目覚めた中高年たち「WHOに呪いを」。国会議事堂前デモ詳報
快晴の国会議事堂前には、青いのぼりや白い横断幕がはためいていた。多彩なプラカードも掲げられている。
「パンデミック条約反対」「ワクチン反対」などを主張するデモ活動は22、23日に開催された。両日とも平日昼にもかかわらず22日はおよそ300人、23日は600人ほどが参加していたようだ。
緑が鮮やかな国会前庭を中高年や高齢者ばかりがぐるりと取り囲む。いつもの陣形だ。「政府は人口削減ワクチンを止めろ!」などと腕を振り上げながらのシュプレヒコールで、みんな一体感に浸っている。
これを社会見学に訪れた小学生の集団が不思議そうに眺めていた。聞こえはしないだろうが、デモ隊の一部から小学生たちに向けて「マスク外してねー」「ワクチン打っちゃダメだよ!」とか声が上がる。こわい。引率の先生が「はいはい、あんまり見ないよ」的にさっさと誘導していく。
確かに、すごい形相で「健康を人質にしたWHOの横暴を許すな!」とか叫んじゃっていて、子どもを近寄らせてはいけない雰囲気はある。
ただ、こういうアレな人達がいることだって確実に社会の一部ではあるのだから、目をそらしてばかりではいけないのではとも思った。
(国会を臨むデモ参加者)
反ワクチン勢の覇権を握りつつある集団
参加者の構成を分析すると、まず参政党員や所属の区議が複数いて、整備するスタッフにもなっていた。
WCH(反ワクさん達がWHOの代わりにしたいトンデモ医学団体)のバッジなどを身に付けた人も多い。最近こうした集会に積極的に顔を出しはじめたラエリアン・ムーブメント(新興宗教)のペンダントをつけたおじ様も3人ほど確認できた。保守系団体「新党くにもり(チャンネル桜)」の旗もやはりあって、参加者に多数いたことは明らかだ。
いろんな反ワクチン・ニセ医学信奉者、過激な自然派などのかたがたを集め、右寄り活動家たちが魔の手を…失礼、うまく焚き付けるようにして反体制派としてぎゅっと凝縮させたような集団になっている。
主催者は元自衛官の佐藤和夫氏。
先月に、保守系論客や作家や名誉教授ら様々なそっち方面のインフルエンサーらを巻き込んで池袋大集会に成功した流れもあって、現状としては日本国内の反ワクチン勢のパイはここに独占されつつある。
反ワクチン・インフルエンサーやアレな医師らが多数賛同を示している新興団体「mRNAワクチン中止を求める国民連合」に付帯する集団ということになるのだろう。
コロナ禍の数年で「ネットで真実を知って目覚めた中高年や高齢者」をターゲットにしてきた集団は多々あった。
神真都Q、参政党、日本列島百万人プロジェクト…などなどがパッと咲いて散って灰になりかけているのを尻目に、過去最大勢力となって一気に覇権を握ったのが今回の集団なのだ。
及川氏らが演説
23日にメインゲストのような扱いで演説していたのは、作家で宗教家の及川幸久氏(元・幸福実現党)だ。
よりによって幸福の科学でエル・カンターレ(故・大川隆法)を信奉していた御仁である。
みんな知らんのだろうか…?
(嬉しそうに演説していた及川氏)
終始、こんなにも支持者がいることがとても嬉しそうだった及川氏は、「WHOがパンデミック条約を使って国家主権を奪っていくということを知っていますよ。われわれは個人の自由を無くすということを知っているんです!」と語気を強める。
なんでお前らが知ってんねんと誰もツッコミはしない。
そして、及川氏は海外の真偽不明のニュースや資料の話を持ち出しながら「オーストラリアはあの注射(ワクチン)は薬害という決議を開始したんです」「mRNAという注射は今まで毒がある害があるとみんな言ってきた。ただ、確固とした証拠がなかった。それがこの2週間で証拠が出てきたんですよ」とドヤ顔。
参加者はみんな「オオオー」とミニオンズの集団みたいに沸いたが、今まで証拠なかったのにやってたのかよと誰もツッコミはしない。
ここはそういう場所なのだ。
及川氏だけでなく、次々と指名されて登壇するそっち方面の方々。共通しているのは「ネットでいろいろ見たら今の社会も政府もなんだか許せない」的なざっくりした不満であろうか。
22日は超過死亡をワクチンのせいにしたいユーチューバーらが登壇したようだ。
本日23日は「子宮頸がんは年を取ってからしか罹らないのに、若者にワクチンを打とうとしているんです。理解できません」と嘆く活動家のおば様がいたり、「ワクチンは体を毒するものです。しかし身体を害するよりものより精神を毒するイデオロギーを警戒して」と話すスイス人がいたり、参政党から出馬予定でLGBT理解増進反対のおっさんがなんだか偉そうで話が全く面白くなかったり、「そろそろ『魂(たましい)』が物理学で解明されると思う」などと語る謎のおじ様がいたり。
もう何がなんだか分からないが、とりあえず多士済々である。
そんなスピーカーの声がスピーカーからもあまり届いていなかった道沿いでは、デモ参加者の間で、ある動きが起こっていた。
国会見学に訪れた小中学生らが乗ったバスが通るたび、「きたきた!」「早く、そっち持って」などと歓声を上げつつ、手を振ったり、横断幕やプラカードを指をさしたりが繰り返されたのだ。
「みんなマスクしてるのが悔しいネ」「早く氣付いてほしいナア」などと言い合いながら、バスの窓越しに反応を返されて満足そうだった。
だが、これだけデモを見てきた私にもよく分からない主張が多かったので、中学生にはなおさら分からなかったことだろう。
手書きのプラカードの字が汚かったり、漢字が間違えていたりもしたから、やはり笑われていたり、なんなら爆笑されていたように見えたのは気のせいだろうか。
(中学生のバスに向かって主張を掲げる参加者たち)
「呪いをかけよう」
及川氏はおよそ2時間のうちに二度目の登壇を果たし(いいよもう…)、「パンデミック条約」が今後どうなるかを解説していた。
5月27日からスイスのジュネーブでのWHO総会で草案が提出されて議論され、6月1日にも可決されるかどうか決まるようだ。
この採決に対し、及川氏によると、ジュネーブにある本部に「われわれと同じ思いの同志が世界中から集結しようとしている」。取り囲んでデモをやる計画があるのだという。
国際機関とその会議に対しての不穏な動きの情報を知っていること自体が割とヤバいと思うのだが、ここのデモ参加者達は「オオオー」と沸いた。
やはりWHOを悪の組織ぐらいに思っているのだろう。日本のように高齢者ばかりではなく、過激派もいるかもしれないから、どうか何もないことを祈りたいが…。
この場で私だけのそんなハラハラを嘲笑うかのごとく「みんなでプレッシャーかけるんですよ。我々も『思い』でプレッシャーをかけようじゃないですか」と及川氏。そのまま「私は宗教家だから言うけど」と話しだし、「こういうのを『呪い』って言うんですよ」と、にんまり。
さらに笑顔のまま「WHOに呪いをかけようじゃないですか皆さん!」と煽ると、参加者からも「そうだー!」「呪ってやろうぜー!」「いい呪いだ!」などと嬉しそうな雄たけびがそこら中から上がっていた。
子どもかよ…。
ちなみに、デモと無関係とは思うが、ちょうどこの演説の後に国会前庭を散策していると、木の洞(うろ)にガチの呪いっぽいものを見つけてしまい、一瞬で鳥肌が立った。
(でもすぐに「これはネタになる」とも思った)
(こ、こわい)
そんなこんなで(?)2時間に及ぶ演説の終盤に演台に立ったのは、なぜか「えりアルフィヤ(自民党)は許せない。帰化人なのに。絶対に落としてみせる」みたいなことを力強く言った差別丸出しおじい様だった。
もはや反ワクチンもパンデミック条約も全く関係あらへんがな。本当によく分からん。
でも、こういう人達なのだ。
15時の予定ぴったりにデモは終了。
撤収作業中にはスタッフらしき人が主催者への労いとともに、「おそらく本日も700…800…1000人近くの方々が集まってくださいました!」と叫んでいた。
言いながらどんどん数を盛っていくのはさすがだ。主催者発表がどうだったかはともかく、実際には600人ほど。平日昼にこれだけ集まるのも普通にすごいので別に盛らなくてもいいのに。
さて、今月31日には、前回の池袋大集合の流れを受けて日比谷公園で集会があるらしい。
当日は金曜日で昼から夜にかけてと長丁場なので、参加者数はじわじわ増えていくと思われる。およそ5000人だった前回の規模に届くかどうか注目だ。
日比谷公園横の厚労省を「取り囲む」という不穏な声も出ていて、今回のデモの最中も「10万人きたら国会も囲めるよね!」と楽しそうなおば様たちがいた。
ワクチンや感染対策の同調圧力がどうだとか強制は許せないとか言うくせに、取り囲んで圧力はかけたい人達なんだなあと冷ややかに見てしまうのは私だけだろうか。
とりあえず微力ながら、そこにも渦巻くであろう「呪い」を打ち消すように祈っておきたい。
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