立憲原口議員「ディープステートが偽ワクチンを」。保守系政治集会は陰謀論、反ワクチンなどトンデモの巣窟に

12月2日におこなわれた保守系政治集会の雑感です
黒猫ドラネコ 2023.12.09
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 真剣な表情を作ったまま、会場からの拍手待ちの「間」があった。

 「ディープステート(DS)が作ったものです。この偽ワクチンは打っちゃいけないんです。パンデミックで亡くなった人よりも、注射で亡くなった人の方がはるかに多いです。つまりDSはいるんですよ。日本で初めて国会の中でDSという言葉を使ったのは私でした」

 誇らしげな言葉の主は、立憲民主党の原口一博衆議院議員だ。旧民主党政権下で大臣も経験した同議員は、大歓迎を受けてこのイベントに参加しているようだった。

 これは保守系政治集会「CPAC JAPAN」での一幕。アメリカ発で、ドナルド・トランプ元大統領の支持者らによって形成されてきた大規模カンファレンスは12月2日、東京都内で開催された。

 日本での開催は今回で7回目とのこと。前回はトランプ氏もVTR出演したそうだ。これまでも多数の政治家や評論家らが参加しており、以前までは自民党の大物議員らが参加していたこともあった。

 「決戦前夜」がテーマだった今回は、トランプ氏の再選に向けての話がかなり多め。それにともない、バイデン政権を口汚く批判しつつ「不正選挙」などの数々の陰謀論が飛び交う集会となっていた。

 トランプ陣営がそうした層を狙っているせいもあってか、参加者には反ワクチン思想への傾倒も見られた。

「反クチン座談会」

 前述の原口議員の言葉は、プログラムの中盤にあった「世界を覆う医療の闇」という講演内で発せられたものだ。

 このセクションの登壇者は、原口議員のほか大阪市立大学医学部名誉教授の井上正康氏、作家の河添恵子氏。いずれも参政党などをはじめとした反ワクチン界隈の良きアドバイザーとなっている人物である。

 ここに、陰謀論を信じる集団「ごぼうの党」から昨年の参院選に出馬していたユーチューバー高崎圭悟氏が司会となり、米国CPACでの主要人物でトランプ氏の側近というマット・シュラップ氏も参加。

 いわば「反ワクチン座談会」の様相を呈していた。

 この前段には、世界中に新型コロナとワクチンの誤情報を蔓延させているロバート・マローン博士がVTR出演。これを受けた司会の高崎氏は、「mRNAを作ったマローン博士が危ないと言っている。これは陰謀論ではございません」と発言して、座談会がスタートした。

 原口議員は冒頭発言のほか、自身の悪性リンパ腫の療養中にカツラがバレた話で笑いを起こして「ワクチンでがんになったんです」と述べ、「原因追及をした動画がBANされたので色んな人に相談できた。BANのおかげで、がんが治りました」と再度ウケ狙いをして喝采を浴びていた。

 また「バンコクでの議員フォーラムに行くのにどうしてもと言われて3回打ったワクチンのうち2つが『死のロット』でした」とも話した。

 この界隈限定でジャーナリストとして高い評価を受ける河添氏は、「DSとか悪い人たちはいつも予告をする。90年代のDS側の雑誌に遺伝子を変えてやるという言葉が出ている」と話し、司会から「なぜこうしたコロナやワクチンの問題が起こるのか」と問われると、「人類で実験したい悪魔が上にたくさんいる。人口を減らしたいと思っているパラノイアがいる。問題はそういう(支配層の)存在を信じず陰謀論だと思っている人だと思う。真剣にならないと日本人がジェノサイドをやられかけている」などと語り、かの有名な「ビル・ゲイツによる人口削減」まで持ち出していた。

 河添氏は昨夏の参政党の集会でも「気象兵器」「人工地震」について語っていたので、これが平常運転である。

 ちなみにこのセクション前にあった単独演説では「日本はLGBT差別のない大らかな社会だったのに、バイデン政権に駐日大使を送り込まれて腰抜けリベラルが法案を可決させた」などと発言していた。

 声を上げてきた当事者たちを蔑ろにしながら何でもかんでも陰謀にしてしまうのも、この界隈の特徴であると言えるだろう。

 河添氏はまた原口議員に対し、「会場にもワクチンを打ってしまった人がいるので希望になると思う。どのようにリカバリーしたのか」と質問した。

 これに原口議員は「ワクチンというか生物兵器が先にあって病気がある。まさにDSが作ったもの。人工的なものであるということは人工的に体の外に出さないといけない」と強めの前置きをしてから、「三つあります。一つはイベルメクチンを使ってデトックスをした。二つ目はがん免疫療法で細胞のリカバー。三番目は、注射の被害に遭った人をどうリカバーするかと井上先生の奥様がやっている水素の吸入、そして高濃度ビタミン、参政党のよしりん吉野敏明氏)に頼んでメタトロンと食事療法で細胞を整えるということをやっています」などと語っていた。

 どう聞いても三つ以上あったと思うが、どこで区切るかの基準は不明である。

 ご存知の方ばかりとは思うが、イベルメクチンは優秀な駆虫薬であるものの、ごく一部の人達が必死に唱えていた新型コロナウイルスへの有効性はとっくに否定されている。

 また、メタトロンとはロシア発の「波動測定器」なるもの。日本で医療機器として認められているはずもなく、この機械での「診断」や「治療」に医学的根拠は何一つもない。

 

 さて、「専門家」としてここに迎え入れられた井上正康氏は、日本国内の反ワクチン活動家の中でもかなり高い地位を確立しつつある。

 いつも通り「ワクチンではなく、半世紀間失敗し続けていた遺伝子治療薬。名前をワクチンと詐称することで緊急使用を可能にしたのが実態。日本人は体内で遺伝子組み換えをするトップランナーになった」などと話していた。

 シュラップ氏は、井上氏のことを気に入った様子で質問するなどし、反ワクチン派から標的にされながらバイデン政権で感染対策の指揮を執ったアンソニー・ファウチ博士(元米大統領首席医療顧問=昨年末で退任)を引き合いに出して、「ファウチの代わりになってください」。笑顔で最敬礼するように言い、会場からも拍手が起こった。

 他にもワクチンに関してはいろいろアレな話が飛び交いまくっていたが、キリがないのでこのへんで割愛する。

 話題は当然のように、最近の反ワク・陰謀論界隈のホットトピックである「パンデミック条約」「WHOからの脱退」がメインだった。

 司会の高崎氏がシュラップ氏に「日本はWHOから抜けたいんですが、協力してもらえますか?」と質問。シュラップ氏は喜んで「BANされますよ」と返して笑いを起こした。これに井上氏が「この会場にいる一人一人がユーチューバーになって伝えて広げてほしい」と述べ、座談会は締められた。

 この会の直後に、国民民主党の玉木雄一郎代表による演説があった。

 SNS上でも「なぜ玉木さんはこんなイベントに出るのか」のような落胆の声があったが、前回も登壇していたそうだ。

 演説は国際問題や国防について。特に内容におかしなところはなかった。ただ、選挙への介入の懸念などで「フェイクニュースに対する規制をしっかり作っていかないと」と発言したことは気になった。

 トンデモ説への同調こそ全くなかったので、よもや米大統領選の「不正選挙説」に結びつけたい意図はなかったと信じたい。

 ただ、ほんの数分前に世間から白い目を向けられるであろう反ワクチン座談会があったばかり。そんな場所に立ってフェイク対策がどうこう言っても説得力がない。あてつけたのだとしたら勇気のあることだとは思うが、残念ながらその雰囲気は感じなかった。

 

 なお、個人的にイベントのハイライトになるはずと捉えていた参政党の神谷宗幣代表のスピーチもあったが、これまで何度も聞いた「参政党を作った経緯」といった内容だった。

 特に取り上げるまでもないので割愛する。

 参政党のトンデモぶりに言及し続け、こんなにも長文を書きまくっている私に今回は省かれてしまったことを大いに恥じてもらいたい。

 それでも会場の拍手だけはひときわ大きかった。おそらく夏の政治資金パーティーでの告知を受けて、熱心な参政党支持者がたくさん来ていたのだろう。

その他、黒猫の雑感

 イベントは午前10時から午後5時すぎまで続いた。

 会場入場料は1万円で、動画チケットが5000円。私はひとまず今回は現地に行かず、当日に別の場所での動画視聴を決め込んだ。

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