍手が起こる。おそらく「有意義なやりとりだ」と感じたのだろう。
立場が弱くなった松田氏は、聴きながら何度も首を横に振り「いやいや違う違う…」みたいな口の動きを見せて苦笑いを浮かべている。
青山氏はなおも続け、財政に関して「緊縮か積極かの二分が全然間違ってる」と言い切る。
現在の日本経済が極めて苦境であることなどを述べたうえで、一気にまくし立てた。
「単純に積極財政だって、これ以上、日本の通貨をデジタルにしたって同じことですよ。日本が発行する通貨なんだから。そんなことをしてたら苦しむのは皆さんです。私はそれをずっと言ってきたし、遂に現実化してきている。甘いことばっかり言う人がいいのか、そういった苦しい状況にあるってことを言って、みんなで、じゃあどういう風にするかってことを考え、どういうところにお金を費やすのが良いのかって、そのくらい考えなきゃダメですよ」
これらの見解が正しいかどうかはともかく、私はなんだかちょっぴり青山氏を見直した。ちょっぴりだよ。
しかし、まあ盛り上がってまいりましたよ。もうここまで上段から薩摩示現流みたいに剛剣でぶった斬られて、あの売り出し中の参政党が、ましてやその政策の柱がよ、このまま黙っていられるわきゃあないじゃんよ。
参政党は絶対に逃げたりしない。なんか別のネット番組の党首討論からは逃げたらしいけども。いやいやいや、松田プランは最強なんだぞ。誰にも反論なんてできないんだ。さあ行くぞ、オレンジの旗を高く掲げよ。待っていたぜぇ、この時をよお!
いったいどんな反論をするんだ松田氏は…? マイクを握っ…
長嶋 「はい、時間ですねそろそろ。ありがとうございます。それでは須藤議員に締めを」
…っはあ!? お、終わり?
ズコーーーーーー!!
え、待って待って待って。意見が真っ二つになってるよ今。やっと討論が始まるんじゃないの?マジかよ!ま、松田プランを見捨てちまうのかい…?
須藤 「いやあ、締めは任せてください!松田先生と青山先生の話を聞いて、考え方が違うところもあるかもしれませんが、やっぱりこの二人に国会で働いてもらいたい、頑張ってもらいたいと思いました。そう思いませんか!(大拍手)」
「正直お二人も、この選挙は正直簡単ではないと思います。厳しいかもしれません。でも、そういった時だからこそ、勝てるんです(?)。やっぱり皆さん、一人ひとりがアクションを起こし、やっぱ(イベントの)タイトルの通りこのコロナ、このワクチン禍をやっぱり終わらせなきゃいけないと思います。そのためにも、お二人にはぜひ活躍していただいて、そして本当に明るい未来を作っていきたいと思います。今日は皆さん、ありがとうございました」
「押忍!」
無邪気な須藤氏の声と、会場からの割れんばかりの拍手を受け、松田氏がため息をついたように見えた。みんな、ちょっと前までそれぞれの意見を言ってあんなに楽しそうだったのに。これは悲しい。こんなことは許されない。
で、なんとこの勝負の行方はツイッターに持ち込まれたようだ。
参政党側がこのイベントの動画公開について「憲法改正の部分は削除しろ」みたいな感じで要求したらしく、青山氏がこれをツイートで挑発。
参院選の少ないパイを奪い合うがごとくの熱いバトルが気になる人は見に行ってみてはどうだろう。
え、これを受けて私はどうするかって? まあそんなに興味はないんで特に何も…
(以下は有料登録で全文読めます)
黒猫の見解「反ワクチン議員ってだけでダメなのよ」
結局は予想通りだったが、反ワクチンをとなえる政党をみんなで応援しようね、みたいなイベントだった。まったく、潜入するこっちの身にもなって欲しいね!
あのさ。ケンカすんなよ。
これ討論ちゃうやんけとか、散々言ってきておいて悪いんだけども、討論会だとしたらこれが言いたかったわけ。どっちが正しいとか、誰が一番いい意見かとかじゃなく、みんな反ワクチン思想で集まった珍しい考えのオジさんなわけじゃん。せっかく須藤議員がいい締めをしてくれたし、仲良くしなよ。ね。
でも、これだけは登壇者の皆さんに言いたい。終始「今はみんな間違ってるんだ」って感じの話の進め方だったけど、国民の代表になろうってのに、はたしてそんな姿勢でいいのかなあって。