【書評】これぞ一家に一冊の良書。「食品の『これ、買うべき?』がわかる本」

昨年末発売の本のレビューです
黒猫ドラネコ 2025.02.27
誰でも
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今回は『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』(24年12月14日発売、大和書房)を紹介する。

著者の松永和紀さんは毎日新聞の記者から独立し、主に食品の安全性や農業技術について科学と実情に基づいた細やかな発信を続けてくださっている。

直接のかかわりはないが、信頼できて尊敬する科学ジャーナリストの一人だ。

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誰かに教えたくなる良書

何度も「そうだったんか…」とつぶやいてしまった。誰かに教えたくなる「食の噂の真相」が溢れている。

食品デマを煽る陰謀論者やトンデモ医師とかの顔面に貼り付け、取れないイヤホンからずっとオーディブルで流したいぐらいだ。

おい、●●●●。お前だよ、お前。(●●●●にはお好きな名前をどうぞ)

当レターのタイトル「一家に一冊の良書」は誇張ではない。使い古された表現だが、この本の良さを一言で表すとこうなる。全力で推したい。

現に私はもう一冊買って実家に「読んでね」と送った。というのは、うちの親がネットや週刊誌で変な情報を見て「あれは食べん方がいいみたい」「これがいいらしいんよ」と簡単に信じてしまうタイプ。

そういう人は結構いると思うので、特にお薦めしたいのだ。

食品について「実際のところどうなの?」の疑問を分かりやすく解説してくれている。

添加物、うまみ調味料、マーガリンなどの「体に悪い」が誤情報(当然、量による)という話だけでなく、その逆の「これが体に良いって話だけど本当か?」の話題も豊富だ。

基本的な考え方として「なんでも食べ過ぎたらそりゃ悪いに決まっている」と分かってはいたものの、その考えを補強しながら、いろんな思い込みに対する冷静な視座を持たせてくれる。

(Amazonの書籍宣伝バナーより)

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親切な構成と優しい文章

本の構成も実に親切だ。

5章までそれぞれに振り分けられた58項目のリサーチには、タイトルの横に読むべきポイントが三つずつ示されている。

例えば、第1章『「健康によい食品」は本当に良いのか』の1項目はタイムリーな話題で、

「オーガニック食品 安全安心だから買うは間違っている」

◎無農薬とは限らない

◎生物多様性を守り、環境負荷を低減するところに意義がある

◎日本では、農地の0.7パーセントで有機農業がおこなわれている

このように要約がついているので、1ページ目から読むだけでなく、興味のある内容を探してから読むことができるようになっている。

品川区長と関係者にはしっかり音読してもらいたい。

重要と思われる文は太字で線が引かれている。

その一文、第3章28項「遺伝子組み換え食品 安全性は確保されているので大丈夫」での結びにある言葉を挙げよう。

「遺伝子組み換え食品が人々に食べられるようになってもうすぐ30年になり、世界で利用されていますが、健康影響をもたらす事故は1件も起きていません」

これに別項の「人工物より自然の方が毒が多い」も併せ、よく考えてみれば分かる話に何度もハッとさせられるから読み物としても面白い。

それは各項目の合間に挟まれているコラムの内容でもそうだ。

「サプリメントの落とし穴」のテーマで、過剰摂取の懸念について「毎日必ず食べているものはないのに、サプリメントでは毎日摂取することになる」との趣旨の解説には特に納得させられた。

このほかのコラムも「ヒアルロン酸って本当に効くの?」「SNSと子育て不安」「卵コーナーで分かるスーパー判別法」など、興味深いものばかりだ。

(背表紙)

(背表紙)

実は期待してガブガブ飲んでいた茶カテキンと体脂肪減の真実を明かされたもんだから、ちょっとショックを受けもしたが(運動しろよ)しかしそんな内容であっても、強い否定や苦言的な上からの物言いがほとんどない。

エビデンスやデータを重視すれば硬い文章になりそうなところ、全て丁寧な「ですます調」で書かれている。

著者の松永さんが難しいことをほぐして「落ち着いて考えましょうね」と示してくれるような文体が優しくて読みやすい。

買うべき一冊

まだ詳しく分かっていないことや、現在の科学の知見では曖昧なことがあれば、素直にそう書いてくれてもいる。そして単純に善悪では表せないことを誠実に伝えている。

「多くの食品で、『ここはよい。でもあの部分はリスクになる』という説明をしてきました。これでは、どうしたらよいのか分からないと、と感じた人もいるのでは。でも、それが食品の真実の姿なのです」(260ページ、第5章55項「『よい食品』『悪い食品』の二分化は×」)

こういう部分にも著者の思いが表れていると言えるだろう。

バランスよく摂ることが肝要。これは食だけでなく「情報」でも同じことだと思う。

昨今では、残留農薬、サプリメント、添加物、保存料などなど…人の体に入るものや健康に影響しそうな事について、断定的に書いたり、脅したりするようなセンセーショナルな情報の方が支持されてしまいがちだ。

そうしたデマ・誤情報がもたらす混乱へのカウンターとして冷静に事実を提示し続け、偏らずに考えてもらうことが有効になってくる。

ネットにはびこる不穏な噂や偏見に接した時に、「本当にそう?」とすぐに使える。食の最新事情の辞書として役立つ。そういう意味でも、持っていて絶対に損はない。

『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』は、これぞ買うべき一冊だ。

(黒猫ドラネコ)

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