「ワクチン打って死んじまえ」の暴言も…。陰謀論大集合”百万人プロジェクト”に著名人も参戦(前編)

国会議事堂裏から始まった陰謀論デモを見てきました
黒猫ドラネコ 2023.04.30
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色々ごちゃ混ぜのデモ

 大型連休前で快晴となった金曜日。

 4月28日の正午前、永田町駅から地上に出るとすぐ、ざっと数えて200人余りが狭い歩道を埋めていた。

 「緊急事態条項反対」「ウクライナ支援を止めろ」「消費税を撤廃しろ」「防衛費増額反対」「国民の財産を守れ」「日本人のための政治をしろ」「国家的詐欺を止めろ」「俺達は奴隷じゃない」などの様々なコールが響きわたる。

 国会議事堂の裏手から始まった「日本列島100万人プロジェクト」なる集会だ。

 掲げられていたプラカードを見ても「ワクチン危険」「マイナンバー返納しよう」「酪農家を守ろう」「コオロギ食わすな」と多彩。「増税・戦争反対」チラシを配る者もあり、「マスクはう〇こ」と書かれたリュックを背負っている人がいたり、塀には「集団ストーカー犯罪撲滅」との横断幕を勝手に飾って…。

(掲げられたプラカード)

(掲げられたプラカード)

(なにやら物騒なもの)

(なにやら物騒なもの)

(だめだろこれ)

(だめだろこれ)

(うーむ…)

(うーむ…)

 「山本太郎に投票を」「ナチスの手口の自民党」などと書かれた看板、岸田首相の藁人形などもあったので、一見すると特定政党の過激な者の集まりかと見紛うがそうではない。

 今回の集会があることはSNSで告知されており、「右でも左でもない人達が全国から集まった」(参加者談)色んな主張を持つ個人やグループの集合体のようだ。

 事前情報によると、「『気付いた人』を100万人集めたい」とするこのデモの主催者は毛利秀徳を名乗る熊本県の活動家らしき男性。この毛利氏が代表となっての都内での行動は初めてではないようだが、ツイッター上では、おそらく今回が最も多くの好意的な反応があった。

(デモの代表者、マイクを持つ毛利氏)

(デモの代表者、マイクを持つ毛利氏)

 すぐそばで行われていた入管法改正案反対の座り込みから新聞記者が流れてきて、「どういう団体なんですか?」などと取材を試みていたが、デモ参加者も明確には答えられないようだった。

 とにかく何かの声を上げたい人達で、共通していたのは異常なまでに、国会議員や官公庁に勤める方々を「悪の手先」であるかのように敵視していること。

 登壇者のマイクパフォーマンスでも、やはり「お前らの好きにはさせないぞ」みたいな陰謀論めいた主張をぶつけるという意図が感じられた。

 歩道にはピーク時でおよそ300人弱が陣取っていたが、国会議事堂裏にある議員会館入り口というより車寄せの横の広場に正対する形になっていた。せっかくの激しいコールや怒声も、届けたい相手には聴こえていないだろう。

 だが、そんなことはお構いなしにマイクで演説する者が次々に怒りを表明するためか、集団としてのボルテージもどんどん上がっていった。

 建物から出て来ただけの、官公庁職員かどうかも不明な歩行者に向けて「なんでマスクしているんだ」「お前ら日本人として恥ずかしくねえのかよ」などと低レベルな罵声を浴びせる者がいたり、警備していた方々を「笑ってんじゃねえぞ」などと威圧し、建物に向かって「政治家出て来いオラー」「何か言い返してみろコラー」などと怒鳴るチンピラみたいな者もかなりいた。

 それでなくても「政治家はみんな売国。日本人じゃない」みたいなガンギマリの演説が流され続けている。そんな異様な雰囲気の中、デモの向かい側の通りに、社会見学らしい小学生の列が何度か現れた。これが現実とはいえ、子ども達に残念な大人たちを見せることになってしまった。

 やはり道越しに「ねえマスクはずしてー!」「みんな苦しくないのー?」「先生の言うことが正しくないこともあるんだよー!」などと叫んでしまう者がいて、それがじわじわと拡がっていった。マズいなあと思いながら見ていたが、不幸中の幸いで、小学生たちは何を言われたかよく分かっていないようでニコニコと手を振り返していた。

 そんな小学生の行列に盛り上がっていることに気付いた演説者が、自身の主張を一通り終えてから慌てて「今、小学校のツアーバスが来ましたが、子ども達のマスクをどうちゃら…」とうまく同調しようとしていたが、そのタイミングで停まったバスはただの東京観光ツアー。ご年配の方がたくさん乗っていた。どうも調子がずれている。

 「自分は中卒だ」という反ワクチン派の男性がマイクを持った。とても口が悪い。

「クソ政治家どものせいで日本がどんどんおかしくなっていくんだよ。ワクチン打って死んじまえよお前ら」と高らかに暴言。しかしそれにもなぜか集団は大きな拍手を起こした。「てめえらのせいで夫婦喧嘩にもなってんだよ」「牛乳も体に悪いらしいじゃねえか」などと、とても中卒らしい怒鳴り声を上げていた。

 こうしたアレな素人さんだけでなく、そっち方面での著名人もたくさんいた。

 陰謀論界隈で名の通った元海上自衛官の石濱哲信氏は、「ウクライナ支援をする政治家は犯罪者」「緊急事態条項を提案した者は売国奴」のような激しめの主張がメイン。

 とにかく話が長かった。

(何度も登壇していた石濱氏)

(何度も登壇していた石濱氏)

 幸福の科学職員・与国秀行氏も演説に参戦。

「このままでは日本がナチスのようになる」などと声を張りあげ、なぜか長居せずにさっさと引き揚げた。元スマイル党の込山ひろし氏も自転車で姿を見せたが、何人かとスマイルポーズで記念撮影をしてすぐ帰っていった。なんなんだ。

(幸福の科学の与国氏)

(幸福の科学の与国氏)

 チャンピオンベルトを肩にかけてマイクを受け取ったのは、ボクシング東洋太平洋スーパーバンタム級元王者の福島学氏だ。「はじめの一歩」の登場キャラクターのモデルにもなった人らしい。

「水や食物の安全が脅かされている」「日本人を追い込むための添加物の多さ」といった内容を落ち着いた声で話した。

 ネットに溢れるデマを信じたような内容だったので、きっと根が真面目なのだろう。言葉で扇動するような力強さはなかったが、赤いグローブを装着し、シュプレヒコールに合わせて迫力ある右ストレートの無駄遣いをしていた。

(元プロボクサーの福島氏)

(元プロボクサーの福島氏)

 先の統一地方選挙で県議になってしまった末永けい氏も登場。まるでこの集団の主軸であるかのように目立っていた。

 愛知県知事選の政見放送で「山上容疑者は犯人ではない」「コロナは捏造されている」「湾岸戦争や911はディープステートの仕業」などとオーソドックスな陰謀論者っぷりを披露した人だ。登壇して大きな拍手を浴びながら、「政党助成金は電通や博報堂や統一教会や乱交パーティーに使われているかもしれない」「官房機密費は無制限だから怪しい。コロナ保険に使われているのではと思っている。そのお金が尽きたからコロナ保険も契約できなくなったのでは。やりたい放題やってますよ彼らは」と主張していた。

 愛知県議会はマジでどうすんだコイツ…。

(ひときわ大きな拍手を浴びた末永議員)

(ひときわ大きな拍手を浴びた末永議員)

 そしてその末永議員との繋がりで登場したのは、ユーチューバーの三納(さんのう)だ。渋谷を歩けば若者に声をかけられるほどの人気だそうで、登録者数54万人。企画動画に定評があったらしい。

 三納は「末永さん毛利さんと繋がって、このデモを動画に撮るために来ました。テレビなどのメディアと違ってYouTubeは自分で編集できて、われわれインフルエンサーは真っ直ぐに伝えることができる。(政治家は)僕たちを舐めてると思うけど、この活動を広げたら日本は変わる」などと述べて聴衆を大いに喜ばせた。

 その後よく分からないデスメタルみたいな曲を歌いながら天に向かって何度も祈りのポーズをし、途中で「税金返せ」「人権返せ」のコールを求めるなどご満悦だった。

(歌を披露したユーチューバー三納)

(歌を披露したユーチューバー三納)

 そして、このトンデモ観察記でも過去に触れた方々もチラホラ。

 たとえば反コロナ共闘委員会の塚口洋佑氏だ。

 今は新たに国民なんとか党を立ち上げて、ひっそりと先の統一地方選に出てしっかりと落選していたようだ。ごめん、普通になにも気にしてなかった。

「緊急事態条項が導入されたら外に一歩出ただけで捕まるけど、刑務所がいっぱいになるまでどんどん外に出てやろうじゃありませんか」とか、相変わらず意味不明なことを言っていた。ほな反対せんでもええやんけ。

 マスクやワクチンなどを揶揄するヒップホップグループ「韻暴論者」のR-type(アールタイプ)もいた。

 お得意のラップ披露での大騒ぎは後回しのようだが、「売国議員がどんどん今回の選挙で当選しました。中国から帰化したあの女性(自民党えりアルフィヤ議員)も不自然な当選の仕方をしましたよね」と、とっくに否定されている”不正選挙の疑い”などを語っていた。知ったかぶりでイキるのは健在で、またラッパーの先輩に怒られるのだろうか。

 さて、こうした集団はおよそ2時間ほどで議員会館前を離れた。

 当局の指示もあったらしく大回りの国会議事堂正面を通るルートで移動を開始。私も付いていき、のんびり15分ほど歩くことにする。

 サツマイモをそのままボリボリ食うおじい様を横目に、「電磁波攻撃を受けています」のチラシを渡されたり、「許可なし行進になってしまうので旗は収めてください」と言われていたにもかかわらず堂々と揚げるアホにうんざりしたりしながら。

 続いての場所は先ほどより多くの怒りをぶつけられることになる農林水産省。先頭にやや遅れて到着すると、今度は街宣車の上に乗っての演説スタイルになっていた。

 ほぼ誰にも声が届かなかったであろう議員会館前とは違い、正面玄関に大勢で向かい合う態勢だ。

 入り口前にSDGsの旗が何本も立っていたことが集団の逆鱗に触れ(陰謀論者たちはSDGsが大嫌い)、声にもいっそう力が入って……。

(次回の後編は、上記の農水省前の様子から続けます。以下はサポートメンバー向けに黒猫の考察など。もしご興味があればご登録よろしくお願いします)

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